第214話 感じの悪い受付

「すいませ~~ん!」

「ボートに乗りたいのですが!!」


「えっ…!?」

「あぁ……ボートね…!」


 俺は、はっきりとした口調で言ったのに、老人男性は理解し切れていない表情と口調で言う!?

 大丈夫か…。ここのボート乗り場のスタッフとスワンボートは……ボート遊びで、ボート沈没だけは絶対に避けたいぞ!!


「……」


 虹心は俺を立てる為か、無言で微笑んでいる。

 交渉事では無いがスムーズに事を運ばせて、虹心とボート遊びをしたい!!


「はい。そうです!!」

「ボートを一隻借りたいのですが……」


 俺は澄ました表情と落ち着いた口調で、老人男性に言う。

 このボート乗り場の建物は、凄く年季が入った建物で有り、真っ昼間なのに建物内は薄暗い。


 その中で、管理人か雇われ人スタッフかは分からない、この老人男性はお化けのように見えてしまう!!

 老人だけ有って、耳が少し遠いようで、聞き返すように聞いて来る。

 これが自動券売機とかだったら、こんな面倒くさい事をしなくても良いのに……


「……ふぁ、ボートね…!」

「……どのボート?」


「どのボート??」


 俺は想定外の言葉が出て来て、“びっくり”してしまう。

 この公園のボートは、スワンボードしか無いはずだ。

 ボート乗り場から見えるボートは、スワンボートしか見えなかった。


 だが、この老人男性はボートの種類を聞いてきた!!

 俺は尋ねる表情で聞く。


「あっ、あの……ボートは、一種類だけでは無いのですが??」


「……手漕ぎと足漕ぎが有る!」

「……どれにする!?」


 老人男性は、少し不満そうな表情で俺に聞いて来る!!

 如何いかにも『事前に調べてから来いよ!!』と、言いたそうな表情で有る!!


「……」


 俺は、その老人男性の態度に一瞬ムッと来るが、俺の横には虹心が居る。

 俺は虹心と遊びに来ているだけで有るが、虹心は俺とデートのつもりで有る。

 そんな楽しい場面を、俺みずからが壊す必要は無い……


「……」

「!」


「……」


 虹心の方も無言の微笑みから、一瞬真顔の表情を見せるが、あくまで俺を立てる為に言葉を発言しない……

 面倒くさいボート乗り場スタッフと、遭ってしまった!!


(これがゲームの世界や漫画の世界なら、スムーズに事が運ぶのにな…)

(現実は、面倒くさいな…!!)


 俺は心の中でそう感じながら、老人男性スタッフとボートを借りる交渉(!?)を続ける。

 ボートでも、手漕ぎと足漕ぎが有るのは分かった。


(俺自らがボートに乗るのは、初めて有るし、当然手漕ぎボートと言えば、大きなしゃもじ見たいのを使って、ボートを漕ぐので有ろう!?)


 虹心のボート経験は分からないが、手漕ぎボート何て借りたら二人は、途方に暮れるはずだ!!


 借りるボートは足漕ぎタイプしか無いと思うが、虹心に一応リクエストを聞いてみる。

 ボート遊びを提案したのは虹心で有るし、俺が知らない所で虹心は、ボート遊びの経験者で有るかも知れないからだ。


「虹心!」

「どっちのボート借りる?」


「兄ちゃん!」

「足漕ぎで良いよ!!」


 俺が尋ねる表情で虹心に聞くと、虹心は穏やかな表情で即答する。

 この老人男性と長く関わると、ろくな目に遭わないと虹心も感じているのだろうか??

 俺は澄ました表情で、老人男性に向けて話し始める。


「すいません。足漕ぎでお願いします…!」


「……スワンボートあしこぎね!」

「……45分。千円だから!!」


 老人男性は営業スマイルゼロの、ぶっきらぼう表情で言う!!

 とても、客商売の態度とは言えないが、ここでキャンセルをする事も出来ない!!


(……思ったより高いな…)

(料金表なども表に出ていなかったし、本当にやる気が有る店か!!)


 俺は心の奥底で思ってしまう!

 こんな態度の悪いスタッフなんて、人生の中で初めてだ!!

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