第99話 妹が寝返った!?

「ごめん、虹心。言葉が過ぎた……」


 俺は虹心に謝る。

 虹心は、ふてくされた表情で言う。


「たくっ~~。其処まで伊藤さんと比較しなくても良いよ!」

「それに私は、まだ中等部だよ!!」

「これから一気に身長が伸びて、ボン・キュン・ポンに成るのだから♪」


 最後の文章は、嬉しそうな笑顔で言う虹心!?


(虹心! お前の人生は二周目か!?)

(何処で、そんな死語を覚えてきた??)


「兄ちゃんは、やっぱり伊藤さんの方が好きでした!」

「乗り換えちゃいなよ♪」

「その方が、兄ちゃん。絶対幸せに成るよ♪」


 虹心は嬉しそうな笑顔で言うが、そんな簡単に乗り換えなんて出来ない。

 俺は注意する口調で虹心に言う。


「軽く言うな、虹心!」

「伊藤さんには、片思いの人が居るんだぞ!!」


「けど、その人は海外で音信不通でしょ!」

「チャンスだよ兄ちゃん!♪」


「全く……他人事だと思って…!」


 虹心の不機嫌も直って良かったが、俺の秘めている思いが“どんどん”周囲に漏れ出していた。

 もう、漏れているでは無くダダ漏れで有った。

 この世の中。妹に恋愛相談するバカな兄は、殆ど居ないだろう!?


「……虹心が応援する人は伊藤さんでは無くて、小鞠ちゃんでは無いのか!?」


 虹心が余りにも伊藤さんを押しに来たので、俺は疑問を抱いた表情で言う。

 けど、虹心は表情を変えずに言う。


「そりゃあ、小鞠ちゃんを応援しているけどさ……、兄ちゃんが幸せに成るのが、やっぱり一番ではない~~?♪」


「兄ちゃんと小鞠ちゃんが結婚するのも、私の理想の1つだけど、兄ちゃんと伊藤さんが本当に付き合い始めたら、小鞠ちゃんはきっと諦めると思う!」


 最後の文章は、自信ありげの表情で言う虹心?


「虹心に何故、そんなことが判るのだ?」


 俺は虹心に不思議そうな表情で聞くと、虹心は和やかな表情で言い始める。


「兄ちゃん!」

「小鞠ちゃん。前、言って居たよね!」

「兄ちゃんを求めているのは、“お兄ちゃん”で求めていると!!」


「そう言う、設定と言うか話しだったな。虹心…」


「小鞠ちゃんが急に兄ちゃんを意識したのは、小鞠ちゃんの中では二村さんを下に見ていたと思う!」


「下に見ていた!?」

「小鞠ちゃんの中では、二村さんは下に成るの!?」


 俺は虹心の言葉で、驚きながらの表情で言う!


「きっと、そうだと思う!」

「二村さんなら勝てると、小鞠ちゃんは思ったんでしょうね♪」


 虹心は笑顔で言う。


(俺の中では小鞠ちゃんより、二村さんと関係を絶対に深めたいが、今は大ピンチの状態だ…)


「だけど、兄ちゃんが伊藤さんと関係を深めたら、小鞠ちゃんは勝てないと判断する筈だから、諦めると思う!」


 虹心の言っていることが全て正しいとしても、俺は二村さんを真正面から裏切る行為に成るし、虹心も小鞠ちゃんを裏切ることに成る。

 俺は虹心に、真面目な表情で問いかける。


「……虹心は、それで良いのか?」

「俺がすることは、二村さんに見切りを付けて、伊藤さんに乗り換える行為に成るんだぞ!」

「そんな男性を、幾ら家族目線だからと言って、虹心は許せるのか!?」


 だが、虹心は、和やかな表情で問いに答える。


「兄ちゃん。家族だから、幸せに成って欲しいんだよ!」

「兄ちゃんが赤の他人だったら、そんなことは絶対に言わないし、私としては伊藤さんを押すね♪」


(だからと言って『はい。伊藤さんに乗り換えます!』とは言えん)

(伊藤さんの本当の気持ちも分からないし、今現在、伊藤さんと二村さんの関係が修復出来たかも判らない……)


 幾ら、虹心が優秀な参謀でも、やはり人間は最後、人の気持ちで動いてしまう。

 俺が求めた人は二村さんなのだから、振られるまでは二村さんで行くべきだ!


「虹心…。これで、俺の状況が判っただろ」

「今夜は課題が出ているし、そろそろお開きにしないか?」


 俺は虹心に疲れた表情で言う。

 台所に有る壁時計を見ると、時刻は21半前だった。

 二村さんへの連絡や課題の時間を考えると、この辺で勘弁して貰いたかった。

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