第100話 落ち着かない夜

「まぁ……聞きたいことは聞けたし、私も後片付けが有るからね!」

「でも、兄ちゃん。最後に聞かせて!」

「兄ちゃんはそれでも、二村さんと関係を深めるの?」


 虹心は真面目な表情で、俺に聞いてくる。

 俺は『仕方ない』の表情で、虹心に言う。


「虹心……それしか無いだろう!」

「伊藤さんだって片思いの人が居るし、それに俺が伊藤さんに好意を求めに行ったら、伊藤さんからビンタを喰らうよ!」


「そうかな~~?」

「案外……素直に受け入れそうな感じもするけどな!」


 虹心は微笑みながら言う。

 俺は穏やかな表情で、虹心に言う。


「今は……二村さんの関係修復を最優先させるよ!」

「こんな時に、松田や中田が甘い声を二村さんに掛けたら、二村さんは絶対に彼奴あいつらの手に落ちるから!」


「その方が、兄ちゃんには都合が良いのでは無い?」

「そう成ったら面と向かって、伊藤さんと関係を深められるよ!!」


 嬉しそうな表情で言う虹心。


「まだ言うか…。虹心は!!」

「とにかく、俺の今段階では、二村さんが一番大事!!」

「本当に、この後の時間に差し支えるから、これでお仕舞い!!」


 俺は、宣言する様に言って席を立つ。


「最終的に決めるのは兄ちゃんだから、うん……」

「私も、後片付けした後にテレビドラマ見て、その後直ぐにお風呂入りたいから、それまでにはお風呂出てね。兄ちゃん!」


 虹心も席から立ち上がり、和やかな表情で俺に向けて言ってから、晩ご飯後の後片付けを始め出す。

 今晩は洗い物が殆ど無いらしいし、虹心から『手伝っていけ!』と、言われる前に俺は自室に戻る。


 自室に戻り俺はスマートフォンを操作して、二村さんからの連絡確認をするが、電話着信やRailからの通知は無かった……

 時刻も22時手前だし、幾ら何でもこの時間なら二村さんは落ち着いていると信じ、俺はRailで連絡を取ってみる。

 Railアプリを立ち上げ、メッセージを俺は打ち込む……


「二村さん。こんばんは☆」

「二村さんの秘密を知って、ごめんね(T-T)」


「このことは、誰にも言わないから許して!///」


 俺はメッセージを打ち込んで、二村さん宛てに送信をする。


(直ぐに、返信は帰って来ないと思うし、先にお風呂入りに行くか…)

(テレビドラマが終わるまでに、風呂を済ませろと、虹心から言われているし)


 今日は本当に疲れた一日で有ったので、サラリーマンでは無いが、湯船でゆっくりと疲れを取りたい気分で有った。

 スマートフォンは自室に置いたままにして、俺はお風呂に入りに行く……


 ☆


 お風呂から上がり、台所で冷たい飲み物を、手に持ってから自室に戻る。

 虹心はリビングでテレビドラマを見ていたが、日常会話以外はされなかった。

 俺は二村さんから返信は来ていると信じて、スマートフォンを操作するが……


(……あれ?)

(返信どころか、既読マークすら付いてない??)

(どうしてだ!??)


 時刻は22時をかなり過ぎた時刻で有って、近所とは言えどもこの時間まで、伊藤さんと二村さんが口論をしている訳は無い!


(……伊藤さんに連絡を取りたいが、伊藤さんのRailは聞いて無いし、クラスも違うから電話番号も分からない)

(これでは、連絡の取りようが無いな…)


 二村さんの携帯電話番号はクラスの連絡網から直ぐ分かるが、この状態で二村さんに電話をしても、まず出ないだろう。

 思った以上に、二村さんは怒って居る感じで有った。


「はぁ……」

「課題でもするか……」


 俺はため息を吐いた後。課題を行うために勉強机へ向かう。

 二村さんからの返信を期待しながら、俺は課題をして居るが……


(ダメだ…。課題に集中出来ないな……)


 途中で、課題を辞めたい衝動に駆られてしまうが、明日のことを考えると嫌々でもやるしか無い。

 一時間ぐらい時間を掛けて、俺は課題をやり遂げたが、その間にスマートフォンから着信音が鳴ることは一切無かった……

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