第7話 連絡先交換

「どうしましたか…?」

「虹心ちゃんの…兄さん?」


 小鞠ちゃんは俺の事を武蔵さんとは呼ばずに、“虹心ちゃんの兄さん”と言っている。

 ここは屋外だから、小鞠ちゃんは言葉を使い分けているのだろう。

 それは俺が、異性の対象では無いから!?


 虹心は兄で有る航平と俺を呼ぶ時、お兄ちゃん・兄ちゃんと使い分けている。

 妹の虹心が、航平さんや武蔵さんと呼ぶのも変だし、呼び捨てはもっと不味い……

 虹心が俺達をその様に呼ぶから、小鞠ちゃんも同じように真似て呼ぶ時も有るけど、出来れば外でも“武蔵さん”と、呼んで欲しいと思う俺で有る。


「あっ、いや……ちょっと///」


「?」

「私、……忘れ物でもしましたか?」


 小鞠ちゃんは不思議そうな表情で言う。


「あっ……そうでは無いけど///」


 小鞠ちゃんは俺が、忘れ物を届けに来たと感じているのだろう。

 小鞠ちゃんとは日常会話が出来る関係なのに、いざ連絡先交換の話をしようとすると、俺は急激に緊張してきた。妹の幼なじみなのに!!


「……?」


 小鞠ちゃんは澄ました表情で、俺を無言で見ている。

『どうしたのだろう?』より『この人、何がしたいのだろうの?』の顔つきで有った!


(小鞠ちゃんとは“顔なじみ”だから良いけど、これがナンパなら絶対に失敗だ!///)

(勇気を持って、頑張って言うんだ! 俺!!)


「こっ、小鞠ちゃん……良かったら、俺と連絡先を交換しない?」

「小鞠ちゃんと、友達に成りたいんだ!///」


「…えっ!?」

「いきなり、何を言っているのですか!!!///」


 小鞠ちゃんは一瞬驚いた後、直ぐに顔を険しくさせながら言うが、俺はめげずに言葉を続ける。


「虹心が居ない時でも、俺は小鞠ちゃんと仲良く成りたいんだ///」

「……小鞠ちゃんと、もっと関係を深めたいんだ!///」


 まるで、愛の告白かよと言いたく成るぐらい、俺は恥ずかしさに負けそうだが、それでも言う//////


「虹心ちゃんの兄さん……ううん。武蔵さんとですか?」


 けど、小鞠ちゃんはどちらかと言えば、状況が理解出来ていない感じで有った。


「そう…。RailのIDと後、電話番号も良ければ…」


「……///」


 俺が呟くように言うと……小鞠ちゃんは、困った表情に成ってしまった!!


(…あれ?)

(俺を気にしている割には、反応が悪いぞ!!)

(虹心の言葉で、冗談抜きで興味を失ってしまったか!?)


「武蔵さんは……どうして、私と連絡先を交換したいのですか?///」


 小鞠ちゃんは頬を染めながら、上目遣いで聞いてくる。


「そっ、それはもちろん、小鞠ちゃんと友達に成りたいからさ!!///」


 俺は素直に言う。

 着飾った言葉を使っても、俺の場合は直ぐにボロが出る。

 素直が一番だ!!


「……///」


 すると小鞠ちゃんは、何かを決心した顔つきに変わり、手に持っている学園鞄からスマートフォンを取り出す。これは成功したか!!

 けど、小鞠ちゃんは頬を染めながら、真面目な表情で言い始める。


「……武蔵さん。連絡先交換しても良いですけど、一つお願いが有ります///」

「そのお願いを聞いてくれましたら、連絡先を交換します!///」


「お願い…?」

「それは、どんなお願い?」


 俺はどんなお願い事かと思いながら、小鞠ちゃんに聞く。


「武蔵さん……」

「私と友達に成ったことは、虹心ちゃんには言わないで下さい…!」

「それがお願いです!///」


 頬を染めながら困った表情で言う、小鞠ちゃん!


「へっ…!」

「それが……小鞠ちゃんのお願い??」


 俺は予想外の言葉が出て来たので、少し唖然としながら言う。


「はい。そうです///」

「私も……武蔵さんとは友達に成りたいと感じていました!」


「けど……虹心ちゃんが、良い顔をしないのです!」

「それが、私からのお願いです!///」


 頬を染めたまま顔をうつむかせる小鞠ちゃん……

 小鞠ちゃんの中でも、虹心の影響力は大きいのだろう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る