第223話 波風立てず…… その2

「小鞠ちゃん。私は違うよ!♪」

「兄ちゃんとデートして来た!!♪」


「私が手に持っているのは、空に成ったお弁当箱が入っている袋だよ!♪」

「小鞠ちゃんと以前行った、隣町の公園で、兄ちゃんと公園デートしてきた!!♪」


「!!//////」


(堂々と言うな、虹心!///)

(こっちが恥ずかしいぞ!!///)


 虹心は嬉しそうな表情で、手提げ袋を少し上に上げながら言う。

 虹心は何でも、言葉をストライクに投げすぎだ!!


「あっ……あっ、そっ、そうなんですか。虹心ちゃん……!///」

「虹心ちゃんは本当に、兄さんと仲が良いですね…!///」


 小鞠ちゃんは少し頬を染めて『ジト目』表情に成って言うが、嫌みの口調を含ませながら言う!?

 もしかして、焼いている。小鞠ちゃん……。虹心は笑顔の表情で言葉を続ける。


「うん!」

「兄ちゃんは私が居ないと、何も出来ない兄ちゃんだからね♪」

「兄ちゃんが成長するまでは、私が手綱たづなをしっかりと握っておかないと!!♪」


「!……」


 虹心の言葉を聞いている木付さんは、驚きの表情を見せながら、俺の方を見始める!!

 如何にも『この人は、落ちこぼれの人なんだと……』と、言いたそうな表情をしている!!

 落ちこぼれなのは事実だが、下級生から見られると無性に腹が立ってくる!!


「そっ、そうですね……!(怒)」

「虹心ちゃんの兄さんは節操が無い人ですから、虹心ちゃんが一から叩き直さないと行けませんね!!」

「女の子の気持ちが、一から理解出来る人に!!(怒)」


 小鞠ちゃんは虹心の方に顔を向けて居るが、怒りの感情を含ませて、その言葉を俺に当てつける様に言う!

 あれから、かなりの時間が経っているのに、小鞠ちゃんは俺のことを完全には許していない感じだ。


「小鞠ちゃん!」

「木付さんとの楽しい時間を邪魔しては悪いから、私はこれで失礼するね!!」

「バイバイ~~!!」


 虹心は笑顔で小鞠ちゃんに言う。

 過去に虹心は、小鞠ちゃんから一方的に距離を開けられたが、こんな会話をしていればそう成るわなと、俺は感じてしまった!!///


「あっ、さようならです。虹心ちゃん!///」

「今度の登校日に会いましょう~~!!///」


 虹心の言葉の後、小鞠ちゃんは穏やかな表情で言う。

 小鞠ちゃんは虹心に、かなり深い部分を聞かれたのに、怒っている感じでは無かった。

 小鞠ちゃんの後、木付さんも俺たちに向けて頭を下げる。


「バイバイ~~!♪」

「小鞠ちゃん! 木付さん!!」


 小鞠ちゃんと木付さんは体の向きを変えて、俺たちから離れて行く。

 それを、陽気な笑顔と口調で見送る虹心。

 俺は最後まで、小鞠ちゃんに話し掛ける事は出来なかったし、小鞠ちゃんも話し掛けては来なかった。


 俺と小鞠ちゃんとの縁は、完全に切れたと、言うしか無いだろう……

 親友関係はまだ残っていると俺は感じていたが、小鞠ちゃんとの親友関係も、二村さんと同じように途絶えてしまった。


「久しぶりに小鞠ちゃんとも会えたし、私たちは家に帰ろうか。兄ちゃん!」


 小鞠ちゃんたちを見送るように見て居た虹心は、二人が遠ざかって行くのを眺めつつ、俺に和やかな表情で話し掛けてくる。


「結局……小鞠ちゃんは、俺には話し掛けて来なかったな…!」


 俺は虹心からの返事をせずに、冷めた表情と呟く口調で言う。

 それを聞いていた虹心は、困った微笑み表情に変わって言い始める。


「仕方ないよ…。兄ちゃん!///」

「木付さんが居る手前。小鞠ちゃんも兄ちゃんとは、仲良くお話しは出来ないでしょ!!」


「それはそうだが……小鞠ちゃんの感じでは完全、俺を無視している様に見えていたぞ!」


 虹心に、少し当たる口調で俺は言ってしまうが、虹心は表情を変えずに言葉を続ける。


「……今の小鞠ちゃんは、兄ちゃんとは距離を開けたいのだよ」

「木付さんから告白をされた小鞠ちゃんだけど、告白されるまでは木付さんの事を異性では無く、クラブ仲間目線で見ていたと、小鞠ちゃんは言っていた!」


「なんせ、兄ちゃんが小鞠ちゃんと喧嘩をするまでは、兄ちゃん一筋だったからね…」

「兄ちゃんが小鞠ちゃんより、伊藤さんを求めていたから、兄ちゃんは小鞠ちゃんを煙に巻いてしまった」


「……」


 俺は虹心からの言葉を黙って聞いている。

 俺があの時。小鞠ちゃんときちんと接していれば、こんな状態には成らなかった!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る