第3話 デート後

「皐さん、ご飯何食べますか?」


「そうだなぁ、私はオムライスに目がないんだが。確かここにはオムライスの専門店が入っていたはずだ」


「あぁ。確かにありますね。行ってみましょう」


少し前に何かの雑誌にも載ってたな。

確か『洋食オムオム』だった気がする。


覚えやすい名前だなぁと思っていたが、まさか自分が来ることになるとは思ってもみなかったな。


「ここですね。少し早めだから空いてますね」


「あぁ、丁度よかった」


皐さん、すごく目がキラキラしてる。本当にオムライスが好きなんだなぁ。そうだ、お弁当に入れてあげようかな。うん、きっと喜ぶぞ。今回頼むオムライスを参考に少し考えみよう。


「いらっしゃいませー。2名様でよろしかったですか?」


「はい、お願いします」


「では、こちらへどうぞ」


俺達が案内されたのは、窓際の一番奥の席だった。結構良い場所が空いていたな。俺達は向かい合わせに席に着くと、一つのメニューを二人で覗き込んだ。うわぁ、皐さんの顔がこんな近くにぃぃぃぃ。


僕の心臓が警鐘を鳴らしている。この距離は危険だと。


「どうした那月?」


「な、なんでもないでしゅ」


やべ、噛んだ。恥ずかしいよぉぉぉ。


「グッ、不意打ちか」


あれ?僕以上に悶絶している皐さん。どうしたんだろう?


「と、とにかく、選ぼう。私はこれがいいな」


「えっと、じゃあ僕はこれで」


僕が選んだのはオーソドックスなデミグラスソースのオムライスだ。そして、皐さんが選んだのはオムドリアという、オムライスとドリアを融合したものらしい。皐さんはこういうのが好きなのか。


「いつも、こういうの頼むんですか?」


「いや、たまにね。いつもはオーソドックスなのが好きかな」


「そういえば、今日はこの後どうしますか?」


「そうだなぁ、もう見るところもあんまり無いんだよなぁ。そうだ、私の家に来るか?」


「えっ、皐さんの家ですか。そ、それってーーー」


「お待たせしましたー。こちらデミグラスソースです」


ここぞというタイミングで料理が運ばれてきてしまった。さっき、皐さんの家にっていいてたよな。俺はチラッと皐さんの顔を伺うと、ほんのりと頬を赤くした姿が映った。


皐さん、顔赤くなってる。あんまり自信がなかったけど、僕のことちゃんと男として見てくてるってことかな?だったら、嬉しいな。


その後、僕達はほとんど無言のまま、オムライスを完食した。



ーーーーーーーーーー



食事を終えた後、特に見るところも無くなったので、先ほどの予定通り皐さんの家にお邪魔することになった。


現在は、車に乗り込み移動中である。


「那月、ちなみになんだが、私の部屋を見て幻滅しないでくれよな」


「えっ、なんでですか?」


「その、私は片付けが、苦手なんだ。だからその・・・」


「なるほど。なんとなく理解しました。でも大丈夫です。僕片付け得意ですから」


「お前は本当にいいお嫁さんになるな」


「えへへ、それほどでもぉ」


皐さんに褒められちゃったぁ。


そうこうしている内に、目的地である皐さん宅へ到着。外観は至って普通の5階建てマンション。ちなみに皐さんの家は4階らしい。エレベーターに乗り4階へと上がり、一番奥の部屋へ向かう。


ガチャ


「散らかってるけど、いらっしゃい」


「お邪魔します」


こうして、人生で初めて女性の部屋へお邪魔することになった僕は、今まで以上に心臓の音がうるさく感じた。


「とりあえず、ソファに座ってくれ」


「わかりました」


確かに、お世辞にも綺麗な部屋とは言わないが、それでも汚すぎるとは言えない感じの部屋だ。多分、自分の手の届く範囲に必要なものが集まっており、必要ないものやゴミが端っこへ追いやられている感じだな。ちょっと安心した。


「ごめんな、汚いだろ?」


「いえいえ、そんな」


その後、しばらくお互いのことについて話していたのだが、どうしても気になってしまって、会話に集中できないでいる。うぅ、もうダメだ!


「皐さん」


「ん?どうした?」


「すみません、やらしてください」


もう抑えられない。他人に掃除をされて、皐さんも迷惑かもしれないが、どうしても気になってしまう。


「えっ、ちょ、ちょっと待て、こういうのはだな、順序というものがーーー」


「やらせてくだい!掃除を!!」


「いや、心の準備がっ・・・ん?掃除?」


「はい、掃除を!」


・・・。


「そ、そうだな!やろう、掃除を!!」


この後、俺達は1時間以上かけて念入りに掃除をした。見違えるように綺麗になった部屋に皐さんは感動して、ちょっと泣いていた。


その後も、他愛のない話をして時間を潰した。


「そう言えば、那月はその、彼女とかは、いたのか?」


「いえ、皐さんが初めてです。デートしたのも、女性の家に来たのも」


「そ、そうか、良かった。実を言うとだな、私も、経験ないんだ」


恥ずかしそうに頬をかく皐さん。

ほんのりと頬を赤くし、視線を逸らす。


「意外でした。皐さん凄い綺麗だから、きっと、色々経験してるのかと・・・」


僕はついもじもじとしてしまった。皐さんが違う男の人とと考えただけで、モヤっとする。


「ぐぅ、またそんな顔を。もう我慢できないぞ」


皐さんは少し離れたところに座っていたのだが、僕のすぐ隣へ座り直すと、僕の顔を見つめている。


頬を赤くし、目はトロンととろけるようで、とても妖艶な、えっちな感じがした。


そして、少しずつ僕達の距離は短くなり、最後には僕の唇に柔らかい感触が伝わる。


「んんっ、あむ、んぅ」


どのくらいの時間こうしていたのか、僕の記憶は曖昧だった。そして、僕のキャパを完全にオーバーしてしまい、僕は意識を手放した。


「うぅぅぅ」


「えっ、な、那月!?」


こうして、僕はファーストキスを体験した。僕が思っていた以上にえっちで、それでいて幸せな気分で、色々な感情が押し寄せていた。



ーーーーーーーーーー



「ん、んん」


あれ、ここはどこだ?


僕はむくっと身体を起こす。ここは、皐さんの部屋だ。そうだ、僕達はデートのあと皐さんの家に来て、そして・・・!?


そうだ、キ、キスして、そのまま。

あぁぁぁぁぁぁ、やっちゃったぁぁぁ。


僕のばかばかぁ。なんでこんなにヘタレなんだよぉ。経験がないとはいえ、こんなことになるなんて。


「あ、起きたか、那月。さっきは悪かったな。どうしても押さえられなくて。朝からずっと我慢してたから」


「い、いえ!凄く良かったでしゅ!!」


また噛んだぁぁぁぁぁ!!


「ふふ、お前は本当に可愛いな」


皐さんは僕を抱きしめると、よしよしと頭を撫でてくれた。頭に触れる皐さんの手の感触と、僕の顔を包み込む、柔らかい感触が・・・。


本当はここは天国なのでは?とは思い、僕は皐さんに身を委ねた。そして、しばらく抱きしめられた後、少し腕の力がゆるんだを確認すると、僕は顔をあげお返しをした。


これが僕の気持ちです、皐さん。

僕は皐さんの頬へ、軽めのキスをする。


「むぅ、もうこのまま、と言いたいところだが。我慢だ私。まだ、早いぞ!」


何を言っているのか、よく聞こえなかったが、顔を真っ赤にし悶えている皐さん本当に可愛かった。


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