第3話 妹の親友……

 俺は自宅に着いて、鍵を開けて玄関に入ると、其処には学園の指定靴二足が綺麗に揃えられて置いて有る。

 一足は虹心のだが、それに俺は直ぐに勘づく!


(今日は小鞠ちゃんが、遊びに来ているんだ!!)


 小鞠ちゃんは大人しい性格だが、礼儀正しく、控えめな笑顔が、俺の心とある物をくすぐらせる。

 靴を脱いで、リビングに向かう廊下を歩いていると、リビングから虹心と小鞠ちゃんの声が聞こえてくる。

 俺は小鞠ちゃんに挨拶をする為に、リビングの扉を開く。


 リビングでは制服姿の虹心と小鞠ちゃんが、ソファーに座ってお茶を楽しんでいた。

 葉月学園の制服は、紺色を基調したブレザーとベストで有る。

 夏はベストで過ごし、冬等はベストの上にブレザーを羽織る。


 女子の下はスカートだが、昨今の問題を取り入れている葉月学園は、男子が履いているズボンを今年から選択出来るように成った。

 しかし、二人の姿(虹心・小鞠)はベストとスカート姿で有る!


 男子の制服姿もブレザーだが、夏はワイシャツだけでも良い。

 一見地味な制服に見えるかも知れないが、俺はこの姿が好きだ。

 ありがとう葉月学園!!


 俺は虹心と小鞠ちゃんの邪魔をするつもりは無いが、小鞠ちゃんに元気な声で挨拶を掛ける。


「いらっしゃい、小鞠ちゃん!」


「あっ!」

「こんにちは。武蔵さん…!」

「お邪魔しています!!」


 小鞠ちゃんは俺が声を掛けると、俺の方に振り向いてくれて、穏やかな表情で挨拶をしてくれる。

 母親の姿が見えないので、母親は仕事に行っているのだろう。

 今この家に居るのは、俺・虹心・小鞠ちゃんの三人で有る。


「……兄ちゃん」

「友達に声を掛ける前に、普通は私から声を掛けない!?」


 虹心が低音口調で、俺を睨み付けながら言ってくる!


「あっ……ただいま。虹心…」


「……おかえり」


 虹心は“ぶっきらぼう”に言い、何か言いたそうな表情で俺を見るが、顔を小鞠ちゃんの方に戻す。

 虹心との会話はこれで終わった(!?)ので、俺は小鞠ちゃんに話し掛ける。


「小鞠ちゃんは、今日も晩ご飯食べていくの?」


 最近の小鞠ちゃんは、家で晩ご飯を食べてから帰ることが多く成ったから、俺は気なしに聞く。


「いえ……」

「今日は、夕方にはお母さんが帰って来ますから、その時間までです///」


 小鞠ちゃんは恥ずかしそうな表情で言う。


「あっ……そうなんだ」


 俺が残念そうな口調で言うと……


「……兄ちゃん!」

「今から、女子同士の会話をするから出て行って!!」


 いきなり怒った表情と口調で、虹心は言う!?

 けど、反論しても意味が無いので、俺は素直にリビングから出る事にする。


「あっ…うん、分かった」

「じゃあ、小鞠ちゃん! ごゆっくり!!」


「はい! ありがとうございます!!」

「武蔵さん///」


 小鞠ちゃんは控えめな笑顔で言う。

 俺はそれを見てから、リビングから出るが……


(たっく……虹心ったら!)

(俺はもう少し…、小鞠ちゃんと話がしたかったのに!)

(……虹心の奴。女子同士の会話をするとか言っていたな!)


 この家は壁が薄い。

 廊下からでも虹心たちの声が聞こえる位だ!

 この壁から耳を当ててれば、虹心たちの会話が聞き取れるかも知れない…!?


 人としては最低の行為だが、今時女子の会話も気に成る年頃でも有った!?

 俺は静かにリビング側の壁に耳を当てて、虹心たちの会話を聞き取ってみる事にする。

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