第20話:謎解きの答え

 花音を駅まで送った後、スーパーでお菓子類を買って帰った。コンビニで買わない分、ちょっとだけ節約していると思う。


 恭子さんのマンションに戻ってすぐに聞いた。



「今日の花音とはどんな話になったの?」



 恭子さんは洗い物をしながら答えてくれた。



「女の子同士の会話の部分?」


「うん」



 どちらかというと、女の子同士の会話の部分というか、恭子さんと花音しか分からない異次元の会話の内容を通訳してほしいという事なのだけど。



「まあ、大筋で言うと、カツくんが学年トップさえ取れば、『クラスの空気問題』は花音ちゃんが何とかしてくれるって。前半はお姉さん担当で、後半は花音ちゃんが担当ね」


「え!?そうなの!?」


「ただし、花音ちゃんの方法では、カツくんが学年トップになることが必須みたいね」



 あぁ、手放しに喜ぼうと思ったのに、頑張りは必要だった……。まあ、最初から頑張るつもりだったからこのままいくか。あと数日だけだ。



「『家族仲問題』は私の担当になったわ」



 こちらは物理的に解決できる問題じゃないと思うのだけど……ここで無理だ、不可能だと喚くのは無粋と言うものだろう。



「そして、『花音ちゃんとの仲問題』は、花音ちゃんが少しだけ見守ってくれることになったわ。まあ、一旦道を譲ってくれたから花音ちゃんが折れてくれた形?」



 そうなのか!?そんなやり取りの会話だったのか。



「ただ、私たちが破局するのを虎視眈々と狙っているって言ってたわ」



 それが本当だとしたら、別れたのに花音は俺のことがまだ好きってこと!?そう言えば、駅前で首に抱きつかれたし……もしかして、あれは浮気では!?



「まあ、『花音ちゃん問題』は花音ちゃんって当事者だし、自分で何ともできなかったから花音ちゃんが一歩引いて、お姉さん登場って感じ」



 なんかほとんどが恭子さん担当ってことなんだけど……



「3つの問題は1個ずつ分けて、1個は分割ってことになったんだけど、それだと花音ちゃん面白くないことばっかりだから、カツくんと友達としての関係修復をしますよ、って今カノのお姉さんに言ってきたわけですよ」



 なんか急にどや顔なんだけど。



「あぁ、それで最後別れ際に首に抱き着いてきたのか。でも、それって友達っていうより……」



 あれ?恭子さんが深刻な顔をしている。



「抱きついたぁ~!?花音ちゃんめぇ!」



 あ、恭子さんが怒ってる。あれ言っちゃダメなやつだったのかも!?



「カツくんの首にキスマークをいっぱい付けて学校に行かせると、花音ちゃんは嫉妬でお姉さんを警察に連絡しちゃうしぃ!」



 恭子さんがマンガみたいに地団駄踏んでる。人がリアルで地団駄踏んで悔しがっているのを初めてみた。



「ごめん、俺分からなくて……」


「でも、いいのよ。私にはカツくんがいる。花音ちゃんは一人だから。会ってないと知りもしない『謎の女』を相手に花音ちゃんは一人で戦わないといけなくなる。それって、女の子一人には辛いと思わない?」



 まあ、実際に会ったことがない恭子さんとバチバチに戦争していた訳だしなぁ。



「『実際に会う』っていうのは、クレーム処理とかにおいても一定の効果があるのよ。相手が無機質な何かと思ったら人はどこまでも残酷になれるし、相手も人間だと思ったら無茶はしなくなると思うの」



 まさか、ここでも社畜スキルが活きていたとは。



「まあ、あんまり酷いとカツくんを軟禁して、花音ちゃんに会わせなくしたら……」



 あぁ、恭子さんが邪悪な顔をしている!今後は俺が何とかしないと恭子さんがダークサイドに落ちてしまう!!恭子さんをヤンデレ化させてはいけない。



 ■■■



 その日の夜は恭子さんの甘え具合が尋常じゃなかった。やっぱり、元カノとの直接対決だ、精神エネルギーを消費しない訳がない。

 しかも、相手は花音みたいに万能能力スキルモンスターだったんだ。何ともない方がどうかしている。


 俺の手の指をひたすら舐めていた。指と指の間を舐められるというのがこんなにゾクゾクするものだとは知らなかった。


 俺は我慢できずに恭子さんを抱きしめてキスをした。

 その後は、有無を言わせず足元をすくうようにお姫様抱っこしてベッドに連れ込んだ。



「あう~、今からだとご飯の準備ができなくなる~」



 眉がハの字になっている困った笑顔の恭子さん。



「なんか最近では、お弁当の注文がアプリでできるらしいよ?俺が後で引き取りだけ行ってこようかな」


「あう~、魅力的な提案ありがとう~」



 全然賛成じゃないみたいだったけど、妥協するつもりなんてない。なんなら明日のお弁当の準備も要らないから、今は恭子さんが欲しいのだ。



「いっただきま~す」


「やっぱり~」



 恭子さんはベッドに横たえたら別に抵抗したりするわけじゃない。むしろすごく積極的だった。花音にも会ったし、俺が抱き着かれてきたと言ったので、嫉妬もあったかもしれない。


 首に抱き着いてきて、めちゃくちゃキスされた。もしかしたら、花音との記憶を上書きしているのかもしれない。そんなことしなくても、俺は恭子さんしか見ていないというのに。


 安心させるためには、俺が行動で示すしかない。溢れるほどの愛情で彼女の器を満たして安心させてあげるしかないんだ。


 彼女の服を脱がしていき、胸を激しく揉みしだいた。彼女のクーパー靭帯は優秀で大きいけれど全然垂れてない。俺はこの形と手触りが好きでベッドではいつも触っている。片方の頂点を吸い上げつつもう片方は摘まみ上げ、同時に両丘を掌で寄せ、持ち上げた。


 彼女の大きなよがり声でスイッチが入ったのが分かった。こうなったら集中するのみだ。俺は両乳首の攻めを休むことなく、口だけ下に下に移動して、彼女の入り口へと移動していった。


 誰かが女性のそこは赤貝に似ていると言った。よくそのたとえを思いついたなぁと思いながら、触って確かめる。肉の豆を舐め上げた頃には恭子さんは軽くイっていた。そこで手を休めたりする俺ではない。そのまま指の2本を彼女に滑り込ませ、手前側のなみなみした部分を指でなぞる。すぐに指が締め付けられ、ほんの数秒でゆっくりと弛緩しかんした。


 彼女は身体をよじって逃れようとしていたが、片太腿には手を回しているし、俺の頭があるので、彼女は膝を閉じることはできない。俺は何度も何度も彼女の下半身を可愛がった。それにより彼女のそこは緊張と弛緩を何度も繰り返した。


 そろそろ次のステップに……と思ったら、恭子さんが既にベッドの上でぐったりしていた。



「カツくん……激しすぎ……息ができない……」


「愛情が伝わるかなと思って」


「イキ狂うかと思った……」



 ちょっとやりすぎたかなと少し反省した。ただ、恭子さんは動けないので触り放題のボーナス・タイムに突入していた。これはチャンスと思い、恭子さんをゴロンとうつ伏せにさせた。


 彼女の背中から腰にかけてのラインも俺の好きな部分の一つだった。指で撫でながら俺の心を掴んで離さないその形を確かめた。恭子さんは大きめの枕を顔の前に抱きかかえるようにして気持ちよさそうにしていた。


 脱力状態から帰ってこれない様だったので、腰の部分を持ち上げた。恥ずかしかったのか、身を捩ろうとしてたので早速取り掛かった。さっきは前から見たものが今度は後ろから見える。見る角度が違うとこうも印象が違うのかと少し哲学者になっていたけれど、今度は指ではなく愚息がお邪魔した。


 恭子さんの声が漏れる感じの発声が俺をものすごく興奮させる。俺は恭子さんの声までが好きらしい。


 コンドームの3個目の口を縛った頃、恭子さんはうつ伏せの状態で痙攣タイムを迎えていた。また俺の好きなやつ。普段のキラキラ美人の恭子さんと違って、口が半開きでだらしない顔のまま横たわる感じもまた好きだった。きっと俺は変態だな。


 恭子さんはあんまり意識がないみたいだったから、今のうちにお尻もじっくり観察しておこうかな。


 その後、恭子さんがあちらの世界から帰ってきたときに、「絶対花音ちゃんにはあんなことしちゃダメだからね!」何度も言われた。「あんなこと」ってどれのことだろう?


 何度も連続してイかせてしまったことだろうか、それとも後ろからしている時に絶頂の直前にお尻をパチンと叩いて急激に上り詰めさせたことだろうか、それとも事後の酩酊状態の時にお尻の穴を舐めたり指を入れてみたことだろうか。それとも……


 花音とはキスもしていない。手は一度だけつないだし、この間服の上から胸も触った。首に抱きつかれたこともある。しかし、その全ては花音からであって、俺から手を出したことはないのだ。恭子さんも変なことを心配するもんだ。俺が花音になりかする訳ないのに。



 ■■■



 結果から言うと、お弁当屋さんの営業時間は23時までだったので、間に合わなかった……そこで、予定を変更してコンビニに行き弁当を買ってきた。本当は二人で行きたかったけど、恭子さんは「もう外とか出られない、無理!」と言っていたので俺が折れた。可愛いのに。


 そう言えば、お金と思って、帰ってきてからビニールポーチに入った60万円を恭子さんに渡した。「なに!?コンビニ強盗でもしてきたの!?」と本気で驚いていたので、バイトで貯めたことを伝えた。


 恭子さんは頑なに「受け取れない」を繰り返していたけど、元々俺が家を出るために貯めたお金だ。どこか安いアパートを借りて、ひっそりと暮らそうと思っていた。今ここには俺が想像していたよりもいい環境がある。


 ワンルーム、バス・トイレ付。恭子さん付。食事も作ってくれているし、掃除も俺は一度もやったことがない。この金くらいは受け取ってもらわないと逆に居づらい。その話をすると渋々受け取ってくれた。


 だいたい、恭子さんは会社を辞める予定なのだから、お金が無くなるはずと指摘してみた。そしたら、1か月間は有給があるし、その後は退職金が出る。会社がブラックだったので失業保険もハローワークからすぐに出るので、さらに4か月はお金がどこからかもらえるらしい。貯金もあるとか言っていたので、どうもこの生活は俺が卒業するくらいまではこのままでも維持できるらしい。


 その後のことは……その時考えればいいか。



 ■■■翌日昼休み・教室にて


 健郎&明日香が俺の弁当がないことに気づき、話しかけてきた。



「あれ?将尚、今日は食堂なの?カノジョ弁当作ってくれなかったの?ケンカ?」


「いや、仲良くしすぎた」


「?」



 健郎は「ちょっと何言ってるか分からない」という顔をしていた。明日香は「え?そういうこと?そういうこと?」っていう顔をして真っ赤になっていたが、言葉は一言も発していなかった。



 食堂から帰ってくるとき、廊下で花音とすれ違ったら「あんまり酷いと通報するわよって恭子に伝えておいて」とすれ違いざまに言われた。


 どういう意味なのか分からないけれど、花音が激おこぷんぷん丸なことだけは伝わった。詳細は家に帰って恭子さんに解説してもらわないと分からないのだろう。

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