第219話 ボート遊びも終わる

「……」


(どれだけ関係を深めても、兄妹の壁を越えることは出来ない…)

(しかし、それでも……何か、良いアイディアは無い物か…!)


 俺は解決策を出そうと頭の中で考え始めた時、虹心が突然、和やかな表情で言い始める。


「……さて、兄ちゃん!」

「シリアスごっこはこれで終わりにして、ボート遊びの続きをしようか!!」

「もう少し先に行って、其処でUターンして乗り場に戻ろう!!」


 虹心は陽気な口調で言い終えるとハンドルを握って、俺の了解も求めずにペダルを勝手に漕ぎ始める!!

 まるで、俺に反論の余地を与えないようにする行動でも有った。


 虹心がペダルを漕ぎだした以上、俺もペダルを漕ぎ始める。

 これは共同作業だからだ!!


『キコ、キコ、―――♪』


 池の真ん中付近に停泊していた、スワンボートがゆっくりと動き始める。

 兄弟愛の関係もゆっくりと流れて行けば良かったのだが、俺と虹心の場合は急ぎ足で行ってしまった。


 今後の俺と虹心の関係はどう成るのだろうか……何て、俺は思ったが直ぐに何時も通りの関係に戻ってしまう。


 ……


「ほら、兄ちゃん!♪」

「息が乱れて来たよ!!」


「もう少し、早く漕ぐ!!」

「時間に、間に合わなく成るよ!!♪」


 虹心は陽気な口調で、俺に発破を掛けてくる!!

 さっきの暗いモードは何処へ行った!?


 今、俺と虹心が操作をしているスワンボートは、ボート乗り場に戻っている途中で有る。

 あの後は、虹心が運転するボート遊びを楽しんで、時間も近付いて来たのでボート乗り場に戻っている。


 利用時間がギリギリに成ってしまったので、虹心は少し急いでいるようだが、利用時間を超えても延長料金を支払えば問題は無い。だが……


『300円の延長料金を兄ちゃんが支払うぐらいなら、私にアイスとジュースを奢ってよ♪』

『その方が、300円よりも安く済むでしょ!!♪』


 と、笑顔で言う始末で有る。

 虹心の中では少し急げば間に合うのに、急がないのは馬鹿がする事だと、言いたそうな感じで有った?


 俺は虹心と比べれば、虹心の方が遙かに運動神経は良い。

 そして、体力面も俺より虹心の方が、体力が有る感じがする……


『キコ、キコ、―――♪』


 俺は足の疲れを感じながらでも、虹心のペースに合わせてペダルを一生懸命漕ぐ……

 のんびりとしたボート遊びから、最後は額から汗が噴き出すボート遊びに成ってしまう!!


「~~~♪」


 俺は疲れを感じながらだが、虹心は楽しそうな表情のままで有る!?

 夏休みだからと言って、家で”ごろごろ”生活はやはりダメだな……

 ちなみに虹心は家事をしているので、運動不足では無い!?


 ……


 スワンボードが桟橋に到着すると同時に、それを待っていたばかりに、受付対応をした老人男性が桟橋に飛び出てくる!?

 虹心が上手にボートを接岸させたので、危険も少なく降りる事が出来る。


 俺からボートを降り始めて、虹心も続いてボートから降りる。

 俺と虹心がスワンボードから降りた時、老人男性は手に持っているストップウォッチらしき物を操作する?


「……44分か!」

「ギリギリだな……」


 老人男性はストップウォッチを見てから、しかめっ面と低い口調で言う!?

 老人男性の中では、俺たちから延長料金を取る気満々で有ったのだろうか??


「……ありがとうございました」


 老人男性は『ボソッ』と呟くように俺たちに言うと、俺たちの横を通り過ぎて、俺たちが乗っていたスワンボードの係留作業を始める。

 俺や虹心も、この老人男性とは関わりたい気持ちは無いので、足早にボート乗り場の建物を通過して公園に出る。


「ふぅ~~」


 公園に戻った直後、俺はため息を吐く。

 延長料金を取られなかった事や、虹心との関係も仲直り出来た(?)、安心感からのため息で有る。


 すると、虹心は“にこにこ”笑顔で俺に話し掛けてくる。


「兄ちゃん!」

「延長料金も浮いた事だし、ジュースとアイスを早速奢ってよ!!」


 虹心は俺にねだってくる!!

 さっきの言葉は冗談では無く、本当だったらしい!!(汗)

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