第123話 おやつタイム

(折角、虹心が仕入れて来てくれた情報だが、もう、俺には必要ない情報だ……)

(だけど、伊藤さんが求めているかも知れないし、虹心だって今の二村さん情報を求めているだろう!)

(虹心からの情報を貰いつつ、俺も現段階で知っている情報を虹心に話そう!)


「じゃあ、兄ちゃん。待っているからね♪」


 虹心は和やかな表情で言い終えると、階段を降りて行った。

 お茶とお菓子の用意を、本当にするのだろう。


 俺はもう、毎日おやつを食べる子では無いが、虹心はまだ“おやつ”を食べている。

 その関係から、常に何かしらの、おやつは家に備蓄されている。

 俺は自室に戻り、これから虹心に話す事を考えながら、学園制服から普段着に着替える。


(洗いざらいも変だが、今日の出来事は包み隠さず、虹心に話した方が良いよな!)

(伊藤さんが……俺に対して、距離をひらけかけた事も……)


 普段着に着替え終わった俺は、一応スマートフォンを持って、虹心の部屋に向かう。

 虹心の部屋ドアは、開かれたままで有るから、まだ台所でおやつの準備をしているのだろう。


 俺はそのまま、虹心の部屋に入ると既にクッションは用意されていた。

 虹心が、おやつや飲み物を持ってくるので、ドアは閉めないで置く。

 その準備の良さから、虹心は俺に仕入れた情報を、話す気満々だった事を感じ取れる。


(虹心も……やっぱり、女性なんだな…)

(恋バナ関連は、女性は大好きだからな……)


 俺は用意されたクッションに腰を下ろして、1~2分位座って待っていると、階段を上ってくる足音が聞こえて来る!

 さっきの虹心では無いが、この階段の足音で、誰が上ってくるかは大体が見当が付く!


(虹心が来たな……)

(母親だったら、もう少し足音が大きいからな!)


 俺の予想通り、お盆を持った虹心が俺の視界に入ってくる。

 虹心はそのまま部屋に入ってきて、おやつが乗ったお盆をカーペット上に置いてから、部屋のドアを閉めに行く。


『カチャ♪』


「兄ちゃん!」

「お話しをする前に、おやつタイムにしようか♪」


 ドアを閉め終えた虹心は和やかな表情で、自分のクッションに座りながら言う。


「……そうだな!」


 俺も穏やかな表情で言って、虹心とおやつタイムの始まりで有る!

 食事前の挨拶をしてから、二人でおやつを食べ始める。

 飲み物は、市販品のミルクティーで有り、お茶菓子はチョコチップクッキーと揚げせんべいで有った。


(この、おやつは当たりだな!!)


 おやつは基本、母親が買ってくるので、どうしても当たり外れが有る……

 嫌いでは無いが、“かりんとう”やお徳用ビスケットの時も有る。

 まぁ、我が家のおやつ事情はどうでも良いか!!


「もぐ、もぐ、―――♪」


「ゴク……」


 虹心は美味しそうな表情で、チョコチップクッキーを食べている。

 俺はそれを見ながら、ミルクティーを飲んでいる。


(本当に、美味しそうに食べているな……)

(小鞠ちゃんの食べている姿も可愛いが、虹心は本当に嬉しそうに食べている……)


「ゴクン……んっ、兄ちゃん。どうした!」


 チョコチップクッキーを食べ終えた虹心が、俺の視線に気付いたのだろう。

 不思議そうな表情で聞いてくる。


「いや……別に…!」

「美味しそうに食べているなと、感じただけ……」


 俺は、少々遠慮気味の表情で言うが、虹心は和やかな表情で言う。


「チョコチップクッキーは美味しいからね♪」

「兄ちゃん。兄ちゃんも食べないと、私が全部食べちゃうぞ!♪」


 虹心はそう言いながら、新たにチョコチップクッキーを一枚手に取る。


(……別に、虹心が全部食べて貰っても良いけど、そうすると虹心の体系が“ふっくら”してしまうか!?)


 今日のおやつはベストな組み合わせだが、その分カロリーも非常に高い!

 甘いミルクティー。チョコチップクッキー。そして甘い味付けの揚げせんべい!!

 二人前を虹心が全部食べてしまうと……虹心の体重は、確実に『+』に成るだろう!!


「そうだな!(汗)」

「折角、二人前有るのだし、俺も食べないとな!(汗)」


 俺は少し焦った表情で言いながら、チョコチップクッキーを一枚手に取る。


「うん! 旨い!!」

「カロリーを感じるよ!///」


「?」


「もぐ、もぐ、―――」


 虹心は不思議そうな表情をするが、直ぐに食べる方に意識を向けた。

 虹心は可愛い妹で有るが、同時に今の体型が一番好きで有る。

 おやつの食べ過ぎで……『おデブちゃん!』に成ってしまう虹心は、俺の心が許さなかった!?

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