第130話 絶体絶命!!

「松田……何やっているんだ?」


 キッドかわもとは澄ました表情と、低い口調で松田に質問をする。

 信濃は、キッドの側に居るが発言はしない。

 松田は和やかな表情でキッドに話し始める。


「あぁ!」

「キッドさん。彗星すいせい(信濃)さん。ちーす!」

「今。舐めた奴に、ヤキを入れようとしていたんですよ!!」


「?……舐めた奴?」


 キッドは低い口調で、松田に尋ねる様に聞くと……松田は、陽キャラ口調でキッドに話し始める。

 その中でも、松田支配下の陽キャラ達は、俺の拘束を解かない。


此奴こいつが~~、僕の大切な親友を泣かせたのですよ~~」

「その為、ちょっとヤキを入れておこうと思いましてね♪」


「……そうか!」

「なら……面白そうだし、俺も参加させて貰おうかな?」

「最近、体がなまっていたし!」


 キッドは興味を感じた表情で言うと、信濃も和やかな表情で会話に参加を始める。


「おっ、やっちゃいますか。キッドさん!!」

「此処なら、多少わめかれても問題ないですからね♪」


(どうして、そうなる!!)

(キッド、信濃!!)

(これは完全に、俺の人生終わったな……)


 これからいよいよ、松田・キッド連合に依る、俺への私刑が始まろうとしていた……


 ……


 その頃の虹心……


 私は演劇部の幽霊部員で有るが、まだ良く出る方の幽霊部員で有る!?

 この時期は夏休み前に行われる、小演目に向けて色々と雑用が有るので、私は幽霊部員で有るが出現する機会が増える?


 昨日は兄ちゃん絡みで、部に顔を出さなかったけど、今日は部に顔を出した。

 私は幽霊部員で有るが、演劇部内での居心地は悪くない!


 今は、同部同級生の子と一緒に、演劇部倉庫に仕舞って有った、小道具が入った段ボール箱を部室に向けて運んでいる。今度の小演目で使うそうだ。


 一緒に運んでいる子も、私と同じ様に幽霊部員で有る!

 演劇部の方針で、幽霊部員に複雑な仕事は基本させない。


「でね~~。虹心ちゃん!」

「クラスの―――」


「えっ、そうなの~~~。由佳ゆかちゃん!!」


 そんな訳だから、同部同級生の由佳ちゃんと、楽しくおしゃべりをしながら荷物を運んでいる。

 これを運び終えれば、本日部活動は私の中でお仕舞だ?


 演劇部倉庫が有る場所から、旧校舎沿いを歩き、あと少しで旧校舎の昇降口に近付いた所。とある部分に高等部の男子達が群がっていた?


 兄ちゃんと、同じ制服だから間違いない!

 普段……こんな人気の少ない場所で、人が群がること何て無いのに?


「明日はどうするの?」

「虹心ちゃん。―――」


 由佳ちゃんは和やかな表情で、私に話し掛けているが、私はそれが気に成って、その人達が群がっている場所に、少しだけ近付いて見ると……


(げっ……!?)

(こんな場所で兄ちゃん……絡まれちゃっているよ!!(汗))


 兄ちゃんは恐らく、二村さん絡みのトラブルに巻き込まれたのだろう……

 私は声を出してないから、兄ちゃんやそれを取り囲んでいる人達も、私の存在に気付いていない筈だ!


「―――」


(兄ちゃんを取り囲んでいる男子は……1、2、3、4人か…!)

(きっと……兄ちゃんの前に居る人が、松田さんかな?)

(私の勘だけど……)


(何かを兄ちゃんに言っている様だけど、はっきりとは聞き取れないな……)


「ねぇ……虹心ちゃん。どうしたの?」


 荷物を一緒に運んでいた由佳ちゃんが、私の後を付いて来て、心配した表情で聞いてきた。


「!?」


(あちゃ~~、由佳ちゃんも来ちゃったか…///)


『ダッ!』


 今、あの人達まつだに、私たちの存在を知られるのは不味いと、私の直感が訴えかける!!

 私は急ぎ足で、その場から離れる。


「!……あっ、待って!」

「虹心ちゃん!!///」


「…………」


 由佳ちゃんは私の異変に気付き、私の後を焦った表情で追い掛け始めるが、由佳ちゃんの声が結構響いた為、相手側の一人に、私たちの存在が知られてしまった!!///


(由佳ちゃん、声大きすぎだよ!//////)


(これは非常に不味いよ。兄ちゃん!(汗))

(兄ちゃん……本当に喧嘩弱いからな……)

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