第4話 貴子と菜穂の夜

それでおばあちゃんはどうしたの?


菜穂が今目の前で起こったことのように真剣な目で聞いてくる。

「まぁ結論からするとその友人がおじいちゃんなのよ。」

  菜穂はビックリした。意外すぎる展開、そんな簡単に物事が進むのかと。

「だって、ほら。当時はお見合い結婚しか方法はなかったのよ。恋愛結婚なんてほとんどなかったんだから」

と答えになってない答えで菜穂を説得しようとした。

「全然意味がわからない!」

「まぁ、私が言いたかったのはおじいちゃんじゃなくて、湖に行った話よ。」


 やはり、おばあちゃんのお母さんには全てお見通しだったらしい。しばらく、落ち込んだおばあちゃんを見兼ねたお母さんは今日菜穂を連れていった湖に連れていったらしい。母親はおばあちゃんにどうしても見せたかったといった。やはりその景色は今日と変わらずに綺麗だった。


「その時に母親が私に言ったの。”上手くいかなかったり、思い通りにいかなかったりする事ってこの先沢山あると思うのよ。でもね、全て思い通りにいったらそれはあなたの思う場所にしか行けないってことよ。今日この場所のこと思いついた?思い通りにいかないって予想外に良い方向に向かう事もあるんだから。”って。今日の菜穂を見て、なんとなくあの湖に連れていきたくなったの。」


その言葉に菜穂は涙を流した。最近、ちょうど上手くいかないなと思っていたから。そして、おばあちゃんの優しさに菜穂の手が触れられたから。


「おじいちゃんとの出会いは予想外だったけど、今考えると良かったのかも。だって菜穂にも会えたし。目の前で起こっていることが全てじゃないんだって、現実に囚われるんじゃなくてもっと遠くの未来まで見渡せる人になって欲しいな菜穂には。」

「この先大丈夫かな。わたし。」


「大丈夫よ。だって、菜穂はいつも頑張ってるし、優しいし何よりも明るくて前向きよ。大丈夫。予想外の出来事はすぐそこにあるよ。」


 菜穂はふとおばあちゃんの顔を見た。満面の笑みで菜穂を見ていた。大丈夫、こんな話聞けただけで未来が明るい方へ向いている気がした。しばらくおばあちゃんからおじいちゃんとの惚気話を聞いて、気が付けば菜穂は眠っていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る