第132話 陰で動く妹

「……」


 私はベンチに座っている、岡谷さんに近付いて声を掛ける。

 けど、岡谷さんは私が近付いているのに、私の存在に気付いていない!?


「……あっ、あのすいません!///」


「……?」


 私が声を掛けると、岡谷さんは私の方に顔を向けるが、言葉を発しようとはしない?


「あの……岡谷さんですよね…?」


 私は尋ねる表情で岡谷さんに言う。


「……君は?」


 興味の無い表情で、更に低い口調で岡谷さんは言う!

 やはりと言うか、岡谷さんは私の事を知らない感じだ!!

 兄ちゃんも妹が居ることを、岡谷さんに言っていないのかな?


「あっ……私、兄ちゃんの妹では無く、三國武蔵の妹です!///」

「三國虹心と言います!//////」


 私は頬を染めながら、少し恥ずかしい表情で岡谷さんに挨拶をする。


「……三國の妹さん?」

「……初めまして!」


 岡谷さんは、澄ました表情の低い口調で言いながら、私に向けて座りながらお辞儀をする。

 感情は表に見せないが、兄ちゃんの親友だから常識は有りそうだ。


「……で、俺に何の用…?」


 岡谷さんは、ぶっきらぼう表情で言う!

 如何にも『関わらないでくれ!』と、言いたそうな顔をしている!

 でも、この人には関わって貰わないと行けない!//////


「……いきなりで申し訳ないのですが、兄ちゃんいえ、兄を助けてくれませんか!///」

「兄が今……。旧校舎の方で絡まれているのです!!//////」


 私は頬を染めながら、お願いする表情とピンチの口調で言う!

 そして私の言葉で、岡谷さんの目つきと表情が変わる!!


「……!」

「馬鹿が動きやがったか……、三國が暴走したか…!」


 岡谷さんは眉をひそめながら、低い口調で言う。

 その表情と口調で、私に話し掛けてくる。


「三國の妹さんは……俺に、助けを求めているのか?」


「えっ……!?」


(どうして、この人は直ぐに動かないの!?)

(親友の大ピンチなのよ!!!)


 本当に兄ちゃんの言う通り、岡谷さんは不思議さんだ!

 全く、人と違う行動や考え方をしている!?

 私は焦った表情と感情を含ませながら、岡谷さんに訴えかける!


「はい! そうです!!」

「岡谷さんの見ての通り、私は中等部です!!」


「中等部ですから、高等部の職員室は分かりませんし、私の先生たちも兄ちゃんを助けるくれる保証は有りません!!」

「早くしないと……兄ちゃんが殴られるだけで済めば良いですけど、サンドバッグや五体不満足にされたら……私……」


 私は最後、涙を滲ませながら言う。

 これは演技では無い。本当の涙だ!!

 異性絡みの喧嘩や争いは、徹底的にやられるのは私でも理解しているからだ!


「…………」


 私の言葉が聞いた岡谷さんは、目を丸くして私を見ている。

 これで岡谷さんが動かなければ、私は演劇部に戻って助けを求めるしか無いが、確実に手遅れに成るだろう……


「…………良い妹を持ったな。三國!」


 岡谷さんは澄ました表情で呟く!

 私のお願いを、この人は聞いてくれるの!?


「本来だったら……俺が出ては行けないのだが、三國の妹さんに頼まれたら、人道主義に反するな…」

「仕方ない……三國では無く、三國の妹さんの為に、手を貸すか…!」


 何だか、凄く回りくどい事を言っている岡谷さんだが、言葉を言い終えるとベンチから立ち上がる!


「妹さん……案内してくれるかな?」


(やった!)

(岡谷さんは、私のお願いを聞いてくれた!!)


 兄ちゃん!

 今頃きっと、殴られているか、脅し掛けられて居るだろうけど、もう少しの辛抱だからね!!

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