第106話 妹と鉢合わせ! その1

(二村さんの苛めなんか、本当は軽い苛めなんだから、開き直れば良いのだよ!)

(それなのに……)


 俺も小学生の時に苛められた事が有るが、俺には兄(航平)と虹心が居たため、其処まで非道い苛めに発展はしなかった。


 俺が苛められている場面を虹心が見付けると、虹心は直ぐに声を出すから、苛める側も俺を面倒くさい奴と感じたのだろう。

 直ぐに苛められる事は無くなった。


(俺は意外に、恵まれているのかな?)


 俺は缶コーヒーを飲み終えて、空き缶をゴミ箱に捨てようとした時……


「あっ! 兄ちゃんだ!!」


 虹心が、嬉しそうな表情と陽気な声を上げる。

 珍しく、学園内で虹心と鉢合わせをした!


 俺は高等部で有るし、虹心は中等部で有る上、此処は高等部側の敷地に成る。

 虹心は俺の側に駆け寄ってくるが、不思議そうな表情で話し出す。


「兄ちゃん。……そんな所で何をしているの…?」


「……それは、こっちの台詞だよ。虹心!」

「それに此処は、高等部側だぞ…」


 俺は、少し強めの口調で虹心に言う。

 中等部の生徒が、高等部に来て行けない理由は無いが、高等部教員に見付かると、何かを言われる可能性が有るからだ。

 だが虹心は、和やかな表情で俺に言う。


「私はアレだよ!」

「たまには、演劇部に顔を出そうかなと思って!!」


「あぁ……、演劇部の部室は高等部だもんな。虹心!」

「それなら、全く問題は無いな!!」


「けど……幽霊部員の虹心が顔を出しても、やる事が無いだろう?」


 俺は納得した表情で虹心に言った後、疑問を感じた表情で言う。

 虹心は正真正銘(!?)の、演劇部幽霊部員だ!!


 虹心は在籍をしているが、演劇部に顔出すのは週に1~2回ぐらいしか無いらしい。

 普通のクラブ活動なら、それが許される訳は無いが、演劇部は高等部・中等部合同のため部員数は多い。

 それに演劇部も、部員数が多ければ多いほどクラブ活動費が増えるから、幽霊部員に対して厳しいことは一切言わないらしい!?


「それが有るんだよ。兄ちゃん!」

「足りない物を買いに行ったり、大道具や小道具の製作が♪」

「これでも、私は頼りにされているんだよ!!」


 和やかな表情で『エッヘン!』とでも言うように、胸を反らしながら言う虹心。

 普段は幽霊部員で有るが、文化祭時期付近だけは真面目に活動している!?


「……ようするに、雑用をしに行くわけね!」

「虹心は顔立ちが良いから、本格的に部活動をすれば良いのに……そうすればヒロインがれるぞ!!」


 俺は和やかな表情で、虹心に言うが……


「……兄ちゃんが、私を褒めるなんて珍しい…!」

「明日は大雨だな…」


 虹心は少々驚きながら言うが、穏やかな表情に変わって言葉を続ける。


「それも悪くは無いけどさ……お母さんが居ない時は、私が家事をしないと行けないでしょ!」


「私は本当の幽霊部員だから、文化祭直前でも、時間に成ったら平気で抜けられるし、それを本当に活動を始めたら、それが出来なくなるからね!」

「そして、お兄ちゃんも兄ちゃんも、料理は全然駄目だし掃除も雑だし……ごみの分別も下手くそだし!」


 最後の文章は、嫌みを言う口調で言う虹心。

 虹心の言葉通りだから、反論は出来んが……


「それを言われるとな…」

「俺と兄も簡単な料理は出来るが、虹心の様に凝った料理は作らないからな!」


 俺が理解した表情で言うと、嬉しそうな笑顔で虹心は言い始める。


「……冷凍餃子をフライパンで只焼いて、自慢げに『焼き餃子!』と言う兄ちゃんですからね!」

「私は毎日、スーパーなどの惣菜品を食べるより、少しでも手料理をした方が良いと思う派だからね♪」


 虹心は家事が、本当に好きなようだ。

 だからこそ、青春の1ページで有る部活動より家事を選んだ。


「でっ、兄ちゃんは何で此処に居るの?」

「兄ちゃんも、授業は終わったんでしょ?」


 虹心は穏やかな表情で聞いてくる。

 俺も穏やかな表情で虹心に答える。


「俺は喉が渇いたから、ジュースを買って飲んでいたんだよ!」


「兄ちゃんは帰宅部なのに態々わざわざ、ジュースを買いに来たの?」

「家に帰れば、ジュースなんか冷蔵庫に冷えているのに……」


 虹心は疑問を感じた表情で言う。

 まぁ、普通はそうだな。


 俺は、今後の予定を虹心に話すことにする。

 虹心にも、今の状況を知ってもらいたいからだ。

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