42. VRMMO世界による現実側の影響

 VRMMOのあるような世界では、いくつか革新的な技術が登場する。それらは社会構造を変化させるのに十分なインパクトのある存在のはずだ。


 まず第一に高レベル物理演算・ポリゴン表現だ。技術的ハードルはそこまで高くないと思われるが、現実的な仮想空間を作成する技術である。

 服の通信販売での試着の仮想化などが可能になる。

 仮想テーマパーク、仮想旅行、ファンタジー世界の再現、仮想世界を応用した映画など色々な応用ができるだろう。


◆高性能AI


 つぎに高性能AIの存在。ほとんどの仕事をすべてAIに任せられる可能性がある。そうなると世界の産業構造ががらりと変化するだろう。

 現実世界でも、自動運転カーの登場によりタクシーの代替などの検討がされている。

 AIによるAIの自己進化の可能性があり、そのレベルに到達すると、AIは人間を超えるといわれている。これをシンギュラリティという。

 高性能AIに加えて、それを載せた人型ロボットがあれば仕事で人間は不要だ。

 人が必要になるのは、高度な政治的判断が必要な場合などに限られてくる。

 VRMMOの開発段階にもAIの存在は大きい。例えば、広大なすべてのマップの作成を人間が直接行うには多大な開発コストがかかるが、人間はキービジュアル、世界観の設定をするだけで、AIが自動生成を用いて作成するようになれば、広大な世界を短期間で作成することが可能になるだろう。


 AIが世界を支配するようになると、人間はほぼ働く必要がないところまでいくかもしれない。

 そうなったら、人々は何をして日々を過ごすだろうか。


 現在はあまり現実的ではないとされている、ベーシックインカムも当たり前になる可能性が高い。これは国民全員に同額の生活できるだけの資金を配布する政策だ。


◆時間加速


 AIの普及がそれほどはない場合、VR空間において時間加速が可能になると、現実時間での労働時間や学習時間を短縮することが可能になる。

 脳自体は加速しても疲労すると考えられる。そのあたりが現実側でどの程度の影響があるかが重要になってくる。

 わざわざ学校や会社に実際に行って作業をするよりは、VR空間へダイブして、仮想会社に仮想学校へ通った方がよっぽど効率的だろう。そうなると電車やバス、車で通勤・通学する必要がなくなり、通勤ラッシュというものも過去のものになる可能性すらあるだろう。


◆五感再現


 味覚・嗅覚再現が可能になると、現実の料理以上の美味しい疑似食生活が可能になる。

 現実の料理店やお土産などは打撃を受けることになるだろう。

 いくら食べても太らないと言われている。


 VR空間のおかげで、危険なスポーツや宇宙旅行などを疑似的に体験することができる。

 筋力はつかないものの、疑似スポーツで実際にその競技の訓練にもなると思われる。

 労働時間の短縮などが起きる世界では、逆に余暇に現実でスポーツをすることが流行るかもしれない。


◆記憶定着・外部記憶


 一部の小説作品では、脳に知識を直接記憶させるような表現がでてくることもある。

 そうすると、学習がとても簡単になる。

 学習がインプリンティングで可能になるなら、学校の存在意義が低下してきて、子供の生活も一変するかもしれない。

 ただし集団生活や体力向上などの目的のために学校が存続する可能性ももちろんある。

 存続した学校では知識を得ることではなく、芸術や生産的活動や討論会などの知識を応用する課題へ中心が変化するだろう。

 記憶の刷り込み技術は、洗脳という側面を持っているため、開発に規制が掛かる可能性もある。もっとも加速VR空間での普通の教育も、十分洗脳するのに適していると考えられるので、五十歩百歩とも言える。


 また知識を植え付けることができない世界設定であったとしても思考操作・ホログラム技術などにより、キーボードやタッチ操作よりスムーズな外部記憶との連携が可能になるだろう。


◆拡張現実


 VR空間の応用の一つに拡張現実技術がある。

 これは特殊なメガネや直接脳に働きかけて、現実世界にホログラムを重ねて表示させる技術の事だ。

 空間に浮かぶ広告・案内看板から始まり、仮想のペット、服などや仮想電子黒板など応用技術は多岐にわたる。

 あまり拡張現実を扱ったなろう小説はないような気がするものの、拡張現実が主題の一般作品は存在する。

 中には電脳ハックで、実際には存在しない人を存在しているように見せかけたり、逆にそこにいるのに見えないように視覚を改ざんするようなこともある。

 電脳系までいくと、現実と拡張現実の境は際限なくないに等しい。


◆代替ボディ


 拡張現実と高性能人型ロボットを応用することにより、VR空間にダイブした状態で、現実のロボットを操作して、自分の代わりに出かけたりすることも可能になる。

 骨折や障害などで、体が動かなくても代わりの体が使える。


 その応用で人型のマイクロロボットをVR技術的に操作することで、体内に入り込み、病気の手術などを行うという作品もあった。

 遠距離にあるロボットを操作することで、過疎地域などでも手術が可能になり、医療格差を減らすこともできる。


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