第136話 信濃彗星……

「…………」


 虹心は岡谷君と信濃の対峙が始まると、松田達やキッドかわもと達から少し距離を離した場所に移動して、心配そうな表情で、その行方を見守っている。

 間隔はかなりひらけては居るが、会話は聞き取れる場所に虹心は居る。


 松田達は、虹心を捕らえようとはしない。

 捕らえても価値が無いと、判断しているのだろうか?

 最悪の事態に成ったら、虹心は直ぐに逃げられる態勢を取っているのだろう。


 松田支配下の陽キャラ達も、俺の体を拘束したままだが、表情は『もう、早く終わってくれ…』と言いたそうな表情をしている。

 きっと、陽キャラ達の中では、俺を軽くもてあそんで終わるつもりで有ったのだろう。


 だが、自体は大事に成ってキッド達が加わり、更に虹心や岡谷君まで来てしまった。

 松田は唖然とした表情で信濃を見ているし、キッドは澄ました表情で信濃と岡谷君をを見つめている。


「アレの代わりに……お前を潰す事に決めたわ!」

「……くたばれ!」


 睨みを利かせながら低い口調で信濃は言い終えると、間髪入れずに右フックを岡谷君に放った!!


『シュッ!』


『スッ……』


「!!!」


 しかし、岡谷君は信濃の右フックを軽々しく避けた!?

 あの図体(デブ)で、信濃の右フックをあっさりとかわした!!

 信じられない!!


(……柔道と相撲の経験しか無い岡谷君が、信濃のパンチを軽々しく躱した!!?)

(俺は、夢でも見ているのだろうか??)


 信濃の瞬発力は学年最強と聞くのに、それを機敏な体型とは見られない岡谷君が躱す!

 これが普通のバトル漫画なら、信濃の右フックをワザと受けて、耐える流れなのに岡谷君は躱してしまった。


「……てめぇ。デブの割に中々やるでは無いか!」

「……おもしれぇ…。徹底的に潰してやるよ!!」


「……」


 信濃が喧嘩モードの表情と口調で言う中、岡谷君は澄ました表情で信濃を見ている。

 岡谷君が全く動じないのに、信濃は焦りを感じたのだろう……

 今度は手では無く、足技を使って岡谷君に攻める!!


『シュッ!』


「……」


『ドガァッーー!!』


「……~!」


 目にも留まらぬは語弊が有るが、素早い足技で、岡谷君の太ももを目掛けて攻める信濃!

 信濃の足技は岡谷君の太ももに命中するが、岡谷君は受け流すように受け止めた!!


 だが、多少のダメージを岡谷君は受けたのだろう。

 少し顔をしかめていた。


「……嘘だろ……!」

「俺自慢の足技が、殆ど利かないとは…!?」


 信濃は少し“うろたえた”表情で言う!

 信濃はこぶしより、足技の方が得意技らしい。

 でも、その自慢の足技が、岡谷君には殆ど利かなかった。


「チッ……こう成ったら、道具を使ってでも…!」


 信濃は表情を険しくさせながら言いつつ、右ポケットに右手を入れた!

 まさか、ペーパーナイフを取り出す気か!!


『カラン!』


 信濃は先ほどのペーパーナイフを取り出すと、素早くナイフのさやを左手で外し、鞘を地面に投げ捨てる!?

 今の信濃は完全に、何処かの半グレと変わらない表情と仕草で有った!?


「多少……大事に成るだろうが、こちらもこのまま、身を引く訳には行かないからね…」


「……はぁ?」

「ふぅ……」


 信濃が完全戦闘モードに入って言っているのに、岡谷君は『やれやれ』の表情をしながらため息を付いている!?

 何処まで余裕なの、岡谷君!?

 信濃はナイフを右手で強く握りしめて、岡谷君に襲い掛かろうとした時……


「……止めとけ、彗星…!」

「お前では、此奴には勝てんよ…!!」


 信濃が襲い掛かる寸前で、キッドが澄ました表情と低い口調で、信濃に声を掛けた!

 流石のキッドも、流血事件に発展するのは不味いと感じたか!?

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