第134話 信濃のおふざけ……

「……俺、一抜けるわ!」

「二村が美少女の話しは聞いているが、俺はそんな女絡みで、殴る気が起きない……」

「お前が……女を、騙しているなら別だがな…」


「!!!」


 最後の文章は肝が冷えるぐらいの、恐ろしい表情を見せながらキッドは言う!!

 やっぱりこの人は、学年最強の人だ!


「ちょっ、ちょっと……キッドさん!(汗)」

「それは無いっすよ!//////」


 松田は陽キャラ口調だが、少し焦った口調でキッドに話し掛けている。

 だが、キッドは澄ました表情の低い口調で、松田に言う。


「松田……安心しろ!」

「俺は抜けたけど、彗星が居るから!!」


「!!!」


(そうだった……もう一人居た!)

(信濃彗星……)


「あっ、そっすか~~~!」

「では、彗星さん。お願いします~~~♪」


 松田は嬉しい表情で、信濃に向けて言う!

 キッドはこれでも人情派と噂話で聞いているが、信濃の場合は完全に感情で動くし、更には特攻隊長気取りだ!!

 実は言うと……キッドより、信濃の方が厄介かも知れない!?


「じゃあ……俺がキッドの代わりと松田の代わりに、ヤキを入れておくわ!」

「お前の名前は聞くつもりは無いし、まぁ素直にやられてくれや!!」


 信濃は和やかな表情で、俺に向けて言う!

 信濃は言い終えると……右ポケットから有る物を取り出す!!


(信濃は拳では無く、小道具を使う気か!)


 信濃が、ポケットから取り出した物。

 それは……ペーパーナイフで有った!!

 ペーパーナイフのさやを信濃は外している。


「只、殴るだけでは詰まらないからな!」

「少しばかり……恐怖も味わって貰わないと…!」


 信濃は不敵な笑みの表情で言い終えると、ペーパーナイフの柄を右手に持って、俺の真正面に近付き、ペーパーナイフの刃先を俺の右頬に当てた!!


「!!!」


(信濃は殴るのでは無く、ナイフで切りつける気か!!)

(そんな事をしたら、学園内でも警察沙汰だぞ!!)


 俺は心の中でそう思うが、それは俺が大事にした場合で有る。

 だが、学園社会は残念ながら、閉鎖的社会で有る。


 信濃が何処まで本気なのかは分からないが、頬を軽く切りつけただけでは、学園が隠滅行為に走る場合も有る!!


『問題は有りません!!』

『じゃれ合った事故でしたと……』


 そう、葉月学園の理事長がマスコミや警察に言いそうだ!?

 この学園ははっきり言って、素行が良い学園では無い。

 特進コースの様な優等生も居るが、キッドや信濃の様な荒くれ者も居る!!


 これは『来る者は拒まず』の、学園理事長方針だ。

 その為、授業料さえ毎月きちんと納めることが出来れば、素行不良でも、葉月学園 高等部に入学が出来てしまう!///(汗)

 中等部も同じ様で有るが、中等部の場合は余りに素行が悪すぎると、エスカレーター方式では進学が出来ないので、素行は中等部の方が遙かに良い!!


(信濃も馬鹿では無いから……ナイフで腹をえぐるとかは絶対にしないと思うが、何処までナイフで脅し掛けてくるかだ……)


『ペチ、ペチ……』


 一度は刃先を頬に向けた信濃だが、直ぐにナイフを平面にして、今はその平面で俺の頬を叩いている……信濃の表情は、とても愉快な表情をしている!?

 その表情と陽気な口調で、信濃は俺に向けて言う!!


「さて……どうしようかな♪」

「軽く切りつけても良いけど……俺は、加減が出来ん人間だからな♪」

「頬を完全に切ってしまうかも知れない……」


「~~!!!///(泣)」


 俺は信濃の言葉で、一気に縮み上がる!!

 脅し文句だと思うが、実際にやられたら痛いでは済まない!!!


「……信濃君。冗談だろ…///(汗)」

「そんな事されたら……ご飯が食べられなくなるよ!///(泣)」


 俺は泣き顔に近い表情と、声を震わせながら言ってしまう!!

 俺の仕草で、信濃は高笑いをしながら言う!!


「あはは~~~此奴、おもしれ~~!!」

「たったこんだけの事で、泣き顔に成ってやんの~~」


「ダセッ!」


 信濃の言葉の後。松田は馬鹿にした表情をしながら言う!!

 お前も、その立場に成ってみろ!!


 絶対、俺と同じ事を言うから!!!

 クソ松田が!!!!

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