第97話 妹に顛末を話す その1

「私は平気よ。宿題も終わらせたし、兄ちゃんが帰って来るまでの間に、グリル等の調理器具の洗浄も終えている」

「豚汁は明日の朝食も兼ねて、ワザと多めに作っているから鍋も洗わなくても良い」

「私は兄ちゃんの事を聞く、時間はたっぷりと有るわ!」


 虹心は澄ました表情で言う。


(なんだか、話し方まで伊藤さんと似て来たぞ。虹心……)

(俺が一番好きなのは、二村さんや小鞠ちゃんでは無く、虹心だったのか…!?)


「じゃあ、話すよ……」


「しっかり、聞いて上げる。兄ちゃん……」


 俺は虹心に確認を取ると、虹心は伊藤さんのように、澄ました表情で返事をする。

 虹心は不機嫌に成ると、元々その様な態度を取るが、俺の中では伊藤さんにダブって見えて仕方なかった……


 ……


 俺は今日の経緯いきさつを、虹心に洗いざらい話している。

 妹にこんな事を話す必要は全く無いが、虹心協力のお陰で今が有るし、晩ご飯を台無しにしてしまった、後ろめたさも有った……


 更に、俺と二村さんの関係は、進展を深める前に破局寸前を向かえており、非常に不味い状態で有った。

 虹心は茶化す時も多いが、俺の話しを真剣に聞いてくれ、また率直な意見を言う時も多いので、俺は虹心に洗いざらい話した……


 ……


「…………」


 俺の話しを全て聞いた虹心の表情は、不機嫌顔から哀れんだ表情に変わっていた!?


「兄ちゃん……さっきは、ごめん!///」」

「兄ちゃんが、二村さんとそんな状態に成って居るなんて、気付かなかったから…」


 虹心は寂しそうな表情で言う。

 俺も、虹心に謝る表情で言う。


「俺の方だって悪かった。虹心!///」

「少し遅く成るだけで無く、具体的な時間を伝えるべきで有った!」

「そうすれば、食べ頃を逃した料理を出す事は無かった……」


「……兄ちゃん。分かってくれていたんだ…///」


 虹心は少し微笑みながら言う。


「前回のカレーは気付かなかったが、今回は豚汁と鮭の塩焼きだったから気付けた…」


「あぁ! 有ったね!!」

「兄ちゃんだけ、肉無しカレー♪」


 虹心は急に、和やかな表情とはしゃいだ口調で言い出す!

 俺と二村さんの話しは、虹心の中では終了ですか!?


「あの時は本当にムカついたから、兄ちゃんだけ肉無しカレーにしたけど、兄ちゃんも良く文句言わなかったね!♪」


「今晩のような、二人きりだったら言ったかも知れないけど、あの時は兄が居ただろ!」

「兄も、俺が帰って来るのを待っていたし……」


「あの時の兄ちゃんは……何で、遅く成ったんだっけ?」


 虹心は不思議そうな表情で言うが、俺はその話題をさえぎるように言う。


「今は、そのことは関係ないだろ……」

「俺が今、らなければ成らないのは、今後の二村さんとの関係をどうするかだ!」


(岡谷君とガダルカナル島の議論をしていた何て、虹心に言える訳無いよ!(汗))

(あの時は、ア○メイトで誤魔化したけど……///)


「どうするべきかね……?」


 虹心は真面目な表情で呟き、テーブルの上に両肘をつき、両手を組んで考え始めた……

 しばらく考えて居た虹心だが、考えが纏まったらしく、俺に穏やかな表情で話し掛けてくる。


「兄ちゃん……私は思うのだけど、無理をして二村さんと関係を深める必要が有るのかな?」


「何を言い出す!? 虹心!!」


 虹心の言葉に、俺は驚きながら言う。

 だが、虹心は穏やかな表情で言葉を続ける。


「だってさ、二村さんが怒った理由は、兄ちゃんと伊藤さんの密会と、二村さんが知られたくない過去を、伊藤さんが勝手に兄ちゃんに話したのが原因でしょう?」


(良く理解しているな……流石、優秀な虹心だ!)

(伊藤さんを意識する前は、小生意気な妹だったが、今では完全伊藤さんに見えてしまう)


「そう言う事だな…」


 俺は虹心に、納得した表情で返事をする。

 二村さんに好意を見せておきながら、伊藤さんと仲良くするのは道理に反していたのかも知れない?

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