02.実験

うーーん、って言ってもなー。

 能力者に私が勝てる要素がない。


 別に私って頭が良いわけでも、特別運動ができるわけでもないから、そもそも一般人にも勝てないのに更にチート能力を持った人たちに勝てるわけないんだよ。


 どうしたものか……


 考えてみたら、これからさらに能力者が暴走して非能力者を絶滅させるみたいなことをする可能性もあるし……


 何かをしないと死ぬのに何も出来ないっていう状況になるかもだからまじで詰んでる。


 まあ、考えた結果私が何やっても意味ないってわかったからやっぱよくわかんないことは偉い人に任せて私は自由気ままに遊んでますかね。

 ちょっと外に出ますか。


 


 

 外に出ると小さい子どもたちが空き地でメンコみたいなのをやっていた。

 多分父親とかから教えてもらったんだろう。

 なんか、昭和にタイムスリップした気分だわ。

 でも、あながち間違いじゃないのかも。

 今遊べるゲームって、オフラインでできるファミコンとかしかないし、非能力者が住んでいる区画ってビルとかもなにもないし、家もそこらの金属で作ったような粗末な家だし昭和っぽい空気感なんだよな。


 まあ、昭和みたいって行っても暇なんだよなー。

 なに?昭和ってこんなに暇だったの?

 だとしたら昭和に生まれた人ってすごいな。   

 こんなになにもない状況で生きてたんでしょ?

 普通に尊敬するわ。


 まあ、そんなこと言っていてもしょうがないしファミコンでもやりますか。 


 なぜか、転移したときにこのファミコンを貰った。

 幸い私が住んでるこの家にはテレビはある(放送はされていない)からできるんだよね。

 3色ケーブルしっかり対応してるし。

 でも、対応してるってことは地デジ入らないんだけどね……

 ま、まあソフトもいっぱい貰ったし、これでしばらくは暇を潰せるぞーー!


 「グーー」


 バタッ

 お腹が空いた。

 そういえば、2日近くご飯を食べてないんだった……

 ご飯ってどうすればいいの?


 配給は……

 あるのかもしれないけど何処でやっているのかわからない。

 この家の中に食料ってあるの?


 ていうか、ないと困る。

 このままじゃ餓死する。


 色々と家の中を探ってみると一斤の食パンがあった。

 それを私は貪るように食べた。


 ふーお腹いっぱい。

 多分能力者の人が置いていってくれたんだろうけどまじで有り難かった。

 天使ですか?天使なんですか?


 ――よくこんなに私食べれたな。

 私、少食なはずなんだけど……


 

 まあいっか。

 そんな事考えてても仕方ない。 

 切り替えていこう。

 別に私太ってるわけじゃないしね。

 ……え?太ってないよね? 

 あとで確認しとこ。



 そんなことを考えていたときだった。

 突然とても大きな音が聞こえた。



 え? 何? 

 あのときの音に似てるけど……


 

 そう思っていた。

 後から考えてみるといくらなんでも悠長すぎると思うがその時の私にはまさか能力者が非能力者区画を核実験に使うなんてことが起きるなんて考えられるはずもなかった。 



 その音から一日後、朝刊のようなものが届いた。

 内容は、能力者が複数人の能力を組み合わせて核実験をしたことだった。

 そして、被害は1万人が被災したらしい。

 そのうち数千人はなくなったそうだ。


 起こるかもしれないとは思ったけど能力が発現して一週間がたたないうちにこんなことが起こるなんて思わなかった。

 能力を持った人間にこんなに行動力があるとは思わなかった。


 それにしても偉い人は何やってんだ。 

 緊急事態だぞ!


 ……いや、何も出来ないのか。

 わたしと同じでどんなに偉い人でも何も出来なかったんだ。


 今はまだ千人ですんでるけど、広島の原爆で31万人がなくなったことを考えるとこれから能力者のレベルが上がれば31万人どころではすまないだろう。


 それにいくらこの事件での死亡者が広島の原爆より少ないからって千人は充分多い。

 地震とかで一人なくなっただけで全国ニュースになるのにそれの千倍だからね?

 普通に多い。


 このままでは実験っていう名目で非能力者が根絶させられる。


 何もしないと根絶するんだったら私は行動する。

 偉い人も誰も動けないんだったら私が動く。

 生きるために! 生かすために!


 私達の命は私が守る。

 そう、私は決意した。



 


 本気で1日考えてみた。

 色々と効果的な案は思い浮かんだ。

 でも、そんなことを考えていくうちにある疑問が浮かんだ。 


 なんで能力者たちはみんなこれほどまでに戦争に乗り気なのか。


 考えてみたらおかしい。

 いくら最強の能力者が複数いても、人を殺すことを反対する人は大量にいるはずだ。

 そういう人が手を合わせればどんなに少なくても勝てるかどうかくらいにはなれるはずなのに。

 それに別に強い能力を持っている人の中にも人を殺すことに反対な人はいるだろう。


 なのにそういう人たちが反乱したっていう情報も聞かないし、もしそんな反乱している人がいるのなら、こんなに早く核実験が行われるはずがない。


 そこで私はこう考えた。


 能力者になった人たちは何も今のこの状況を知らないのではないか、と。


 いくらなんでもこれくらいしかもう考えられない。


 ……この可能性は高いと思っている。


 ていうか、これしか核実験に誰も反対しないという状況を作り上げられない。


 実際これは怖い。

 今も何も知らずに能力者たちが楽しく生きているのかと思うと、苛ついてしまう。

 能力者は悪くない。

 悪いのはこんなことを実行した人たちなはずなのに、それがわかっていてもどうしても気持ちの整理がつかない。 


 わけは、核実験をされた場所が、私の友達の住んでるところだったからだ。

 ただそれだけの理由だったけど身近な人が被災したっていう事実が大事だった。

 幸いその娘は死ななかったけど、とても危なかったらしい。

 今もその娘は簡易的な病院で意識を失っている。


 そして私は決断した。

 能力者の鼻を折るのではなく、実行犯たちの余裕に満ち溢れている鼻をへし折ってやろう、と。


 そこまで考えて私は布団に入った。

 頭使いすぎて疲れちゃたんだよ!

 だからしょうがない。

 うん。

 ってことで、おやすみなさい。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る