第115話 妹に報告 その2

「……虹心の言う通りだよ」

「二村さんと縁が切れたら、伊藤さんも俺との進展を考えているらしい…」


(伊藤さんの実際は、素振りだけだが……)


 俺は『しみじみ』した表情で言うと、虹心は嬉しそうな笑顔で言い始める!


「チャンスじゃん! 兄ちゃん!」

「二村さんなんか、振ってしまえ!!♪」

「絶対、そっちの方が良いよ!!♪♪」


「虹心……」

「そうしたいのは山々いや……今の段階では、二村さんと話し合いの場を作るのが難しいのだよ(汗)」


 俺が困った表情で言うと、虹心は穏やかな表情で言う。


「難しい…?」

「普通に放課後とかに、呼び出せば良いじゃん。兄ちゃん!」


「それがな虹心…」

「実は、松田に探りを入れられたんだよ!」

「『武蔵は彩織ちゃんに興味が有るのかと…』」


「まさか……兄ちゃん!」

「『有りません!』と、言っちゃったの!?」


 虹心は驚いた表情で言う。

 俺は諦めた表情で言う。


「その通りだよ……」


「あちゃ~~。兄ちゃんは、本当の馬鹿だね~~!」

「自ら、外堀を埋めてしまってどうするの!?」

「そんなの、松田さんに二村さんを『どうぞ!』と言っている様なもんだよ!!」


 虹心は興奮気味の表情で言う。

 それに松田に『さん』はいらん。呼び捨てで十分だ!


 確かにあの発言を失敗だと、俺も今頃ながら気付いた……

 俺は困った表情で虹心に言う。


「それそうだけど……俺だって、松田達には絡まれたくないんだよ!」

「松田のバックには、川本や信濃が居るから……」


 俺が過去に、他の連中らに苛められていたのは、虹心だって思いっきり知っているだろ!?


「あ~~、兄ちゃんが、以前そんなこと言っていたね!」

「それに兄ちゃんは、喧嘩けんか関連はからっきしダメだからね……」


 虹心は困った微笑みで言う。


「虹心!」

「喧嘩が強い・弱いの問題では無いよ(汗)」

「もし、川本や信濃達に目を付けられたら、俺の学園生活は“信長の野望”に成ってしまうよ!」


「信長の野望…?」

「兄ちゃんの学年は天下統一(伊藤さん・二村さん)を目指して、戦国時代にでも突入するの??」

「見てる側としては、面白そうだけど!♪」


 何故か、はしゃいだ笑顔で言う虹心!?

 虹心は、部外者だから良いだろうけど!?

 流石に……彼奴あいつら(川本達)も、虹心を巻き込ませる事はしないだろう!??

 俺は少し、想像してみる……


 ……


 武蔵の妄想……


 虹心が川本達にさらわれて、人気ひとけの少ない校舎裏で、出来事が起きている。

 松田が虹心を羽交い締めにしながら、松田が俺に向けて言葉を放つ!


「おい、武蔵!」

「彩織ちゃんから手を引かないと、お前の可愛い妹を傷物にするぞ!!」

「僕は興味ないけど、他の連中らが興味有るからね……」


『じゅるり!』


 その言葉で、舌なめずりをする川本達!?

 えっ……川本達は下級生に、興味が有るの!??


「助けて~~~」

「兄ちゃん~~///(泣)」


 虹心は、涙を滲ませた表情と鳴き声で言う!!


「くっ、貴様ら卑怯だぞ!!」

「俺の大事な妹に、手を出しやがって!!」

「そんなの、二村さんより、虹心の方が大事に決まっているだろ~~~///」


 俺の言葉で、松田は“にやり”の表情を見せる……

 こうして、俺は可愛い妹を守る為に、二村さんを諦めた……


 ……


 武蔵の妄想おわり……


(の訳無いか……)

(虹心は女性だが、気は非常に強いし、運動神経も並以上に有る!)


(絶対、川本達に捕まらないとは、言い切れないが素直に捕まる妹では無い)

(今でも、真面まともに俺と虹心が喧嘩をすれば、気力は虹心の方が上だからだな!?)


 そんな馬鹿な出来事は起きて欲しくないが、人間追い込まれると、何をしでかすかは分からない……

 でも、無いとは言い切れないのが難しい所で有る。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る