第41話 時計塔の中

私とニルス様、ヘルベルト様は時計塔の中へ侵入した。


「長そうな階段…」

上に続く螺旋階段を見てうんざりするヘルベルト様。


「とりあえず昇るしかないな」


「とりあえず昇るしかない…って言うけど…何もなかったら恨むからな!」

とヘルベルト様はブツブツ言いながらも昇り始めた。皆で数を数えながら昇る。周辺には大きな歯車がゴトゴトと動いている。


「辛くないか?」

とニルス様が途中で心配する。


「俺は辛い」


「お前じゃない!」

と言うニルス様は


「しんどくなったら言うんだぞ……おぶってやる」

と言われて優しさに目が眩む。明るい金髪が窓からの光でキラキラしていつもより素敵だと思った。


「はい…」

胸がしんどい。

ようやく100段登り終えて少し休む。

しかしそこで歯車の影から何か赤い無数の光が見えた。


「!!?」

ニルス様とヘルベルト様は剣を構える。


「おいおい、やっと休憩できると思ったのに!」

するとヒュンと赤い目の何かが素早く私の横を通り過ぎて行った!


そしてパラリとスカートの端が切れた!


「きゃあっ!!」

と切れたところから太腿が覗き


「イサベル!!」

とニルス様が前に立つ。


「ヒュー!いい脚!」

と口笛を吹くヘルベルト様に


「貴様…殺すぞ!」


「不敬罪だよニルス。ちょっと見えただけで」


「うるさい俺の婚約者の脚を見るな!お前は目を瞑り戦え!」


「無茶苦茶だよ!階段から落ちて死んじゃう!」

と言いながら素早く飛んでくる生き物と対峙する。


バサバサと羽の音が聞こえている。

ビュンビュンと素早い動きで襲いかかって来るので私は指輪の防御魔法を発動させた。

あまり長いことできなくて直ぐに解除されたけど一瞬それに当たった生き物がぶつかって下へ落ちた!


ヘルベルト様が素早くそれを拾い上げてみると…


「ピクシーだ!!こいつ…俺たちが透明化してても見えるらしい!新しい発見だな!」

と言う。私も驚く。確かに私達はまだ薬の効果で消えているが、このピクシーには見えている。一部の魔物には見える!?


ピクシーは闇妖精の一種である。長い爪や牙を持ち赤い目をして人を襲う。背中には羽が生え飛んでくる。


「どうやらピクシーがここを寝床にしてたみたいだな!!」

と剣で防ぐがニルス様の制服も避けてそこから血が滲む!


「ニルス様!…きゃっ!」

とピクシーが飛んできて制服がまた切れる。素早くて指輪の防御が追いつかない。


「…イサベル!指輪だ!」

とニルス様が言い、見るとピクシーの一匹がキルシュ家の家紋付きの指輪を頭に乗せていた。


「くっ!」

しかし防ぐので精一杯だ。


「ニルス!こうなったら焼き払うしかないか!俺が呪文を唱えてる間に援護しろ!」

とヘルベルト様が炎の魔法攻撃を発動させる為に呪文を唱え始める。

ニルス様は舌打ちし指輪の防御魔法と剣撃を繰り返し飛んでくる無数のピクシー達を相手に戦う。どんどん服が避け血が散る。

私も防いだりしたが早くて服が切り刻まれてしまう。

一匹のピクシーがガブリとニルス様に噛みつきニルス様がそいつを掴んでぶん投げた!


「くそ!まだか!」

ようやく準備が整い、ヘルベルト様は


「我に味方せよ!炎よ!フレイムアロー!」

と炎の無数の矢が飛び交い何匹かのピクシーに命中したがすり抜けたものは石の壁に突き刺さる。たまにコントロールが外れてこちらに飛んできたものをニルス様が剣で叩き返していく。


ピクシー達は火を見て逃げ出した。


「フレイムアロー!!」

とヘルベルト様はガンガンと魔法を放ちピクシーを燃やした。


指輪を持ったピクシーは上へと逃げて私とニルス様は追いかけた!


「待て!この!それを返せ!!」

と少し速度の落ちたピクシーに剣をブンブン振り回してついにピクシーの羽を斬り落とす。


「ぎゃっ!!」

とピクシーが階段に落ちてビクビクした!ニルス様が捕まえようとしたが制服の隙間へ潜り込みニルス様があちこち噛まれたのか悲鳴をあげる。


「うぎゃっ!痛っ!こ、こいつ!!」

バシバシと制服を叩きピクシーを追い出しピョコリと出てくると今度は私に飛びかかり服に入ってきた!!


「きゃあ!!」


「イサベル!!」

ピクシーが這い回りガブリとお腹を噛まれたりした!!


「痛いっ!」


「くそっ!!す、すまん許せ!」

とニルス様が私の服に手を突っ込みもぞもぞしてピクシーを追いかけ始めた!


「きゃっ!あっ!」

そんなところに!!いやあ!と身悶えたが何とかピクシーを捕獲し取り出した。もう私とニルス様はボロボロになった制服であったがようやく指輪をピクシーから奪い、ニルス様はそのままピクシーを剣で真っ二つにして消した。


下で戦っていたヘルベルト様もようやく片付いたらしく疲れて階段に座り込んでいた。


「はぁはぁ…イサベル…すまない…危険な目に合わせて…」

とボロボロになった上着を脱いで一応私を抱き上げ切れた脚にかけて見えなくする。


「ニルス様も怪我をしているのに!」


「大丈夫だ!かすり傷…いつの間にか透明化が切れているな…」


「あ、本当」

と身体が元に戻って見えている事に気付く。


「ともかくこれで指輪が戻ったか…」

と喜ぶニルス様。私も嬉しい。


「とりあえず医務室へ行く。手当てをしなければ」

とゾロゾロと私達は下へ降りて気絶してる警備の人の横を通り過ぎて医務室へ向かったのだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る