第122話 手の打ちようがない

 俺はそれを遠目に見ながら、教室から出る。

 冗談抜きで、二村さんは俺や伊藤さんとの縁を切るつもりだろう……


(伊藤さんは、様子を見ましょうと言ったが、“まごまご”している内に手遅れに成ってしまうぞ(汗))

(伊藤さんも伊藤さんで、二村さんとの関係を、自分の意思で断ち切るつもりか!?)


 虹心と小鞠ちゃんの関係では無いが、小鞠ちゃんが一方的に虹心と距離をひらけた時に、虹心は敢えて対処をしなかったし、今回の再会は偶然だと、虹心は言い切っている!!


(そう言えば『女の友情は、ロースハムより薄い!』と、ネットで見た事が有るが、それが事実なら、女の友情なんて有っても、無いような物だよな!!)

(本当にそうなら、二村さんは友情より、嫉妬やねたみの方が厚かった訳か!)


(……もう、二村さんは完全に諦めるか…?)

(俺や伊藤さんが悪いと二村さんは断定しているし、俺や伊藤さんも落ち度が有る)


(俺も、本能より理性を優先してきたが、もはや此処までかも知れないな……)

(太平洋戦争末期の日本軍で言うと、ポツダム宣言受諾直前だな……)


 俺の中でこれ以上、二村さんと関係修復を望むのは不可能だと感じた。

 後は伊藤さんの予想通り、古賀を筆頭にする、DQN女子達から苛められるのを待つしか無い!?

 それしか……二村さんと、関係修復を出来る機会は訪れないだろう。


(二村さんより、伊藤さんに意識を向けよう……)

(正しい方法では無いと、誰もが感じるかも知れないが、俺の力量で二村さんを振り向かせる事は無理だった……)


 俺は落ち込んだ表情と気分で、帰路に就く……


 ……


 特に寄り道はせずに、俺は自宅に戻る。

 玄関ドアを開けると、玄関には母親と虹心の靴が置いて有る。


 この時間に母親の靴が有ると言う事は、今日は休暇だったのだろうか?

 虹心は演劇部に所属しているが、幽霊部員なので、今日は帰宅部モードなのだろう?


 俺は靴を脱いで、家に上がる。

 この時間帯は、まだ晩ご飯を作る時間には早いので、母親はリビングに居る時が多い。


 リビングのドアを開けると俺の予想通り、母親はリビングでテレビを見ていたので、母親に帰宅挨拶をしてから、俺は自室に向かう。


 二階に自室は有るので、リビングを出て階段を上り、虹心の部屋を通り過ぎようとした所、タイミング良く虹心の部屋ドアがひらいた!?


『ガチャ♪』


「足音からして、兄ちゃんだと思ったんだ~~」

「兄ちゃん。お帰り~~♪」


 虹心はドアを開けた直後。

 和やかな表情で、俺に帰宅挨拶をしてきた!


「あっ、あぁ……ただいま。虹心!」


 俺は少し驚きながら、虹心に帰宅挨拶をする。


「兄ちゃん!」

「卓球クラブ同級生の子から、二村さん情報を仕入れてきたよ♪」


 俺に向けて、嬉しそうな表情で言う虹心。


「あぁ……昨夜。そんな事言っていたな……」

「虹心の同級生から、二村さんに関する事を聞いてくれると……」


「そう!」

「だから、着替えが終わってからで良いから、私の部屋に来て!」


「…………んっ、何か、兄ちゃん。元気ないね…?」


 笑顔で言う虹心だが俺の表情に気付いて、少し心配する表情に変わって言う虹心。


「あっ……分かるか。虹心…!」

「想像以上に、事態は悪化していてな……」


 俺は眉をひそめながら言う。

 けど、虹心は穏やかな表情で言い始める!?


「まぁ、でしょうね!」

「その辺の話しも聞いて上げるから、早く着替えてきて!!」

「その間に、私はお茶やお菓子の用意をして置くから!!」


「あっ、そうか……ありがとう!///(汗)」

「虹心…///」


 俺は、たじろいだ表情で返事をする。

 虹心の中では、予想通りの出来事で有ったのだろう!?


(虹心ですら、状況悪化の予想が付いていたのに、俺は僅かでも、期待の方を意識していた……)

(これは……本当に、終わりかも知れないな…!)

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