第11話:社畜の仕事達成技を期末テストに
アニメやラノベでよくありそうな失敗として、問題の丸暗記しかしておらず期末だけ問題がガラリと変わっていたとか、そんな予想外の事象に手も足も出ないこと。
ただ、俺の場合は恭子さんがいる。一人で勉強するんじゃない。なんかそれなら頑張れそう。
「じゃー、早速始めよっか!」
「そうだね!寝る間も惜しんで勉強するよ!」
「ダメよ。しっかり睡眠、三食食べて、適度な運動よ。しっかり頭に叩き込むには根性論じゃなくて、科学的に効率よくやらないと!」
恭子さんは最初にちゃんと説明してくれた。新入社員の教育に必要なのは「目標と手段と実例」、「業務の目的や必要性」。まあ、俺は「新入社員」ではないのだけど。新入社員教育のノウハウが俺の勉強に活かされていた。
今回の俺の「目標は成績学年トップ」で「手段は過去問を全部解けるようにする」だ。「必要性として、クラスの人間に一目置かれるようにすること」。
クラス内の空気を少しでも良くするためだ。
何のために何をするのか分かっているので、俺もモチベーションが高かった。
その他、恭子さんは「新人はとにかく褒める」とも言った。それは俺に言っちゃダメなやつでは!?しかも、すげえ褒めてくるんだけど。
「カツくんさすがね!これはついつい忘れちゃうやつなの」
「あ、これはお姉さんも知らなった!私も勉強になったわ」
「すごいわ!一回で覚えちゃった!」
「こういう訳ができちゃうんだ!センスいいわね」
「そうなの!もう覚えちゃったの!?」
などなど。これは「男が好きな『さしすせそ』」らしい。
「さすが!」
「知らなかった!」
「すごい!」
「センスがいい」
「そうなの!」
これらしい。「褒める」にこれが取り入れられていた。
だから、それは俺に言っちゃったらダメなやつでしょ!そうは思いながら、気持ちよく勉強が進んだのだから、男って単純だぜ。
さらに、新人教育では「心理的安全の担保」「話しやすい環境」ついでに「ウマニンジン」が必要と教えてくれた。
「心理的安全の担保」とは、失敗しても大丈夫という精神的プレッシャーからの開放を指しているらしい。俺が今回のミッションで失敗しても失うものはもう何もないので、ここは心配していなかった。
「ウマニンジン」は「ご褒美」らしい。俺はどんなご褒美がもらえるのか、胸に期待が膨らんでいた。
その日のタスクができたら「ご褒美」もあった。恭子さんが言うところの「ウマニンジン」の「ニンジン」の部分。
今まで以上にエロエロにベッドの上で愛し合った。ある日はすごい下着を着けていたり、ある日はエロい方のコスプレだったり、「ご褒美」が楽しみで勉強が苦ではなかった。
最後に、「聞きやすい環境」は、学校や塾の比ではないだろう。俺一人のためのブライベート教師。しかも、身体の関係がある様な仲だ。それこそお互いの恥ずかしいところの隅々まで舐めあった。
今更、この問題が分からないとか、その程度で躊躇したりはしない。分からないままの方が恥ずかしかった。家庭教師以上の連帯感と一体感。俺の勉強は進みまくった。
正直、意外だった。ここまでお膳立てされていたら、覚えるまで寝させないみたいな根性論的勉強法だと思っていた。
恭子さんの教え方はすごく分かりやすい。まず、今回理解すべき問題はかなり明確だ。過去問の問題が解けるようになるのがゴール。その問題を解くのに必要な事から教えてくれた。
数学とか割と難しいと思っていたけど、解けるようになった。あれもこれもじゃないから分かりやすい!
基本1日1教科で無理さもない。暗記物教科は1日で全部覚えるのではなく、小分けにして繰り返し覚えるスタイルだった。俺は「恭子さんの授業」の他に登下校の時間や昼休みを使うことで暗記物を覚えて行った。
勉強の進み具合も俺の今までとは違った。
恭子さんはやっぱりかなり勉強ができる人だったらしい。無理のないスケジューリングとその日のゴールが明確だったことで自分がどこまでできているのか把握しやすかった。
こんな風にスケジューリングするんだとそのやり方も勉強になったほどだ。
グラフも分かりやすかった。その日の
そこに使ったのは「バーチャート式工程表」と「出来高累計曲線(通称、バナナ曲線)式工程表」というらしい。「工程管理」の時によく使うものだと教えてくれた。
聞いたことがない言葉「工程管理」。仕事において、現状の進み具合の把握と進捗具合をメンバー全員で把握するための作業の事らしい。この場合、俺と恭子さんしかいないのだけど、恭子さんが考えているイメージを俺に伝えるために使われた。
名前は難しいけど、内容としては分かりやすかった。今の自分の立ち位置が分かるのと、予定に対して遅れているか、進んでいるのか一目で分かったのだ。
「カツくん、すごいわよ!予定通り進んでるわね。進捗予定の112%で推移しているわ」
「恭子さんのお陰だよ!」
「ご主人様、あ、間違えた、カツくんの頑張りだよ!」
「いま、変なこと言わなかった!?」
「な、なにか聞こえた?」
恭子さんが顔を真っ赤にして明後日の方向を見ながら必死に誤魔化している。じーっと見つめるとダラダラと汗をかき始めた。正直嫌な予感しかないけれど、俺に害なそうしているわけではないのが分かるので、今日のところはスルーした。
ふと考えてみたら、普通のラノベとかでは好きな女の子を振り向かせるためとか、落とすためにチートスキルを使って頑張って、ウエーイするはずだ。俺の場合、ヒロインは既に落ちている。ラブラブを通り越してズブズブだ。
自分の生活環境をよくするためだけに頑張るってあんまりカッコよくないな。まあ、しょうがないけど。前にも後ろにも進めなくなっていたんだ。恭子さんと頑張ってみるか。
■
花音ちゃん……彼女が強力なライバルであることは明らかだった。「元カノ」「同じクラス」「クールビューティー」「カツくんと同級生」などなど、油断できない要素はたくさんあって、いつカツくんを取られてしまってもおかしくない要素がたくさんあった。
心の中の警報はなり続けている。最も注意すべきは彼女だと。そして、カツくんの中にも花音ちゃんを思う要素が見て取れた。本人もまだ恐らく気づいていない。
最初は、カツくんを甘やかせてドロドロにして落とす作戦だったけれど、自分の方が先に落ちてしまっている。しかも、ズブズブにハマっている。
カツくんなしではもう生きられない。最初からそうだった。命を救ってもらった。神か天使か、最愛の人。
心も合うけど、身体も合う。あんなに激しくて、深く愛してくれる人なんて、恐らくもう一生現れない。年下相手に恥ずかしいけれど、完全に翻弄されている。新しい扉がいくつも開いてしまった。
あんなのを味わってしまったら、もう離れることなんて出来ない。まるで麻薬。まさに悪魔的。
天使の心に悪魔の肉体。普通の人じゃない。こんな人に出会ってしまった。それは運命なのか、偶然なのか。
一人の男性としての愛情も湧く。そして、母性的な何かがあふれ出してくる。そして、意外だったのが奴隷心。彼に跪きたい。屈服してしまいたい。支配されて征服されたい。
そんな今までに経験したことがない感情が自分の中にあることに気づいてしまった。武田将尚くん……カツくん……ご主人様!気を張っていないとご主人様と呼んで
そして、あの目。きっと大きな問題を抱えた目。絶望の目。ご主人様の抱えた問題を全て解消してあげたい!いえ、して差し上げたい!あの目が変わってしまったとしても、心を開放して差し上げたい!
まずは、勉強。成績学年トップを取らせてみせる。『教室の中の空気が悪い問題』と同時に『家族との仲問題』にも影響を与える大切なピースの一つ。そして『花音ちゃんとの関係問題』にも……
まだこれは後でいい。とりあえずは、10年にも及ぶ社畜スキルをフル活用して、カツくんのモチベーション上げまくりの、成績上げまくりで!
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