第43話 一緒に逃げる私達
「イサベル…目を覚ましなさい。アルトゥールなんかに騙されてはダメよ!」
とバルバラお祖母様は言う。
「お祖母様!この方はニルス様です!アルトゥール様ではないのです!」
いくら若い頃が似てるからって…間違えないで欲しい。
「…イサベル…」
ニルス様は悲しそうな顔をした。
「少しは話を聞いたらどうじゃ?昔のことは悪かった!でも孫達は愛しおうておるんじゃ!真実の愛じゃよ?それを引き裂くなど」
「「お前が言うなっっ!!」」
とバルバラお祖母様とレオポルトお祖父様が怒鳴る。
「うぐうっっっ」
とアルトゥール様は言い、
「とにかく帰って!この書状に破棄のサインを送ります!後はそちらで処理を!」
と一方的に切り上げようとしている。
「嫌だ!俺は!!絶対にイサベルと婚約破棄はしない!!」
「まだ言うか!!」
パチンとレオポルトお祖父様が指を鳴らすと従者達が現れ
「イサベルをあの男から引き剥がし部屋に確保せよ!」
と命令され従者達が私達に向かってくる!
その時アルトゥール様が前に出て私達を庇う。
サラとハンさんも攻撃態勢を取り立ち向かう。アルトゥール様は従者達を投げ飛ばしながらニルス様に
「ニルスよ!!しばし身を隠せ!!この爺がこ奴らを説得するまでな!!さぁ!はよ行け!!」
と言うとニルス様は私の手を取り
「すみません!!お祖父様!!皆さん!……行こうイサベル!!」
とニルス様は私を抱えて走り出した。
「くっ!!捕まえろ!!孫が誘拐された!!」
とレオポルトお祖父様が叫びいくつかの雷撃魔法が放たれた。御者台のマルクさんは馬車から馬を放して
「ニルス様!これをお使いください!!」
「恩にきる!落ち着き先が決まったら連絡をする!」
「了解しました!!頑張って!!」
と応援され私はそのままニルス様と共に馬に乗り逃げた!!
お祖父様の邸の辺りから煙が上がっていたのが見えた。大丈夫かしら??
結局誤解が解けなかったし逃げてしまいどうしたらいいんだろう?
……ていうかこれって…
ん?
もしかして?
これってあの?駆け落ち!!!?
私はようやく気付いた。
私達は北へ向かって馬を走らせた為に一気に寒くなり雪が降ってきた。ようやく逃げ切り森の中の小屋を発見した。
木こりが臨時で使っているものだろう。
私達はそこに飛び込んだ。幸い馬小屋も近くにあって蓄えてた藁を発見して馬も休ませる事ができそうだ。
ごめんなさい、勝手に。
と思ったが小屋の中に入りとりあえず暖を取る事にする。魔法で火をつけて薪を入れる。
「はぁ……ニルス様…寒い」
「イサベル…直ぐに暖かくなるからな」
とニルス様が言い、服を脱ごうとしたので…
「え!?な、何?何で脱ごうとするんですか?」
と混乱する。
「は!?いや!別にやましい意味はない!雪に濡れて寒かったから…だな!」
どうやら乾かそうと思って脱いだが余計寒くなる。
小屋を見渡し簡易ベッドを見つけ埃っぽい毛布を見つけた。
「よしイサベルこれを使え!もっと火の側に!」
と毛布を渡し自分は寒そうに肩をさすった。
「……ニルス様一緒に使いましょう」
「……いいのか?」
「凍死したいなら…」
「それは困る…」
ととりあえず毛布に包まる。
ニルス様は冷えた私を後ろから抱きしめた。
心臓だけは熱い。
「こんなことになってすまない…。俺がもっとしっかりしていればなぁ…」
「ニルス様は悪くないです。そもそもお祖父様達の問題が拗れているだけで…後はもうカミラ姉様にお任せします」
「カミラ様もレオポルト様の方につきそうだがな…」
「お姉様は一度した約束は守ってくれる筈です!」
と言うとニルス様は
「そうかな?上手く行ってくれるのを祈るばかりだ。…で、イサベル…これからどうするんだ?」
「今は雪が止むのを待ちましょう。直ぐに追っ手も来られないはずですし…」
パチパチと暖炉の火が鳴る中少し眠くなってきた。
「少し眠った方がいいな。少し硬い床だが我慢してくれ」
と言うとニルス様は私をゆっくりと押し倒すと自分も横になる。後ろから抱きかかえたままなのでなんだか恥ずかしい。
ど、どうしよう。ドキドキして眠れないわ。
するとなんか頭の上からスースーと聞こえてきた!!
えっ!?
寝たの!?
ニルス様!狡いわ!こんな体勢で自分だけスヤスヤと!!
頑張ってモゾモゾと身体を反転させてみると確かに先に寝ていた。長い睫毛と金の髪が暖炉の火でキラキラしている。
うぐっ!!美しい!!
流石モテるだけある婚約者様。
私はニルス様の胸に頭を預けるとゆっくりと目蓋を閉じた。
*
朝になりなんか振動と
「ぎゃっ!!」
と言うニルス様の動揺の声と共に目覚めた。
「あ、おはようございます。ニルス様…」
と寝ぼけて挨拶するとニルス様は真っ赤になり
「おおお、おは…おはよう…おま、イサベル…何でそんな冷静だ!?何でこっち向きなんだよ!?」
「え?」
半目でキョトンとする。もぞっと毛布が動き冷気が入り
「ひえ、寒い!」
とまたニルス様にくっ付くとニルス様が
「ああっ!おまっ…くっ付くな!!いや、別にいいけどいや、良くない!!いや…別にああっ!」
と動揺しておろおろしていた。
私はようやく覚醒してバッと起き上がりバシと頰を叩き
「あ、おはようございます」
と冷静になった。ニルス様は真っ赤になり
「……おはよう…」
と2回目の挨拶をした。
するとそこへトントンと山小屋の戸を叩く音がしてビクリとした。
まさか!もう追っ手が!?
ニルス様と顔を合わせニルス様は剣を持ち扉の近くへと行き、私はテーブルの下へ潜り込んだ。
ニルス様は注意して扉を開け入ってくる人影に向け剣の塚で急所を狙いその人影が倒れた。
ドサリと音がし雪で真っ白になった顔面蒼白の女の人だった。でもよく見ると…黒い修道服を着た女でアクアマリンの髪は短くなっていた。白目で倒れているその人はアンナ先輩だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます