5. つまらない意地

「店長、どうしちゃったんですかっ?」

「うん…?」

 どうもしないけど…。

 思いのほか、バイトの彼には衝撃が大きかったらしい。暫く目を大きくしてずっと俺の頭付近を見ている。

「違和感だらけなんですけど。髪…」

「そう…?」

「そうですよ」

 あの日から、願掛けのように伸ばしていた髪を切ることにした。

 もう叶ったから。

 言ってしまった言葉は、戻せない。

「フラれました…?」

「どうだろう…?」

 確かに告白しちゃったけど、知ってると一言、聞いただけで…。

 特に、何が変わったというワケでもない…。

「店長さん、もうちょっとブチ当たったらどうなんですか…?」

 そう言えば、バイトの彼に聞き忘れていることがあった…。

波須はすくん、翔琉かけるから何か聞いたの…?」

「いえ、何も…」

 一瞬の微笑みを見逃すフリでもしてあげたかったが、

「聞いたよね…?」

「は、…いぃ、いや、何も聞いてませんよっ」

 絶対、何か知ってるその顔を撫でて、にっこり笑って、

「聞いたんだよね…?」

「はい…」

 観念したバイトの彼は頷き、

「でも、言えません」

「そう…」

 翔琉に聞くしかないのか…。

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