第224話 二人と別れた後…… その1

「伊藤さんが兄ちゃんを振るのは、私の中では何処と無く予想が付いていたけど、その直前で小鞠ちゃんと大喧嘩をした事を、私は知らなかった……」


「きっと、小鞠ちゃんの中では、まだ迷っているのだよ!」

「木付さんと仲を深めるべきか、兄ちゃんと仲直りをするべきかの……」

「まぁ、これは私の推測だけど!!///」


 虹心は困った微笑み表情で言う。

 小鞠ちゃんの状況を、全て知っている様に虹心は俺に話した。


 虹心と小鞠ちゃんは大親友同士だから、かなりの部分を共有しているのだろう。

 俺は良い機会だと感じて、改めて小鞠ちゃんの事を、虹心から聞き出そうとして見る。


 今まで何回も、虹心から小鞠ちゃんの状況を聞き出そうとしたが、虹心は答えてくれなかった。


「虹心……虹心は、小鞠ちゃんの状況を把握しているだろ!」

「虹心がさっき、木付君と話した時。虹心は初めての素振りで会話をしていたが、有る程度の事は小鞠ちゃんから聞いていたのだろ?」


 人通りの多い駅前で有るが、俺は虹心に真剣な表情で、小鞠ちゃんの事を聞いている。

 だが、虹心は穏やかな表情で言い始める。


「兄ちゃん!」

「こんな所で立ち止まっていても仕方ないから、歩きながら話そうよ!」

「歩きながら、話せる内容だからさ!!」


「……そうだな!」

「歩きながら話すか…。周りの人達に聞かれて良い内容では無いし…」


 俺と虹心は、自宅に向けて歩き始める。

 虹心の素振りから、やっと小鞠ちゃんの状況を教えてくれるようで有った。


 だが、どうして、急に教えてくれる方向で転換したのだ??

 自宅方向に歩き始めると直ぐに、虹心は穏やかな表情で話し始める。


「…さっきの質問だけど。私が今日、木付さんと会ったのは初めてだよ!」

「兄ちゃんの知っての通り、葉月学園はマンモス学園だから、学年全体の生徒を把握仕切れない!!」


「彼氏の名前は小鞠ちゃんから聞いて居たけど、写真とかは小鞠ちゃんが見せなかったし、私も要求しなかったからね…」

「私は元々、リアルの恋愛物語には興味が無いし!!」


(良く言うよ……俺の恋愛事に、思いっ切り首を突っ込んでいる虹心が!!)


 心の中で感じる俺では有るが、それを指摘すると虹心が怒りそうなので、俺は黙っておく。

 それに、此処で虹心と喧嘩をしてしまうと、今まで築き上げた虹心との関係に、ヒビが入るかも知れない!?


「後……木付さんだって、自分の情報を私が知っているのも変だと感じるでしょ!」

「小鞠ちゃんが、何処まで私の事を伝えているかは分からないけど、私が余計な事を言う必要性も無い!!」


「うっ……うん。虹心の言っている事は正しいよ!」

「初めて会う人なのに、相手が自分の事を知っていたら困惑するからね!///」


 俺は理解した表情で言う。

 虹心は表情を変えずに言葉を続ける。


「さっきも言った通り、小鞠ちゃんは本当に、木付さんが好きでは無いと思う!」

「けど、兄ちゃんが小鞠ちゃんに酷いことをしたし、小鞠ちゃんが相手から告白されたのは多分初めてだと思う!!」


「小鞠ちゃんの隠れファンが多いのを私は知っているけど、小鞠ちゃんの家庭状況から、小鞠ちゃんと仲を深めたがる男子は少なかったらしい……」

「小鞠ちゃんは、私以上に真面目だからね…。遊びで付き合うにはリスクが大きいんだよ……」


(どうして虹心に、其処までの情報収集能力が有るのだ!?)

(虹心は人気者だと以前、小鞠ちゃんから聞いて居るが、そんなに虹心の人脈は広いのか!!)

(俺とは本当に大違いだ……)


 小鞠ちゃんの家庭は、母子家庭で有る。

 母子家庭で有るから、申請さえすれば、色々と優遇される。


 学園費の一部免除や、行政からの支援など……

 これを……良くないと感じている人間が、意外と多いらしい!?


 これは、どの学年やクラスでも言えることだが、人間は弱者を見下す傾向が有る。

 そして、同時に人は見栄みえを張りたがる。


 小鞠ちゃんは虹心同等若しくは、それを上回る美少女で有り、性格も真面目で優しい子だ。

 そして、ガーデニングが趣味な、お嬢様に近い子で有る。


 正に、お花畑に存在する小鞠ちゃんと、関係を求めたがる男子も当然多いだろうが、周りがそれを認めない場合が有る!!


 人は劣等感を持つ人を見ると、自然と嫌悪感を持つように成っている!

 特に、同級生同士で付き合っているのが知られると、自然と悪い噂話が流れる。


 人間は、本当にいやしい生き物で有る……

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