第4話 私の可愛い彼氏
『明日、10時の待ち合わせで大丈夫ですかね?』
『あぁ、車で迎えに行くから、待っててくれ』
『わかりました』
ふぅ、初めての彼氏。そして、初めてのデート。そんな初めての相手が10歳以上年下の男の子。しかも教え子だなんて。まさかこんなことになるとは思ってもなかった。
翌日、私はウキウキしながら車を走らせた。待ち合わせとは言ったが、制服以外の彼を見るのは初めてだな。見つけられるといいけど。
私が待ち合わせ場所付近につくと、一際視線を集める人物がいた。
あっ居た。
小柄で色白な彼は、短パンに大きめのパーカーを着ている。その姿を見た私は、早くも耐えられるか自信がなくなってきた。
何故なら、彼のパーカーはフードが猫耳になっている、いわばネコさんパーカーだった。そんな彼は、知らない人が見たら、ただの可愛い女の子だろう。
なんだか、無性に心配になった私は、すぐさま彼の近くに車を停めた。
「おい、那月。なにニヤニヤしてるんだ。早く乗れ」
「えっ、先生いつのまに」
全く気づいてなかったんだな。可愛いやつめ。
「お前が、なんかニヤニヤし出したあたりからだ。いいから乗れ」
「お、お邪魔します」
彼が助手席に乗ってくる。近くで見ると、ますます可愛いな。どこで売ってるんだこの服。
「それにしても、那月。その格好なんだが」
「えっ、どこか変ですか?」
「あー、いや。似合ってるよ、すごく。でも、ちょっと可愛い過ぎないか?」
「か、可愛いですか!?ありがとうございます!」
「え、喜ぶの!?」
「はい、だってお母さんが、可愛いはさいだいの褒め言葉だって言ってました!」
「そ、そうか」
那月のお母さんか、どんな人だろうな。それにしても、可愛いが褒め言葉とは。お母さんはよくわかってるな。那月は本当に可愛い。こんな姿を見たら愛でたくて堪らなくなる。
車で移動すること40分。
目的地のショッピングモールに着いた。車の中では、お互いに緊張してしまい上手く喋れなかった。こんなところで、経験の無さが露見するとは。情けない。
「さて、着いたぞ。降りよう」
「はい!」
車から降りて、那月の方へ向かうと、私のことをまじまじと見ている。男性からの視線は苦手だが、那月に見られるのは悪くない。
「・・・綺麗だ」
ぐぅ、わざとなのか!?
私をどうしたいんだ!!
「那月、嬉しいが、あんまりジロジロ見ないでくれ。ちょっと、その、恥ずかしい」
も、もうダメだ。これ以上は耐えられない。那月には悪いがさっさと中へ入ろう。
「せ、先生ーー」
「さ・つ・き。2人の時は、皐って呼ぶように」
全く名前を呼んでくれないので、こちらから要望してみた。やっぱり、彼氏には名前で呼んで欲しい。
「は、はい、さ、皐さん・・・あぅ」
「ぐっ、破壊力が。一日耐えられるか、私」
やばい、私の彼氏可愛すぎるぅぅぅ!
「だ、大丈夫ですか?」
「大丈夫だ。それより、デートを楽しもうじゃないか」
私達は、何かを買うわけではなかったが、雑貨を中心に見て回った。
ブティックのお店で、可愛いお弁当箱を見つけると、普段のご飯の話になった。
正直、私は家庭的なところは全滅に近い。出来ればお弁当を作ってあげたかったが、今回は逆の立場になりそうだ。
あまり負担は掛けたくなかったから、断ろうと思ったのだが・・・。
「いえ、僕料理が好きなので。それに、す、好きな人に食べてもらえたら、う、嬉しいです」
こんなことを言われたら、断れないじゃないか。
「本当に可愛いな、那月は。よし、じゃあ弁当箱を選ぼうか。どうせならペアにしよう」
「ぺ、ペアですか!?」
「嫌か?」
「いえ、嬉しいです!」
パァッと眩しい笑顔を見せてくれる那月。うん、提案して良かった。私達は、お弁当箱とその入れ物も今違いで揃えることにした。
「皐さん、ちょっとトイレ行って来ていいですか?」
「ああ、構わないよ。私はこの店の中を見てるから、ここで合流しよう」
「わかりました」
那月がトイレに行っている間、私は何気なく店の中を見て回った。すると、あるものが目に留まった。あれは。
青色を基調としたデニム生地のエプロンだった。これを着て台所に立っている那月を想像する。うん、これはいい。そのまま那月も美味しく頂きーーいや、それはダメだ。変な妄想はやめよう。
私が必死に邪念を振り払っていると、トコトコと那月が帰ってくる。
「お待たせしました、皐さん」
「いや、そんなに待ってないよ。そうだ、これ。忘れないうちに渡しておく」
私は先ほど購入しておいた、例のエプロンを手渡した。喜んでもらえるだろうか?
「これ、僕にですか?」
「あぁ、なんとなく、似合う気がしてな。良ければ使ってくれ」
「はい!!大切にします!」
よかった、喜んでくれた。この笑顔を見れるだけで疲れが吹っ飛びそうだ。あぁ、本当に可愛い。
その後、私達はご飯を食べ終わると、私の家に行くこととなった。もう、我慢が限界に来ている私は、はしたないが、自分から家に誘った。
那月がちゃんと理解しているかわからないが、私は那月とイチャイチャしたくて堪らなかった。
ガチャ
「散らかってるけど、いらっしゃい」
「お邪魔します」
初めて男性を家に入れた。あれ、そもそも誰も入れたことなかったか?
「とりあえず、ソファに座ってくれ」
「わかりました」
家に招いておいて、この惨状を見せるのは気が引けてきたな。
「ごめんな、汚いだろ?」
「いえいえ、そんな」
その後、しばらくお互いのことについて話していたのだが、何やら那月がソワソワして落ち着かない。どうした?トイレか?
「皐さん」
「ん?どうした?」
「すみません、やらしてください」
・・・ん?んん!?
そうだ、那月も男なんだ。これが普通なのか。
「えっ、ちょ、ちょっと待て、こういうのはだな、順序というものがーーー」
「やらせてくだい!掃除を!!」
「いや、心の準備がっ・・・ん?掃除?」
「はい、掃除を!」
・・・。
「そ、そうだな!やろう、掃除を!!」
恥ずかしいぃぃぃぃぃ!!
私のばかやろぉぉぉ!!
私は、急に恥ずかしくなり、悶々としながら1時間以上かけて念入りに掃除をした。終わる頃には、心もスッキリしていた。
「そう言えば、那月はその、彼女とかは、いたのか?」
「いえ、皐さんが初めてです。デートしたのも、女性の家に来たのも」
「そ、そうか、良かった。実を言うとだな、私も、経験ないんだ」
「意外でした。皐さん凄い綺麗だから、きっと、色々経験してるのかと・・・」
もじもじとしながら、そんなことを言う那月。あぁ、くそ。なんでこんなに可愛いんだ。
「ぐぅ、またそんな顔を。もう我慢できないぞ」
私は少しずつ距離を詰めていった。もし、拒否するようなら今日はやめようと思っていた。しかし、特に抵抗する様子は見られない。
どんどん近づく2人の距離。呼吸は浅くなり、頭はぼんやりとしてきた。もう我慢できない。
そして、吸い込まれるように、私は那月の唇に自分の唇を重ねた。
「んんっ、あむ、んぅ」
初めてのキスは、レモンの味とよく言うが、全然違かった。どのくらいの時間、唇を重ねていたのかわからないが、凄く幸せな時間だった。
顔を離すと、トロンととろけた顔の那月が目に入る。あぁもうダメだ。私が那月の下半身に手を伸ばそうとした時。
「うぅぅぅ」
「えっ、な、那月!?」
きゅうぅぅぅ、と言いながら倒れてしまった。どうやら刺激が強すぎたようだ。
ここにきて、頭が冷静になり急に気恥ずかしさが込み上げてくる。はぁ、とりあえずこのままソファに寝かせておこう。
私は、那月に視線を落とす。
!?
那月の下半身は、立派なテントを作っており、見かけによらず凄まじいものを持っているようだ。一瞬、見てみたいと思ったが、流石にやめておこうとブランケットをそっと掛けた。
しばらくすると、やっと起きたようで、那月が身体を起こす。
「ん、んん」
「あ、起きたか、那月。さっきは悪かったな。どうしても押さえられなくて。朝からずっと我慢してたから」
「い、いえ!凄く良かったでしゅ!!」
噛んでしまい、顔を真っ赤にしている那月。本当に見ていて飽きない。
「ふふ、お前は本当に可愛いな」
私は、那月の頭を胸元へ抱き寄せると、頭を優しく撫でた。本当は申し訳ない気持ちからしたものだったが、なんだか、これいいな。もっと甘やかしたくなってきた。
だが、流石に苦しいかと思い、腕の力を少し緩めた。すると、スッと顔をあげた那月。刺激が強かったか?と思った矢先、那月の柔らかい唇が私の頬に触れた。
「むぅ、もうこのまま、と言いたいところだが。我慢だ私。まだ、早いぞ!」
くそぅ、どうしてこんなに愛らしいんだ!!
今日はこのまま私の家に、いやダメだ、でもでも、うぅぅぅぅぅ。
私の頭の中では、天使と悪魔が凄まじい勢いで戦っていた。今回は、なんとか天使が勝ったが、次同じことがあれば、耐えられる自信がない。
こんなに悩んでいる私のことを、ニコニコしながら見つめる那月。
全く。こっちの気持ち知らないで。
私達は、少しずつ成長していこう。まだまだ、時間は沢山ある。私の可愛い彼氏。大好きだぞ。
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