第137話 一つの嵐が去る……

「キッド、いきなり何を言い出す!?///」


 岡谷君に襲い掛かる寸前で、キッドから止められるから、信濃は焦った表情でキッドに言う。

 けど、キッドは澄ました表情と低い口調で信濃に言う。


「お前が小道具を使うのか勝手だが……それをしたら、お前の右腕は奴に折られるぞ!」

「それが良いなら良いけどよ、其処までする事か…?」


「!!!」


「!!!」


 キッドの言葉で、俺と信濃は同時に驚く!!

 キッドの言葉からして、岡谷君の存在を知っているからだ!!

 だが、キッドの言葉はまだ続くようで有る。


「それに……学園内で、道具は使わない方が良い!」

「道具でやったのがバレたら、まず退学処分に成るからな……」

「此処は公立で無く私立だ…。中学のようには行かんぞ…!」


「それに俺らは、元々部外者だ!」

「熱く成る相手が違うぞ! 彗星…」


「……」


 キッドの言葉で、信濃は不服そうな表情をしながら、投げ捨てたペーパーナイフのさやを拾い上げ、ナイフを鞘に収めてポケットにしまう。

 キッドの言葉で、岡谷君と信濃の全面衝突は避けられた……


 信濃は岡谷君からキッドの側に戻る。

 キッドは岡谷君に向けて、澄ました表情と低い口調で言い始める。


「……久しぶりだな。岡谷…」


「……あぁ。だな…」


 岡谷君もキッドかわもとの事は知っているようで、澄ました表情で短い返事をする。


其奴そいつは……お前の親友か…?」


「あぁ……そうだ!」

「俺の親友だ!!」


「……そうか!」

「なら……これ以上の、面倒事はご免だな!」


 キッドは最後まで、澄ました表情と低い口調で言い終えると、松田の方に顔を向けて、同じ表情と口調で言い始める。


「……そんな訳だ! 松田!!」

「岡谷とは正面から戦っても、絶対勝てる相手でもないし、俺が居る中で、信濃に道具を使わすのは俺の道義に反する!」

「これで……失礼するよ!」


「あっ!///」

「ちょっと、待ってくださいよ~~~!///」

「キッドさん……彗星さん!!///」


 キッドは言葉を終えると、体の向きを変えて、俺と松田達から離れ始める!

 焦った表情で松田はキッド達に声を掛けるが、キッドは振り向こうとはしない。

 信濃も、キッドの後を直ぐに追い掛けて、一つの嵐が俺から去って行く……


「……」


 岡谷君はキッドを無言で見送り終えると、松田達の方に体の向きを変えて、松田に近付いて行き、澄ました表情と低い口調で、松田に質問を始める。


「松田……。貴様は、何をやっているのだ?」


「~~ひっ!///」


 岡谷君の澄ました表情が、松田には重圧感と恐怖を感じたのだろう。

 阿呆な声を上げている!


「……お前達も、もう良いだろ…?」

「そろそろ、三國を解放してやってくれんか?」


『パッ!』


 岡谷君の声掛けで、松田支配下の陽キャラ達が、俺の拘束をやっと此処で解く!?

 普通なら、絶対に反論や無視をする者だが、陽キャラ達は素直に拘束を解いた??


「……じゃあ、松田!///(汗)」

「俺達は用事が有るから!!///(汗)」


 松田支配下の陽キャラ達は、松田に向けて困った笑顔で言いながら、足早に去って行く。

 陽キャラ達も、これ以上の面倒事は嫌だと感じたのだろう。


「あっ、ちょ~~。お前ら待てよ~~~!(汗)」


 松田は焦った表情で、陽キャラ達に声を掛けるが、キッドと同じ様に一度も振り向く事は無く行ってしまう。

 学年一の強さを誇るキッドが、岡谷君を敬遠したのだから、当然で有ろう!!


 けど、キッドと同等の力を持つ、岡谷君は何者なんだ!??

 俺にとっては予想外の嬉しい出来事で有るが、同時に岡谷君を怒らしたら、俺は無事では済まない事も思い知らされてしまう……

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