06.仲間

 家に帰ると私は受信機に耳を傾けた。


 さーて、あの女どんなことを話してるかな?


 全部暴いてやる。フッフッフ……




 ――冷静になってみるとポケットに入れただけだし振動でノイズすごそうだな。


 え?どうしよ。




 ま、まあなんとかなるでしょ。


 一応テストしたときは問題なく使えたし。


 たぶん、ね。




 『ガサッ』




 おっ?


 早速なんか聞こえてきたぞ?




 この盗聴器、ある程度大きい音しか聞こえないようにしてあるから多分中々音聞こえてこないと思うんだけど……


 強いて言うならノイズくらい。




 でも、この音ノイズって言うより――何かにぶつかったような音に聞こえる。




 『ガサッガサガサッ』




 え?大丈夫?




 なんかすごい高頻度でガサッていう音が来るんだけど?


 ぶつかるにしてもこの頻度はおかしい。




 ほんとに何してんだ?


 わけわからん……


 ま、まあ、きっと、ね?


 風とかでそう聞こえただけかもしれないし、多分大丈夫だよ。きっと。




 『バキッ』




 今度はなにかが折れたような音。


 まじで何?




 ここまで来たらもう確実に自然現象じゃないですよね。


 現実逃避してすいません。




 『―――いだ!お前何やっ―――』




 最初と最後の方は聞き取れなかったけど、男の人の声でなにか言ってるのは聞こえた。


 もしかして、犯罪に巻き込まれてる?


 それか、虐待か。




 まあ、どっちにしても犯罪なんだけどさ?




 それにしても――女の子の声が聞こえない。


 少しは抵抗したりするはずなのに。


 それに、声が聞こえないことは良いとしても、逃げたりしようとしている様子もない。




 さすがにおかしい。


 まるで、それを彼女がなんとも思っていないようじゃないか。




 まあ、明日にはここに来るだろうしその時にいろいろと聞きますか。




 少し疑問と不安を抱いて今日は終わった。












 次の日、朝起きると女の子が家の前で待っていた。


 謝罪するといま来たところだからと言われた。




 そんな定型文を使ってくるとは……お主猛者だな。




 そして家に上げて、質問を始めた。




 「えっと、お名前は?」


 「はい瑠衣野るいの 咲さくです。」


 「年齢は?」


 「17歳です。」


 「あ、私と同い年だ。」


 「あ、そうなんですね。そんな偶然もあるんですね。」




 そんな感じで色々と質問していった。


 そしたら私と結構考え方とか趣味とかが似ていることがわかった。


 え?そんな情報いらない?


 すいません…… 




 あと、多分瑠衣野さんは能力者側の人間じゃない。


 理由は、――まあ、感かな?


 だって、感でしか判断する材料ないし……




 まあ、唯一判断材料があったとするなら能力者っていう単語を意欲的に出してきたことかな。


 普通なら、自分が能力者だって知られたくないんだったらあんまり能力者っていう単語を使わないでしょ。




 まあ、それも全て相手側の戦略っていう可能性もあるけどそんなこと言ってたらきりがないし、それに私の感って結構当たるんだよね。


 だから今回は私を信じる。




 ついでに瑠衣野さんの体の特徴を紹介をしておこう。




 身長 160センチくらい


 髪色 青よりの黒


 髪型 ロング


 顔  美女


 体型 細身




 こんなかんじかな?


 一応使えるかなと思って観察しておいたけどいらなそう。 




 で、質問も終わりに差し掛かったところでこの質問をした。




 「瑠衣野さんってさ、虐待されたりしているの?」


 「え?」




 瑠衣野さんの動きが急に止まった。


 さっきまでリラックスしていたような表情だった顔はその表情で固定して、ロボットみたくなっている。




 「なんでそんな事言うんです?言っている意味がよくわからないのですが……」


 「いや、どこか私に怯えているように感じて、もしかしたらと思ったんですよ。」




 もちろんそんなことは嘘だけど虐待されていることは間違いなさそうだ。




 「だから気にしないで下さい。別に知られたくないのであれば言わなくてもいいです。ただ、これから一緒に仕事をするわけですからこういう取っ掛かりはなくしたほうがいいと思いまして。」


 「はい。ありがとうございます。……また、言えるようになったら詳しく話します。でも、それまは……」


 「はい。気長に待ってます。」




 これにて、初の対談は終わった。


 まあ、よくやったほうだと思う。


 さすが私。


 

 それから毎日瑠衣野さんは私の家に来て作戦を一緒に練ってくれた。


 その結果、瑠衣野さんが天才レベルの頭脳を持っていることが発覚した。




 本人にそれを言うと、


 「学校の勉強は全然できないんですけど、こういうことなら得意なんです。でも、ずっと一人で考えてても思考が凝り固まっちゃいますからね。一緒に私達のために頑張りましょう。」


 って言われた。




 え?何?


 顔もスタイルも完璧で性格も良いって私の存在意義が……

 悲しくなってきた。




 まあ、私の性格は良くはないから瑠衣野さんが良くても最初から関係ないんだけどな!


 あれ?なんか涙が?


 なんでだろ?




 もう今日は寝よう。


 うん。それが良いよ。




 そう思って膝にかけていた布団を肩まで持ってきてそのまま目を閉じた。


 おやすみなさい。

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