第6話 エンカウント

(これが、仲の良い兄妹なら『あれやこれを買って来て、お兄ちゃん❤』になると思うが、あの世界は本当に有るのだろうか…?)


 妹のパシリになるのも悪くは無いが……可愛い妹限定だろう。

 これが、デ○やブ○の妹だったら、俺は絶対に言う事を聞かないと思う!?

 コンビニ行って欲しい物なんて無いが『散歩』と言うと、虹心に怪しまれるのでコンビニと言った。虹心は勘が冴えるからだ。


 俺は外に出て、夕方景色の住宅街を歩く。今日が天気の良い日で良かった。

 後は18時付近まで適当に時間を潰して、自分の家に帰宅する小鞠ちゃんと上手に出会うだけだ!!

 果たして……小鞠ちゃんとエンカウントは出来るだろうか?


 ……


 俺は当初の予定通り、家近くのコンビニに行き、流石に何かを買わずに出て来るのは、良くないかと感じて、コンビニ限定カップ麺を数個買ってからコンビニを出る。

 その後は、自宅に向けて歩き始める。


(小鞠ちゃんとはどの辺りで、出会えるのだろうか?)

(……俺の家から帰るのだし、近道で狭い路地裏を通って帰る子では無いだろう)


 変質者の情報も、最近良く耳にする。

 小鞠ちゃんぐらいの可愛い子に成ってくると、変質者も狙いを定めてくるはずだ。


(きっと、小鞠ちゃんのことだ!)

(真面目なあの子は、大通りを通って自分の家に戻るだろう!)


 俺は色々と心で思いながら、自宅向けて歩いていると……


(んっ……あの姿は、小鞠ちゃん!?)

(本当に出会えた……あっ、違うわ!?)


 俺は本当に小鞠ちゃんと出会えたと一瞬感じたが、同じ学園制服を着て、背丈だけが似ていた人違いで有った。

 その人違いとすれ違う……。俺の知らない人だった///


(よくよく考えれば……小鞠ちゃんの家が、俺の歩いている反対方向だったら絶対無理だよな…)


 全く、小鞠ちゃんの姿形が見えて来ないので、作戦は失敗だなと俺は感じていた。

 けど、自宅が見えて来た道に入った時丁度、虹心と小鞠ちゃんが俺の家から出て来た! 


 神は俺の味方をしてくれた!!

 でも、其処にはターゲットの小鞠ちゃんも居るが、にくき虹心も居る!!

 さて、どうするべきか……


 漫画の世界では無いが、都合良く真横に電柱が有るので、俺は虹心たちに気付かれない内に電柱へ隠れる!


「ばいばい~~、小鞠ちゃん♪」


「はい。―――」


 俺が隠れている場所から自宅までは少し距離が有るが、それでも虹心の陽気声がはっきりと聞こえてくる。本当に声が通りやすい妹だ。

 小鞠ちゃんは控えめな口調で言っているのだろう。殆ど聞き取ることは出来なかった。


 虹心と別れの挨拶をして、小鞠ちゃんは歩き始めた。

 案の定と言うか…、小鞠ちゃんは俺が来た方角には向かわずに、反対方向に向けて歩いて行く。

 これが、後数分遅かったら、今回の作戦は完全失敗に終わっていた。


(よし…、虹心も家に戻っていったな!)

(……俺も男に成るぞ!!)


 虹心が家に戻って行くのを完全に確認してから、俺は小走りで小鞠ちゃんを追いかけ始める!!

 一歩間違えれば完全の犯罪者だが、俺にはこれしか手が無い!!


(ストーカーもこんな気分なんだろうか??)


 歩く速度が“ゆっくり”な小鞠ちゃんだから、俺は直ぐに小鞠ちゃんに追い付いて声を掛ける。


「小鞠ちゃん~~」


「……えっ」


 俺が声を掛けると、小鞠ちゃんは少し驚いた声を上げて立ち止まり、俺の方に顔を向ける。

 さぁ、ここからが真の作戦開始だ!!

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