7. 戯けられる

「だから、俺が…」

「いや、俺が…」

 どっちでもいいよ。早く払ってくれ。

 そもそも須田すたが払えばいいんだよと言いたくなる気持ちを抑えて、こちらに来るバイトの彼に視線を向けた。

「店長、こちらは俺がやるので、カケルさんの相手してあげてください…」

 会計を交代して、翔琉かけるのいる場所へ行くと。

「ねぇ、何で付き合ってくれないの?」

「は…?」

 翔琉は酔い過ぎているのか、眼がすわっている…。

「誰かと、間違ってない…?」

かおるに言ってるんだけど…」

 眼がすわっているように見えるのは、真剣なせいなのか…。

「俺、本気なんだけど…?」

 そ、そうみたい…ね。

 目ヂカラの強い翔琉から視線を逸らして、目が合ったのはバイトの彼だった…。

 ただ、ただ、微笑まれてしまった…。

 どうしたらいいのか思い悩んでいる間に、翔琉の顔が現れた。

「ハスくんがいいの…?」

「は…?」

 酔っ払いに絡まれるのは慣れてるけど、翔琉に絡まれるとは思わなかった…。

 意外と、面倒かも…。

「ねぇ、ハスくんがいいの…?」

「いや、翔琉がいいよ…?」

 面倒なので、素直に言った。

「は…?」

「ん…?」

 は?と言いたいのは、こちらなのですが…。

「翔琉が好きだよ…」

 溜め息交じりに言って、翔琉を見ると…。

「………」

 寝てるんかいっ

「翔琉…?」

「はい…」

 翔琉が俯いて返事をしたので、意識はあるのかと安堵した瞬間に、

「ごめん…」

 翔琉に急接近…。

 翔琉が急接近、か…?

「最低だな…俺…」

 どうやら、泣いているらしい…。ギュッと抱きしめられていて、今、翔琉の胸板で目の前は真っ暗だから、断定できないけど…。そんな声だから。

「いいよ…」

 ギュッと抱きしめて、

「でも、誰かの代わりでこんなことするようなら許さない…」

 そっと胸にキスを落とした。

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彩り @tamaki_1130_2020

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