8. 移動手段

◆徒歩

 徒歩で遠くの町まで移動するのは大変だ。しかし最初は馬も何もないので、歩いて移動する羽目になる。もちろん主人公チートのスタミナ力で全力ダッシュし続けるという方法もある。


◆馬

 馬に騎乗して走る。馬は道なりに走ってくれるので、細かい操作はしなくていい。最高速のときには鞍にお尻を付けずに浮かして乗るので大変。馬にもごはんとお水が必要。あと塩もいる。砂漠横断は難しい。

 馬が食べる草を「飼葉」という。


たてがみ

 首の後ろにある長い毛。

鹿毛かげ

 茶色(茶褐色)の毛。足などが黒い。一般的。

 黒鹿毛、青鹿毛を含む場合もある。

黒鹿毛くろかげ

 茶色の毛。足、鬣、尻尾などが黒い。

青鹿毛あおかげ

 だいたい黒で鼻などが褐色。

青毛あおげ

 全身黒い毛。

栗毛くりげ

 茶色(黄褐色)の毛。長毛は色々。

芦毛あしげ

 白から灰色の毛。

 若いころは茶色や黒い毛が混じっているがだんだん白くなる。

 肌は黒い。

白毛しろげ

 全身白い毛。肌はピンク。


裸馬はだかうま

 鞍や鐙を装備していない素の状態の馬。

 主に「裸馬に乗る」ときに使う表現。

●馬具

 蹄鉄、鞍、鐙、手綱などの馬に使う器具のこと。

 裸馬に乗る民族もいるが、ナーロッパ的には馬具を用いる。

くら

 馬の背中に乗せる椅子みたいなもの。

 乗馬の姿勢を安定させる。

 跨ぐ形が一般的だが、女性用の片側に乗るものも一応ある。

手綱たづな

 馬銜の先に繋がっている綱で乗馬者が手に持つ。馬の進行方向や停止などを指示するのに使う。

馬銜はみ、銜、くつわ

 馬の口には歯のない部分があり、そこに鉄の棒を銜えさせる。

蹄鉄ていてつ

 馬のひづめの裏にU字型をした鉄を釘で打って留めてあるもの。

 蹄を保護して削れてしまうのを避ける。

あぶみ

 乗馬者が足を乗せる台。木製、金属製などがある。

遮眼帯しゃがんたい、ブリンカー

 馬の視野を狭めて、前方に集中させるための、目隠しの一種。

馬鎧うまよろい

 馬が着る鎧。板状のものを側面や全面につける。

馬面ばめん

 顔の部分を覆う馬版のお面。

駄馬だば

 荷運び用の馬。

駄獣だじゅう

 荷運び用の獣。ロバなど。



◆スキー

 雪の降る寒冷地では、スキーで移動することもある。


◆ソリ(橇)

 雪の降る寒冷地では、ソリで移動することもある。

 ソリは、犬、トナカイ、馬、牛、人力などがある。


◆馬車

 馬が引いて走る車。通常は一頭立ての二輪軽馬車か、数頭立ての四輪馬車だ。馬の数は一頭から四頭立て位までが普通で、王室やファンタジー的には六頭ぐらいまではある。

 幌馬車と木の箱でできた箱型馬車、箱馬車(有蓋ゆうがい馬車)、上が空いている馬車(無蓋むがい馬車)がある。

 有蓋、無蓋という言い方は現代では稀で、なろう小説ではまず見かけない。

 用途などにより、荷馬車、乗用馬車、乗合馬車、駅馬車、貸馬車、辻馬車、旅行馬車、高速馬車、特急馬車、急行馬車、移動馬車、定期馬車、臨時馬車、あとは牢馬車、奴隷馬車、護送馬車、戦車、装甲馬車などがある。

 大きさで小型馬車、中型馬車、大型馬車などとも書く。

 近代になり郵便制度が発明されれば郵便馬車もある。

 レールがあれば、鉄道馬車というのもある。

 馬車という名前なのに、馬以外、竜、カピバラ、ロバ、ラクダ等色々あることもある。

 農耕や荷馬車に使う農耕馬は足が太い。対して速く走るサラブレッドは足は細い代わりに力は農耕馬に比べると劣る。

 歩くよりは早いが、単独で馬を走らせるよりは遅い。

牽引棒けんいんぼう

 馬車、獣車などを牽引するときに使う棒。

くびき

 牽引棒と輓獣を繋ぐための道具。

輓具ばんぐ

 牽引棒と軛など含む牽引に必要な道具。

わだち

 車輪の跡。特に未舗装路における車輪による凹み。てつともいう。

輓獣ばんじゅう

 牽引用の獣。ロバ、馬、牛、象など。

輓馬ばんば

 牽引用の馬。


◆隊商、商隊、キャラバン

 盗賊、野盗、夜盗、海賊、空賊、魔物、その他、追剥ぎなどを警戒して、単独の馬車ではなく、複数の馬車などが隊を作って進むもの。

 共同で冒険者や傭兵などを雇って、安全を高める。

 夜の見張りも、雇った複数の冒険者が交代ですれば、効率もいい。

 複数人が夜起きていることで、寝落ちの心配が多少改善される。

 ただし単独の馬や馬車より歩みはやや遅い。

 日本語の語彙としては本来は「隊商」が正しいらしく、中国語では護衛を付けないものを「商隊」というらしい。なろうはじめファンタジー小説ではしばしば護衛付きの有無の区別なく「商隊」と書かれている。


◆ラクダ、ロバのキャラバン

 荷物を積んだラクダやロバの群れを一列につなぎ、砂漠や山岳地帯を進む。

 リアル世界で「隊商、キャラバン」というとこちらを指すことが多い。

 砂漠でも盗賊が出るため、複数の商人が隊を作って集団行動をしていた。


◆鳥馬

 トリウマ。

 いわゆるナウシカのカイ、クイ、FFのチョコボ。

 現実でいえばダチョウ、エミュー、モアのような陸鳥。

 二足歩行の鳥で飛べないが高速で走ることができる。

 騎兵や偵察など騎獣として用いる。

 荷運びであれば、ラクダのように何頭か縦に繋いで先頭の個体に乗り、列車のように運用すると思われれる。


◆ゴーレム馬車

 ゴーレム馬車は魔力的な力で動く馬車で馬を必要としない。馬がゴーレムのものと馬車本体がゴーレムの物の二種類ある。


◆牛車(ぎっしゃ)、竜車、獣車

 日本には牛に引かせる牛車もあった。

 地竜、土竜、サラマンダーなどの大型で力持ちの魔獣に引かせる荷車があったりする。


◆帆船

 普通の帆船。風の力を帆に受けて進む。風任せなところがある。風魔法でブーストすることもある。

 ゴーレム船という物もあるかもしれない。


◆ガレー船

 大量のオールを人力で漕いで進む軍艦。風向きに左右されずに進める。漕ぎ手は奴隷などを使う。過酷な労働だ。


◆熱気球

 熱気球はガスバーナーで温めた空気を使い、空に浮く乗り物。うまく風に乗れば、そこそこのスピードで移動できる。

 異世界ではガスバーナーとはいかないと思うので、魔道具などで炎を出すか、魔法で直接空気を温めることでなんとかなりそうだ。

 飛行船は技術的にまだなさそうだ。


◆飛空艇[ひくうてい]

 木造船の形をしているが空を飛ぶ。絶対数は少ないだろう。なんらかの魔力装置、だいたいは魔導炉などを搭載して浮いており、垂直離着陸ができる。また非常に高価なので防御用の大砲などが付いている。


 なお「飛行艇」[ひこうてい]は飛行機の胴体が船状のもので水上飛行機に分類されるものを指す。


◆空飛ぶホウキ、空飛ぶ絨毯

 魔女が使う空飛ぶホウキ、アラブとかの人が使う空飛ぶ絨毯があれば、高速に移動できるだろう。

 ただしどちらも複数人が乗るにはきつそうなので、ハーレムとかのパーティーで行動している主人公たちには縁がないかもしれない。


◆転移門(ゲート)、転移陣

 ゲームでは、歩いて世界を旅するのは大変なので、町と町の間をワープする装置があることがある。しかし異世界ものでは旅の醍醐味が減少してしまうので、あっても序盤ではほとんど使われない。主人公はチート魔法でワープしたりする場合も使われない。


◆転移魔法、ワープ

 一度行ったところでないと行けないというのがよくある。

 自分しか転移できない場合や、触れたもの周囲の人員のみなど設定には差がある。

 人数、荷物の量、距離により魔力消費量が増大する。

 普通の人間には魔力消費量が多すぎてあまり使えない。


◆騎獣

 動物系魔物に騎乗して移動する場合がある。トラ、ライオン、ユニコーン、フェンリル、スレイプニルなどが有名。

 あとサラマンダー。「サラマンダーよりずっとはやい!」


◆空飛ぶ騎獣

 乗る人を指す場合はワイバーン乗り(ワイバーンライダー)、ドラゴンライダー等という。

 その他、グリフォン、ヒッポグリフなど。

 空を飛んで高速移動。

 竜騎兵は、本来は銃を持った騎兵のことでドラグーンというが、異世界では本当に竜に乗っていることもある。


◆「騎獣」という単語

 一般的な語なのかと思いきや、ほとんどの辞書にも載っていないようだ。

 馬であれば騎馬というが、他の獣、魔物を含めたよい言い方が他にあまり思いつかない。

 兵種であれば騎兵、騎馬兵といい、馬以外では駱駝騎兵などがある。

 十二国記では妖獣を乗り物とするものを騎獣と呼んでいる。

 本好きの下剋上では、貴族が魔法により作り出した獣や乗り込み型のものを、騎獣と呼んでいる。

 他の用例としてはマジック・ザ・ギャザリングで乗り物の獣のカード名などにもみられる。

 MMOなどRPGでは乗り物の獣類を「マウント」といい、騎獣と表記しているものがある。


◆翼、羽、翅で飛ぶ

 妖精、ハーピー、鳥人族、鳥獣人、ヴァンパイア、竜人、ドラゴニュート、天使、羽のある悪魔などの場合には、自分で飛ぶことも選択肢の一つになる。


◆荷車、リヤカー、カート

 主に人が引いて歩くもの。二輪車の物が多い。馬車より安価なので農民などの低所得層がよく利用する。巨大な亜人に引かせれば馬車並みの積載量になるかもしれない。


◆一輪車、ネコ

 土を運んだりするための押すタイプの車。荷車より小さい。農作業や工事現場で使う。バランスを保つのに力が必要で長距離移動には向かない。




◆街道、橋、川越

 江戸時代、東海道、中山道、日光街道、奥州街道、甲州街道の五街道をはじめ街道整備がされた。

 宿駅制度といって約16km-3km間隔で「宿場」がある。

 また「一里塚」という道路標識のようなものが一定距離ごとに設置されている。

 宿場では宿の経営を行い、荷運びの「人足」と馬を置く「伝馬」の「駅伝」制度があった。

 日本の街道は馬車が発展しなかったこともあり、主に徒歩で通ることを想定していた。

 山間部など場所によっては階段になっていて、馬は通れるものの、とても馬車、牛車は通れない。

 しかし逆に一部では牛車と人馬が区分けされているところもあるらしい。

 東海道などは広い川の河口付近を通るが橋がなく渡船が行れた。軍事的理由で場所により橋も渡し船もなく、通行人自ら川を徒歩で渡るか、御輿に客を乗せて業者の人が水の中を歩いて渡っていた。

 その川では大雨が降ると通行できなくなる。

 また愛知、三重の間の伊勢湾では、木曽三川があり船による「七里の渡し」で4時間かかる。馬も船に乗せられたようだ。

 日差しから守るため、街道沿いには「並木」が植えられていた。


 当然ナーロッパのように馬車が街道を行き来するのであれば「階段」というわけにはいかないし「橋」がないのも「小舟」も困る。

 また道幅も江戸の街道では10mから2m程度だったので、馬車では狭いところもある可能性がある。

 馬車同士がすれ違うだけの幅を必要とする。

 土魔法、強力な魔獣などの力を借りて、石橋の整備をするのが賢明だろう。

 馬車が通れるだけの橋か、もしくは大型船による渡しが必要だ。

 幸いにして川が浅いのであれば「洗い越し」と言って、浅瀬をそのまま通ることもできる。いわゆる「フォード」「フルト」のことだ。

 江戸の街道、宿場からすれば、何日間も野宿をしなければ到着しないナーロッパは、宿場の間隔が明らかに広い。田舎であったり、国がものすごく広い、人口密度が低い、など要因はいくらでも考えられるものの、王都周辺でも同様であったりすると、やや違和感もある。ただし、異世界には強力な魔獣がいるので、小さな宿場町を点々と設置するのが難しい可能性はある。何のための城塞都市かは考える必要があるだろう。

 また、そこまで強い魔獣や盗賊が多いなら、単独での旅は自殺行為で、必然として隊商が多くなるだろう。


 ナーロッパでは野営をするため、街道沿いにところどころに休憩所のような空き地がある。

 一日中歩き通したり、馬車で走ることは稀で、陽が沈む1時間前くらいには、キャンプ地を決めて夕ご飯の支度をしたりする。

 これは人工的に整備したというよりも、旅人が長い間、同じ場所を休憩所として使用してきた跡といえる。

 往々にして、そういう場所は、ひらけていて近くに小川などの水場がある。

 また過去に利用した人たちの「かまど」などが残っていることもある。


◆関所

 江戸時代でいえば箱根関、新居関など。

 軍事的理由で国内の主要ルートもしくは国境を接する場所で、人や物を検問したり税金を徴収する。

 峠や川の渡しに設置されることが多い。

 もちろん、ものすごく頑張れば山の中など、関所を避けて通ることもできる。しかし魔物が蔓延るナーロッパではそのリスクは相当高いだろう。

 もともと峠など他にルートの選択肢が少ない場所に関所が置かれるため、迂回するのは難しい場所もあると思われる。

 現代では国内の関所はまず見られないが「国境検問所」は依然としてある。


◆通信、駅伝

 上記の通り10kmごとの宿場に馬を置き、手紙などを持たせて宿場町間を走らせリレーして、通信文を届けた。

 駅伝制度自体は、各国古くから存在している。日本にも大化の646年ごろには存在していた。ナーロッパでも普及している可能性が高い。

 しかし異世界の場合、通信には「ハーピー」などの空を飛ぶ亜人、使役魔獣、通信魔導具、通信魔法なども考えられる。

 伝書鳩というのもあるが、確実性が低く、また内容を第三者に見られる危険性もある。

 古典的には「狼煙のろし」も有効で、万里の長城には一定間隔で狼煙台があった。これを「烽火台」という。

 この烽火台は火が見えれば、夜間でも有効だった。

 狼煙の関連に「龍勢」という打ち上げ花火、ロケットのようなものもある。


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