第5話 はじめの一歩!

「あっ……待たせちゃった?」

「小鞠ちゃん…///」


「……いえ、いま来た所です///」

「大丈夫ですよ……武蔵さん!///」


 トイレ前で鉢合わせをしただけなのに、デートの待ち合わせ会話でもする、俺と小鞠ちゃん。

 俺はそのまま声を掛けること無くトイレを後にして、小鞠ちゃんも“そそくさ”とトイレに入っていく。


(虹心があんな事を言わなければ、小鞠ちゃんを彼女に出来たのかも知れないのに!)


 俺は心の中で憤慨するが、同時に有ることも思い付く……


(小鞠ちゃんは俺に気が有るのだから、こちらからアプローチを仕掛ければ、振り向く可能性は絶対高いよな!!)

(小鞠ちゃんの年齢的にはまだ、大人の関係を築ける仲では無いけど、そんなのゆっくりと成長させていけば良い)

(俺にとって今は、体の繋がりよりも心の繋がりを求めている!!)


 俺はそのまま自室に戻って、どうやったら小鞠ちゃんと、親密な関係に成れるかを考え始めた……


 ……


(……小鞠ちゃんと関係を深めるのは、連絡先の交換位しか俺には思い付かない…)


 相手と親密に成りたければ、その初めの一歩は連絡先の交換で有る。

 今の時代だと電話番号の交換より、Rail(SNS)のID交換が主流で有る。


 いきなり小鞠ちゃんをデートに誘うのも一つの手だが、小鞠ちゃん見たいなタイプは絶対に断ってくる!!

 趣味から親密に成るルートも存在するが、俺は小鞠ちゃんの趣味を殆ど知らない。

 小鞠ちゃんは何が趣味なんだろうか?


(今の女子達は、趣味が多種多様だからな…)

(俺たち男子のような、ゲームや漫画などの単純な趣味では無いだろう!)


 学園内の女子たちも、色々な趣味を持っている。

 SNSで自分をPRしたり、漫画や小説を読むだけで無く、それを実際に描いてWebサイトに投稿したり、写真撮影、ファション・流行の最先端を追い掛けたりと、多種多様な時代で有る。


(ここはスタンダードの連絡交換と、小鞠ちゃんの趣味もついでに聞いて見るか!)

(もしかしたら、その趣味から関係を深められるかも知れない!!)

(今日は夕方には、家に帰ると小鞠ちゃんは言っていたから偶然を装って―――)


 俺は小鞠ちゃんの連絡先交換を実行する為に、作戦を練り始める!

 小鞠ちゃんの家は残念ながら分からないので、待ち伏せ作戦は出来ない。


(今日は母さんが日勤だから、母さんは18時過ぎには帰って来る)

(小鞠ちゃんもこのような日は、18時前後に帰る筈だったと思うが……)


 リビングに小鞠ちゃんが居るのだから、そのまま直接聞きに行けば良いのだが、虹心は俺と小鞠ちゃんの関係を持たせたくない発言をしていた。

 今の状況でリビングに行っても、虹心に絶対に妨害・阻止されるし、虹心が罵詈雑言ばりぞうごんを浴びせるに決まっている!?


(こう成ったら、偶然ばったり作戦だ…)

(その時間帯付近にワザと外に出掛けて、その道で小鞠ちゃんと出会う作戦で行くか!!)

(この辺りは複雑の道では無いから、運が良ければ作戦は成功する!!)


『善は急げ』なので俺は早速、作戦を開始する。


 ☆


 時刻は、夕方の17時半を過ぎた時間……


 俺は出掛ける準備をしてリビングに向かう。

 リビングの方からは虹心と小鞠ちゃんの声が聞こえてくる。

 まだ、二人の談笑を楽しんでいるようだ。


 第一段階は成功だ。この時点で小鞠ちゃんが居なかったら、作戦そのものが失敗で有る。

 俺はリビングへ普通に入り、二人は会話を楽しんでいるが、俺は虹心に声を掛ける。


「虹心!」

「ちょっと、コンビニ行ってくる!」


「へぇ~~。そうなんだ。小鞠ちゃん!」

「……行ってらっしゃい」

「でね、小鞠ちゃん―――」


 虹心の耳は優秀なのか小鞠ちゃんと話しながら、俺との会話もする!?

 小鞠ちゃんも俺に声を掛けようとしたが、直ぐに虹心から話し掛けられて阻止された!

 本当に小鞠ちゃんを守っている虹心で有った。

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