第105話 自動販売機

「どっ、どうして……そんな事を聞くの。……松田君?」

「俺は別に……二村さんに、気なんて無いよ!(汗)」


 俺はワザと、びっくりした表情で松田に言う。

 絶対、正直に答えては駄目だし、余計なことも言っては行けない。

 松田は、和やかな表情と陽キャラ口調で言う。


「いや~~、気が無いなら良いんだけど…」

「彩織ちゃんが『三國君は信用出来ない!』とか、言っていたからさ~~」


(あの女……。松田達に愚痴をこぼしたのか!)

(自分が、本当にモテると分かった瞬間にこれですか!!)

(だから、女子から目を付けられるんだよ。二村!!)


「本当に……気なんて無いよ!」

「普通のクラスメイトとして、会話をしていただけ…」


 俺は落ち着いた口調で言う。


「ほぇ~~。そうなんだ~~!」

「てっきり、武蔵が彩織ちゃんに気が有るかと思っていたよ~~」

「……あ~~。もぅ、良いよ!」


「まぁ、そういう事だよ!」

「松田!!」


 俺は松田たちに、穏やかな表情で返事をしてから教室を出た。

 俺は歩きながら考える。


(二村の野郎……完全に、俺を見限る気だな!)

(そっちがその気なら、俺だって伊藤さんと関係を深めてやる!!)


 俺の中で、二村さんに対する好意は急激に失われていた。

 伊藤さんだって、俺に気が有る雰囲気を感じ取れるし、本能に従えば俺は伊藤さんを求めている……

 本能より理性を優先して、俺は二村さんとの関係修復を望んだが、そっちがその気ならそれまで有る。


 俺は教室から屋外に有る、自動販売機コーナーに到着する。

 自動販売機で、缶コーヒーを買って、その場で飲み始める。


「ふぅ~~」

「缶コーヒーが胃にしみる…」


『カァーン♪』


『おい、そこ!!』


『ダッ、ダッッッ、ダ~~~』


 少し離れた運動場から聞こえる、部活の活動音を聞きながら、俺は缶コーヒーを飲む。

 きっと俺の今の姿は、缶コーヒーCMに出演出来るぐらいの、喪失感が漂っているだろう!?


(けど、まさか……此処まで、状況が悪化しているとは)

(二村さん…。よっぽど俺に、知られたくない過去だったのかな…?)


 誰だって、順風満帆じゅんぷうまんぱんな人生を歩みたい!

 美人が有る程度、苛められるは仕方が無いとは言えないが、やっかみを持つ人間が居る以上、どうしようも出来ない。


(……虹心の口から、苛めの話は聞かないけど、虹心は上手に立ち回れているのか?)


 虹心の性格は、少々勝ち気の性格で有る。

 家でも二人の兄に囲まれているから、男の扱い方も虹心なりに知っている!?

 今でこそ手は出さなく成ったが、つい最近までは口や手も良く出ていた!!


(あの、性格女を苛めようとしたら、本当に性的虐待しか無いからな…)


 妹にそんなことを思っては駄目だが、虹心は負けず嫌いだ!!

 虹心の喧嘩話は最近でこそ聞かないが、小学生の時は度々聞いた!!


 虹心は正義感が強いから、良く争い事に巻き込まれると言うより、自ら巻き込まれに行く。

 定番の注意などの言い合いから始まり、注意が暴言や悪口に変わり、しびれを切らした相手が手を出した瞬間、虹心も遠慮なしに手を出して、殆どの確率で虹心が勝つ。


 虹心は頭も良いのに、運動神経も人並み以上に有る。

 兄も優秀で、妹も優秀。


 けど、おれは並で有った。

 ねぇ、みんな。俺は並以上有るよね!///(汗)


(……何か、変なことも考えてしまったが、それは忘れよう!///)

(まぁ、虹心を苛めても、面白みは無いからな…)


 弱い者を苛めて面白いのは、苛められた側が只泣いたり、逃げまとうのを追い掛ける行為を苛め側が楽しいから、苛めが行われるので有る。

 更に金銭や物品を要求して、それを素直や馬鹿正直に持ってくるから、苛める側がさらにエスカレートする。


(虹心にそんな事をしたら、絶対反撃してくるし、親や先生に直ぐ言うからな!)


 苛めでの一番の問題は、苛められた側が、苛めを隠し通す事で有る。

 両親や親友に迷惑を掛けたくないとか、両親から怒られる等、その子成りの理由が有るだろうが、苛めを隠してしまうのが一番問題で有る。


 それとも……苛められる子は、其処までの頭が回らないのか……

 どちらにせよ、苛めは絶対にダメだ!!

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