第104話 前線崩壊……

「そういう事だから、ごめんね。三國君!///」

「……三國君も、お昼まだなんでしょ!」

「お弁当組なら良いけど、購買組なら早くしないと“あんパン”すら買えなくなるよ……」


 伊藤さんは俺に謝った後、気遣う表情で言ってくれる。

 俺にとっては最悪の状況で有った。

 二村さんと伊藤さんが絶交してしまったら、伊藤さん介入に依る、俺と二村さんの関係修復は事実上不可能で有る。


(これは本当に……伊藤さんに鞍替えか!)

(……でも、伊藤さんには片思いの人が居るだろう!?)


「では、伊藤さん。出直します…」


 俺は伊藤さんに、申し訳ない表情で言うしか無かった。

 これ以上ごねても、お昼の時間は無駄に過ぎて行くだけだし、俺は購買組だから早くしないと、昼食が買えずにお昼抜きに成ってしまう。(汗)


「そうして……」


 伊藤さんは困った表情で呟き終えると、静かに教室内に戻って行く……

 俺はそれを無言で見送った後、ダッシュで購買に向かった!!


 ……


 お昼抜きはまぬがれたが、俺が購買に到着した時点で、惣菜パン類はすべて売り切れており、菓子パン類も殆どが売り切れていた。

 何故か、何時も最後まで売れ残っている“あんパン”と、あまり好きでは無いがメロンパンが有ったので、それと牛乳を買って教室に戻る。


 俺が教室に戻ると、二村さんの姿は教室内に見えなかった。

 伊藤さんとは絶交をしているから、卓球クラブの親友の所でも行って居るのだろうか?


 俺は自席で、喉の通りにくいメロンパンを食べながら、鬱憤うっぷんを晴らす様に牛乳でメロンパンを流し込んだ……

 この日の昼食は、自分が好きなパンで無い事も有るし、気分的にも美味しいと感じる昼食では無かった。


 ……


 午後からの授業も、俺は悶々としながら受けていた。

 伊藤さんは相談には乗ってはくれるが、どんな事を話すのかや、俺の事をどう思っている等を考えてしまうと、授業の半分も俺の頭には入って来なかった……


 それでも、午後の授業をなんとか終えて、夕方HRが今行われている。

 何時も通りに夕方HRも終わり、部活やクラブ活動に向かう者、教室内で話しをし始める者など、放課後の時間が始まり出す……


(今から、特進コース教室に向かっても、教室前で待たされる事に成るな…)


 俺は待ち合わせの時間まで、何処で時間を潰そうかと考える。


(この教室に居ても、話す奴はいないしな…)

(それに、陽キャラ連中達の会話なんて聞いても仕方ないし…)


 岡谷君や高岡はHRが終わったら、直ぐに教室から出て行ってしまった。

 二村さんもクラブ活動が有るので、同じように教室を出て行った。


 だが、俺が席に座って居る真横を、二村さんは通り過ぎて行ったのに、挨拶も無しで通り過ぎて行った。

 俺は二村さんからの縁を、完全に切られているのだろう。

 俺の中でライバルに当る、松田や中田は教室内で仲間たちと会話を楽しんでいた。


(松田や中田と会話をしても馬が合わないし、外の自販機売り場でも行くか!)


 この学園は購買以外にも、屋外に自動販売機コーナーが有る。

 と言っても、ジュース類しか販売していないが。


 購買は基本的に、放課後以降は営業をしていない。

 それに購買のメインは昼食時で有る。

 また、最低限の文房具等も販売している。


 俺は自動販売機で飲み物を買うことを決め、カバンを持って席から立ち上がり、教室から出ようとした所……


「…おい、武蔵~~!」


 松田から、呼び止められる口調で言われる。

 松田の事は余り好きでは無いが、俺は落ち着いた口調で返事をする。


「何…? 松田?」


 俺は静かに返事して、松田たちの方へ体の向きを変えると、松田は和やかな表情で話し始める。


「お前さ~~。ちょっと、聞くけど…!」

「最近……彩織ちゃんと良く話しているそうだけど……まさか、気が有る訳じゃ無いよね~~?」


「!!!」


 松田は俺に陽キャラ口調で喋りながら、探りを入れに来た!!

 松田以外に、数人の陽キャラも側に居て、俺の事を見ている。


(勘づかれていたか!!)

(けど、しらばっくれるしかない!!!)

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