3. ご無沙汰

「いらっしゃいませ」

 カウンターにいたのは、学生時代の友人・翔琉かけるだった…。

「お久しぶり、だね…」

「うん…」

 さっきまで泣いていたようで目が赤い…。そんな顔で少し笑って、

「何回か来てるのに、ごめん…」

「いいよ。楽しんでくれれば…」

 その様子だと、彼女と別れたのかな…。いや、仕事で何かあったのかも知れない…。

 そんな事を考えながら、翔琉の顔をほんの少し見つめていたら、いきなりバイトの彼の顔が視界に入る。しかも、近い…。そして、華やかな笑顔で。

「カケルさん、最後の歌聞きたいからって来たんだってさっ」

 バイトの彼は、ある意味素直でいいヤツだと思う…。

「ふぅん…」

最高の褒め言葉に、ちょっと照れ隠しで俯いて愛想ない返事をしてしまった…。

 それじゃいけないと思って、すぐに顔を上げて翔琉の顔を見る。

「ありがとう…」

「相変わらず、音楽好きなんだなって思ったよ…」

 うん。好きだよ…。

 音楽もだけど。あなたのことも…。

「当たり前でしょっ」

「やっぱり、かおるの歌が一番癒されるわ…」

 そんな顔で言われたら、

「店長、顔赤いですよ…?」

 バイトの彼は、よくヒトを見ている…。

「褒められると恥ずかしいんだよっ」

 恥ずかしいというか、これはもう違う想像をしてしまうというか…。いかん。頭冷やして来よう…。

波須はすくん、ちょっと上に行って来ます」

「了解ですっ」

「翔琉、ごゆるりと…」

「いってらっしゃい」

 でも、REMORSEを作った甲斐があったな…。

 そう思うことにより、この変な動悸を何とかせねば…。

 そうは思っても、翔琉のあの優しい笑顔を思い出しては身悶えながら階段を駆け上がった…。

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