7. 社会
◆貴族社会
王制や議会制だが、多くは貴族制度が残っている設定が多い。
偉いほうから公爵、侯爵、辺境伯、伯爵、子爵、男爵など。
現実の爵位は、基本的に男系が継ぐため男の子孫がいないと先祖を遡って遠い親戚が継ぐこともあった。
私的には、爵位はどっちが上か覚えるのが面倒なので、一等爵、二等爵みたいな数字になっていると楽だと思うが見かけない。
王のほかに地方ごとに領主がいて治めていることが多い。
領主は王に代わり税金などを徴収し町の警護や公共事業などを行う。
◆奴隷制度
奴隷制度があるときと違法な奴隷というパターンがある。
犯罪奴隷や普通奴隷、一般奴隷のように複数種類ある設定も多い。
魔法の道具の隷属の首輪や魔法の契約で、主人に逆らえないようになっていることもある。
逆に契約で主人が奴隷に命令できないことを定めることもある。例えば、死ぬ命令や性的な奉仕の強制など。逆に、奴隷は物であり生死を含む一切が主人の自由という制度もある。
主人が死ぬと奴隷も一緒に死んだりする。また一定の装備、服装を奴隷に強制する制度や、衣食住の保証、人頭税などの制度がある場合がある。
食事は主人と一緒にとれない、席に座ってはいけない、ベッドで寝られない、宿の部屋で寝泊まりができないなどなど制約がある。
また奴隷になった段階で名前を捨てられて、主人に再度付けられることもある。
家族などが奴隷の代金を支払うことで解放されることもある。
◆娼館
娼婦を雇っていて、館内で行為をする場所が娼館だ。異世界では違法でないことが多く、娼館がたくさんある。ラブホテルのようなものは逆に少ないようだ。王都や大都市では娼館街があり、町の一部の地域に集中して建てられていることがよくある。
お店や嬢や部屋にはランクがあり、貴族ばかりが顧客の超高級店や高級嬢がいる。写真が発達していないので、安いほうの子から順番に顧客の前に姿を見せて、相手を決めたりするようだ。
貴族や政府の人間の話は基本的には業務秘密であるが、娼館で噂話を集めるような人もたまにいる。
午前中は人通りが少なく午後に開店して夜遅くまで営業しているような所が多い。
娼館は高級ホテルのような部屋の作りで、お風呂や大きなベッドがあり、よく香が焚かれている。またお茶やお菓子などが出てくることもある。
店主は元娼婦だったり男性だったりするが、だいたい権力者で、昼の顔が地位の高い人であっても頭が上がらない。
嬢は通いのこともあるが、娼館に住んでいることも多い。性奴隷だったり借金があったり親に売られたりした子が多いだろう。
◆スラム
貧しい人たちが住んでいるスラム街があることが多い。スラムは犯罪の温床でスリなども多いので身なりの良い人が無防備に行くのは注意が必要。錬金術師や偏屈な専門職、引退者、知識人などが住んでいることもある。
◆孤児院
王や貴族などが出資して孤児院が設立されている。教会と一緒になっていることが多い。
六、七歳以上の子供たちは単純労働のアルバイトをしていることもある。
一般的な孤児院では宗教を除く教育はあまり施さないようだが、転生者などが関わってくるとその限りではない。ある程度の年齢になると独立して孤児院を卒業する。
奴隷制度がない場合は、働き手として貰われていくことが多いと思う。小さな孤児では、名前が分からないことがあり、孤児院で再度名付けられることもある。
子供たちに名前を考えてもらうと変な名前になることがある。また異世界ではそれほど重視されないが誕生日が不明ということも多い。
◆教会
宗教施設は異世界でも健在だ。よく十字教などと呼ばれる。
冠婚葬祭関連、病院、孤児院、時計塔などを兼ねる。
村で一番高い建物は教会の鐘つき堂で、それより高い建物を建ててはいけないという法律があったりする。
村の集会も教会以外に広い家はないかもしれない。
異世界では聖魔法などを使い祝福や回復の魔法を使えるのでその代金として寄付を募る。
神父が裏で子供を売ったり賄賂をもらったり怪しいことをするのもテンプレである。
教会の神父は、首都などから派遣されてくるので村では知識人として尊敬されることもある。
教会……聖教会。チャーチ。
協会……冒険者協会、錬金術師協会etc。ギルド、アソシエーション、オーガニゼーション。
同じ作品で両方出てくると非常に紛らわしい。
◆ギルド
冒険者ギルド、商業ギルドなど、同一の職業の人が集まった組合のこと。異世界では国を超えて同じギルドが展開しており強い権限を持っていることがある。冒険者ギルドは仕事を貰って報酬を貰う所だが酒場や宿屋さらにアイテム屋を兼ねていることもある。
冒険者ギルドは、依頼(クエスト)を発行する役割がある。討伐依頼は国、領主などが依頼し、店、職人などが素材系の依頼を行う。
血族どうしのものをクランと呼び、組合・共同体はユニオンと呼ぶ。
ギルドのトップ、ギルド長をギルドマスター、ギルマスと呼ぶ。
副ギルド長をサブマスター、サブマスと呼ぶ。
ギルド員をギルドメンバー、ギルメンと呼ぶ。
受付嬢などを、ギルド職員と呼ぶ。
◆露店
販売先がない農家や家内制手工業のような手作業で作られるものを売る場所は、現代と違い「露店」が大きなウェイトを占めると思われる。
お店を作るにはなかなか大変であるし、村で作物を作り、町まで持ってきて販売することも多いと思われる。
町の商店が買い取ってくれるかもしれないが、自分で消費者に売ることも多いだろう。
単体を露店、屋台。場所全体をフリーマーケット、フリマ、蚤の市、市場、バザールなどと呼ぶ。
フリーマーケットはflea marketであり、その直訳が「蚤の市」だ。
free marketは「日本フリーマーケット協会」のことか経済用語の自由市場を指す。
一般にフリマのことを指して「free market/自由市場」とは言わないことに注意。
なお「露天」は屋根がないという意味でこの場合は使用はあまり適切ではない。
一方で露店で出している商売を「露天商」という言い方もある。
ちなみに日本語における「バザー」は商品の売り上げを基本的に教会や学校に寄付するもののことをいうため、こちらも用語としてはあまり適切ではない。
ただしバザーと市場=バザールは同じ英単語のことなので、厳密には間違いではない。
◆結界石、結界柱
魔物から村・町を守るために設置する物。町の中心にあったり、町の周りを囲うように配置する。
結界は物理的なものではないので完全に侵入を防ぐことができないパターンもある。
門以外の場所は結界の魔法的な壁がありはじき返され侵入できないこともある。
結界がない場合は、城壁や木の柵で囲ったりするが上空から侵入する魔物には効果がない。
村でもまとまって住んでいて結界・柵の範囲外に畑がある。
◆城門
城塞都市の街の入り口には城門があり、魔物や賊の侵入を監視している。
また、入市税や関税を課す場所でもある。
日の出ている間しか門は開いておらず、夜になって到着すると入れない。
たまに長い行列ができる。身分の高い人は優先的に入れてもらえる。行列待ちの人に声をかける売り子などもいる。
入り口のすぐ内側では露店などが並ぶ。難民などが門の外側に集まっていることも。
街の門だからといっても「街門」とは言わず「城門」と呼ぶようだ。
◆街の石壁
壁がある街を城塞都市、
城塞都市では城壁、石壁がある。街を拡張した結果、内壁、外壁に分けられているのもよくある。
大きな都市では内壁の内側が貴族街、外が庶民の街、外壁や中壁の外がスラム街になっていたりする。方角で商店街、職人街、住宅街と分かれていることも。
城壁の上の部分はお城でよくある凹凸がある。凹んだ場所を矢狭間(やざま)、狭間といい、上に乗るところよりも上に出ている盾にする壁を胸壁といい、合わせて狭間胸壁という。
城壁の外側には堀が巡らせてあることも多い。その場合、門は跳ね橋にすると防御力が高くなる。
◆迷宮(ダンジョン)
小説によって迷宮と通常マップの比重が異なる。迷宮内には通路、部屋があり罠や安全地帯、宝箱などの要素がある。稀にモンスターハウスと呼ばれるモンスターが大量にいる部屋があることも。
階層(フロア)があり、1層2層または1階2階と「上がって」いくのと「下がっていく」ものがある。
ダンジョンボスやフロアボスがいる。倒すとしばらく沸かないことがあり時間沸きという。ダンジョンボスを倒すと迷宮が消失することもある。
ゲームのセーブポイント風にリターンポイントが設定されていることもある。迷宮は、魔物の核や肉、殻などの素材が手に入るので鉱山のように資源として扱われる。山の中の迷宮以外に迷宮の近くに街ができることもある。
◆闘技場(コロシアム)
奴隷や志願者が闘技場で戦闘をして娯楽として提供している。魔物を戦わせることもある。
なろう小説ではエタ率の高い「格闘技大会」の舞台になる。
勝ち進むとだんだん強い敵と戦わされるのが一般的だ。奴隷はさらに勝ち進むと解放される機会を得られる。
◆教育
学校は騎士学校のような王立の物のみか、そもそも無いことも多い。
貴族は子供に教師をつけて個人的に教える。
駆け出しの商店や村人の会計では足し算のみでき、複数個の物は「10倍」と足し算で計算し、お釣りも「お釣り+品物代=預り金」のように計算するかもしれない。複数の品を買った場合、代金を合算せず、1種類ずつ会計するほうが現実的かも。
掛け算や引き算ができれば中級で、割り算ができれば上級だろう。
識字率はそれほど高くない設定が多い。そのためギルドや各種書類では代筆、代読の人がアルバイトをしていることがある。異世界は洋風なことが多いので表音文字が多い。文字の音さえ分かればある程度読めるようにはなりそうだ。しかし誤字なく書くのはかなり難しいと思われる。
あまり読みと書きの差に触れた小説は見かけない。
文字が読めない人がスクロールを使えるか疑問がある。
◆言語
各国ごとに違いがあるが、隣国は方言レベルの差のような設定が多い。大陸統一言語の場合もある。また種族ごとのエルフ語のような物もある。魔法などでは古代語や神聖語が利用されることもある。異世界だが古代語が英語や日本語という設定も稀に見る。
◆美醜の差異
昔ブラジャーが発明される前は胸が小さいほうが良いとされていた。またおかめ美人のように丸顔やふくよかなほうが美人だったり、現代とは顔だけ美醜が反対という設定もよく見かけるようになった。
◆税金
人頭税。一年一人頭で税金を取られる。入市税。関税。村や町に入るのに税金を取られる。人や馬車、品物ごとに取られる。遠くに馬車で運ぶ場合、経由地ごとでとられるので遠ければ遠いほどコストがかかる。犬税。昔、犬は食用だったので飼う数で税金を取られた。
消費税のようなものはシステムが難しいのであまり聞かない。ギルドでの売買で税金を徴収することもある。村々では食料を物納することも多い。理由をつけては徴収されるというシーンをたまに見る。町に住んでいる場合、家や馬、馬車に税金をかけることもある。
◆時間感覚
日の出を午前六時、南中を正午、日没を午後六時として、その間は均等割りのような感覚だったりする。季節ごとに夜と昼の時間間隔が異なる。こういうものを「不定時法」という。
もっとも一日が二十四時間でない作品もある。夜は庶民では明かりが乏しい、あっても薄暗いランプなどなので夜は寝る時間だ。魔法の明かりが現代のように明るければ夜も活動時間になり得る。
機械式時計は電気が不要なので、細工物が発達していたら存在しているかもしれない。魔法の時計、魔道具もありうる。時計などが存在しているなら現代のような「定時法」かもしれない。
教会の鐘などがある場合は「三の鐘」とか「三の刻」とかそういう表記になっていることもある。
◆食事
朝と夕方の二回という設定も多い。現実でも昔は二回だったらしい。
旅では保存食の干し肉に少しの塩と小麦粉を混ぜたようなスープだけだ。オートミールとかもありそうだ。煮豆しか食べられないという設定もありだと思う。貧しい場合肉はほとんど食べられず毎日芋とかだろう。
一方で貴族は豪華な食事を毎日のように食べる。胡椒や白砂糖が貴重だったりそうでなかったりする。塩は岩塩や海があれば賄えるので普及している。塩がないと生きられない。
アメリカ大陸由来の、トマト、ジャガイモ、トウモロコシは中世ヨーロッパには無いと思われるが、異世界では事情が異なるようだ。トマトはイタリア、ジャガイモはイギリスでよく食べられるようになったように、異世界でも外国から来た新しい食べ物が普及することもあるだろう。
◆犯罪
ゲームでは犯罪を犯すとレッドプレイヤーになるが、異世界ではカーソルとかユーザーの名前表示がない。その代わり人を鑑定すると、殺人、窃盗、傷害などが表示・認識される世界もある。犯罪者、特に盗賊を殺した場合は例外的に殺人にはならない。
◆刑罰
中世の世界では懲役刑はなく刑務所もないだろう。まず運営するのが面倒だ。
代わりに奴隷制度が存在して勤労に励むのだ。
だから囚人は一般的には犯罪で捕まり刑罰が施行されるまでの仮の措置になるだろう。
死刑、奴隷落ち、罰金刑、むち打ち、爵位の取り消し、権利の取り消し、部位欠損、入れ墨などの犯罪者の印、魔法的罰則などの刑罰が考えられる。死刑にも種類があり、磔(はりつけ)、火あぶり、切腹、服毒などがあげられる。他にもたくさんの苦痛を伴う見せしめの死刑方法が考えられる。
ファンタジーでは不死や回復手段や魔法などが存在するので、死刑にしても死なない人に対する方法や、魔法により「毎日エロいことをしないといけない誓約」なども考えられる。
魔法による幼児化、老人化の刑罰なども考えられるかもしれない。
裁判所という物自体がないかもしれない。三権分立になっていないなら、教会や権力者である市町村長、貴族、国王などが刑罰を決定するだろう。
◆紙類・本
紙が高価な場合がある。代わりに羊皮紙やパピルス、木簡などが使われる。ファンタジー植物の大きめの葉っぱが紙の代わりに使われることもある。
本は判子を並べて作る活版印刷が普及していないなら、手書きでの複製や1枚の板を彫る木版印刷のような手法になるので非常に高価になる。
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