第40話:お姉さんとカノジョ

 元カノ花音に騙されて(?)ちゃっかり花火デートをしてきた俺が、同棲している今カノの恭子さんのマンションに帰ってきたら、マンション前の道で恭子さんが仁王立ちして立っていた。


 さぞ怒っているだろうと思った。騙して花音とデートしてきた形になってしまっている。俺が逆の立場だったら絶対に嫌だ。



「美少女と花火デートしてきた人の表情じゃないわね」



 ああ、全部バレてる。なんで俺は隠しておけると思った!?俺はもうダメだと脱力していた。



「前にも言ったけど、花音ちゃんとのことも高校生活の思い出の一つだからね。完全に拒絶してしまったら、カツくんに何も残らないでしょ?」



 なんか分からないけど、許してくれるってこと?どちらにしても、俺には罪悪感がある。



「でも、花音ちゃんとだけデートしてきて悔しいから、これからお姉さんと花火デートに行ってもらうわよ!」



 そう言われれば、恭子さんは大人カッコイイ・コーデだ。胸元にひらひらがついて肩がバックリ出ているピンクのシャツにタイトなデニムのジーンズ。


 花音が浴衣で「理想のカノジョ・コーデ」なら、恭子さんは可愛い・カッコイイ「憧れのお姉さん・コーデ」といったところか。


 1日に2度、別の人と花火に行く経験があなたにはあるだろうか。……俺にはあります。精神的には辛い。

 ただ、たったそれだけで許してもらえるなら俺は喜んで何度でも花火を見に行くよ。



「カツくんはすぐ騙されるね。しょうがないなぁ」



 恭子さんが眉をハの字にして言った。面目ない。ホント面目ない。

 彼女の包容力に救われた形だ。俺は花音に勝てないとしても、こう何度も気づいたらデートしてるのはちょっとダメすぎる。ひょっとして、俺、鈍いのでは!?



「はい、気を取り直して!」



 恭子さんがポンと肩を叩いて腕を組んできた。確かに、このまま落ち込んでいても恭子さんは喜ばない。楽しいデートになるように心がけようと思うのだった。



 ■



 今度は恭子さんと堀の公園に来た。益々人は増えた感じだろうか。花火も上がり続けている。


 人ごみの中に自ら入って行くのは俺的には蛮行なのだが、中に入らないことには花火デートにならない。出店込みで花火デートなのだ。



「花音ちゃんには何を買ってあげたの?」



 公園内を歩きながら恭子さんが聞いた。



「りんご飴とお面」


「まったく、あの子……可愛いわねぇ!お姉さんもあんなならカノジョに欲しいわよ!」



 それはどうなのか。俺からはなんともコメントがし辛い。まあ、俺は恭子さんがカノジョでいてくれたら満足だ。


 花火大会の会場となっている堀の公園内に入っても、また俺たちは定位置がなく牛歩で公園内を歩き続ける「流しの花火スト」だった。止まれるのは店の前くらい。



「おねえさんも欲しいものを言っていいのかしらん?」


「ははー、恭子お姉さま。どんなものでも献上いたします!」


「もう、調子のいいこと言って~。じゃあねぇ、生ビールと唐揚げお願いしようかな!」


「りょっ」



 夜店の前を一緒に歩いていると、生ビールを出している店があった。俺が注文しても、横にお姉さんがいるからだろう、店員が一瞬横の恭子さんを見てから「あいー!600円ー!」と言って、商品を準備してくれる。俺は、お金を出して生ビールを受け取った。


 商売とはよく出来ているもので、生ビールの店の隣が唐揚げ店、その隣は焼き鳥店となっていた。


 当然、唐揚げも買ったけれど、そんなにたくさん持てないので、俺が「唐揚げ持ち係」を拝命して、恭子さんが「んっ」と言って口を開けたら、爪楊枝に刺した一口大の唐揚げを恭子さんの口に入れるという大役を仰せつかった。



「へへへ~、これ最高!持たずに唐揚げが食べられる♪」



 恭子さんよ、それでいいのか。チョロい、チョロすぎる。絶対悪い男に騙されるからそれ。まあ、二股みたいになっている俺は確実に「悪い男」だろうなぁ。


 あと、俺、この係かなり幸せ。恭子さんがあーんとしてくるので、唐揚げを口に放り込む係。口に入れてあげるのってなんかエロい。考えすぎかもしれないけれど、これはなんかグッとくる。



 それにしても、花音はりんご飴にお面。恭子さんは、ビールと唐揚げ。それぞれ特徴を捉えているものじゃないだろうか。「らしい」感じというか。

 別に狙ってないんだろうけど、本当に面白い。時として、よく似ていて、時として、真逆。俺は思わず苦笑いが出ていた。



 そして、ここでまた事件が起きた。俺たちが移動し続ける人混みに混ざって歩いていると、隅の方に定位置を見つけた健郎&明日香+委員長と出くわしてしまったのだ。


 三人は「あっ!」って顔をしている。そりゃあそうだろう。ついさっき、クラスの人気者の花音と腕を組んで歩いてたやつが、今度はエロ巨乳お姉さんと腕を組んで歩いているのだ。しかも、そのお姉さんは嬉しそうに生ビール片手に唐揚げを食べている。



「将尚!お前……」



 健郎が信じられないものを見た目で俺を見た。



「ん?お友だち?」



 恭子さんが口に手を当てて俺に聞いた。食べていたからだろうなぁ。こういうところがとても女性らしくて、俺は好きだ。

 さて、健郎に対しては、俺はどう答えるのが正解なのか、フリーズ状態だった。同級生たちは見てはいけないものを見た、とあわあわしていた。



「私は、カツくんの姉だから。花音ちゃんならさっきそっちで会ったよ?」



 恭子さんが機転を利かせて嘘をついてくれた。



「あ、あぁ、そうなんですか…お姉さん…俺はてっきり…」



 健郎は飲み込めないでいるようだ。



「将尚くん、お姉さんいたんだ。へ、へぇ……」



 明日香も同様だ。委員長は鋭い目で俺を見ていた。彼女は俺と花音をなんとかくっつけようとしてたからな。「彼女の正義」からいけば、俺は二股男だろう。とんだ裏切り行為なのだ。

 ただ、この辺り、結果的に事実と言っていい状態になっているので、弁解の余地はない。


 健郎たちのことは、力技の恭子さんの嘘で押し切れそう。あと一歩というところ。

 ただ、それでいいのか!?俺の世界はそんなのでいいのか!?俺のことを信じてくれた友だちにまで嘘をついて保身にはしって……

 大好きな恭子さんにまで嘘をつかせてしまって……



「違う!」


「え!?」「ん?」「!」



 健郎&明日香+委員長が驚いた。俺が急に大きな声を出したからだ。



「嘘だ!恭子さんは俺のカノジョだ!」



 恭子さんの肩を抱き寄せながら三人に宣言した。



「おっ、そ、そうか。」



 なんか勢いで押し切った。つい数秒前と真逆のことを言っているのだから虚を突かれたというのもあるだろう。どちらにしても2学期になったら質問攻めにあいそうだ。


 委員長からは再び責め続けられそうだけど、嘘を吐くのは気持ちがよくない。

 俺は今の道を選んで後悔はない。


 健郎たちに照れ臭い宣言をした後、俺と恭子さんは再び公園内を進んだ。花火はすっかり俺の意識からは抜けていた。



「よかったの?」



 歩きながら恭子さんが聞いた。もちろんだとも。俺と恭子さんは何ひとつ恥じる必要のない、カレシ・カノジョなのだから。


 俺が自信たっぷりにすがすがしい顔をしていると、恭子さんが肯定と取ってくれた。



「別によかったのに……」



 少しはにかんで言った。俺は、恭子さんに助けられてばかりで生きるのはかっこ悪すぎる。恭子さんが組んでいる腕に手を添えた。



「恭子さんは極上のカノジョなんだから、隠す必要ないんだよ。俺は自慢したかっただけだから」



 恭子さんが、すげえあたたかい視線で見てくる。



「やっぱりいいね。カツくんは」



 歩いている時すぐ横で、「とうっ」って何度も何度も肩で小さくタックルしてくる。独特な照れ方だな。



「へへ、自慢されちゃった」



 なんか嬉しそう。この顔が見れただけで、俺は正しい道を選んだのだと確信したのだった。

 その後、恭子さんがガッツポーズしながら「よし!決めた!」と言った意味を俺が知るのはもう少し後になる。



 ■



 その日の夜はやたら盛り上がった。ベッドの上で、いつもの様に恭子さんの大きな胸を寄せて持ち上げると恭子さんが声を漏らした。


 この時の声が好きなので、何回くらい連続で持ち上げても声が出るのか胸を揉みまくっていると恭子さんの腰が弓なりに跳ねた。イッたらしい。


 恭子さんが好きなこととして乳首舐めと引っ張りもあるので、恭子さんの力が抜けるのを待って、再び胸を攻めてみた。そのうち、恭子さんが俺を抱きしめて動けなくするので、「あんまり胸ばかり攻めるな」という事だろう。


 名残惜しいけれど、キスを胸からお腹、へそ下と進めていく。恭子さんは身体を捩って逃げようとするので、両太腿に手を回し、恭子さんの「娘」に向き合った。男の場合そこは「息子」と表現する以上、女の場合は「娘」だろうか。恭子さんの娘を舐め回した。


 開いたり、肉豆をむき出しにしたりした上で舐め進めると再度恭子さんの腰が弓なりに跳ねた。そろそろだと思い、今度は俺の方も息子がお邪魔した。恭子さんの「いい具合の場所」に当てるにはちょっと角度が違うことを経験から知っていた。

 そこで、俺は恭子さんの腰の下に枕をねじ込んで角度を調整したうえで夢中になって腰を動かし続けた。


 既に第一戦を終えた後、恭子さんはいつもの様にベッドの上でうつ伏せの状態で枕を抱えている。今日も痙攣が止まらないみたいでとてもかわいい。


 俺は例によって、恭子さんの腰を持ち上げて、あ尻を舐め回していた。



「おしりわぁ……らめぇ……なにょぉ……はじゅかしぃのぉ……」



「お尻は恥ずかしい」かな?そうは言っても、いい声が聞こえる部分でもあるので、俺としては見逃せない。既に調子のいい時は指が2本入るところまでに進化していた。この日、再び2本に挑戦していたら初めて恭子さんはお尻でイッた。



 事後、恭子さんがおむずかりだった。



「お尻はダメなのぉ!恥ずかしいの!」


「だって、可愛くて……」


「うううぅ……そんなとこ褒められても嬉しくない!汚いの」


「いつも汚くしてるの?」


「綺麗に洗ってるけどぉ!」



 俺は恭子さんの身体の反応を見ていいところを探している節がある。なんだかんだ言って、いい感じなのではないだろうかと思っている。いつか、息子の方もお邪魔したいと思っていた。



「もおぉ、カツくんはしょうがないなぁ」



 そう言って、ベッドにうつ伏せになっていた。しばらくは恭子さんは動けない。

 この姿の恭子さんは腰のあたりのラインがとても綺麗で好きだ。やっぱり俺は恭子さんが好きだなぁと感じたのだった。このときも俺は未来を見ていた。


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