第40話 指輪の隠し場所
次の日からニルス様と透明薬を飲んでコソコソと探し始めた。
「まずは中庭の像を調べる。4体あるから一人一体で」
「なんで俺まで…」
と手伝ってくれたのはヘルベルト王子だった。唯一薬の存在を知る人だからと王子であろうと使えるものは使おうと言うニルス様の提案で引っ張ってこられたらしい。
「俺とイサベルが婚約破棄してもいいのか!?」
「別に俺のことじゃないけど…わかった、そんな睨むなよ。協力すれば良いんだろ?」
とヘルベルト様も参加してそれぞれ一体ずつ像を調べたり周辺の草を分けて探したがやはり何も出てこず、余った一体も調べてみたが他の像と変わった所は見つからなかった。
「やっぱりこの像関係無いんじゃないか?いくら探したって何も出てこないよ」
とヘルベルト様は早くも根をあげた。
「……ありがちだが、像の視線の先を見てみろ。
勝利の女神ニカ像は顔が正面を向いているな…。勤勉な女神リーチェ像は視線は手に持った本に…。
友愛の女神シルファ像はやや斜め上を見て校舎を見上げている。
食の女神イルク像は厨房のある左側に顔を傾けている」
「全然バラバラじゃないか?やはり無理だ」
「……確かに…午前中はダメだな。そろそろ薬の効果も切れるから…次はランチの後に探そう」
「また俺も手伝うのか?王子なのにきつ」
「………」
「睨むなよわかったから!」
とヘルベルト様は言い、午前の終了の鐘がなると私達の身体は元に戻り、とりあえずランチを食べる。皆で草の上に敷物を敷いてランチを持ち寄り食べた。ニルス様は何かないかと調べながら本のページをめくっている。
「ニルス様…少しは食べないと」
と切り分けたお肉をフォークに刺して持っていくとヘルベルト様がニヤニヤして
「あ、いいなぁ!イサベルちゃんのあーんだ!」
と言ったのでバサっと本が落ちてニルス様が赤くなる。それから私の手を取りパクリと口にお肉を入れた。
もぐもぐしてゴクンと飲み込むと
「美味い…」
と碧の目で見つめられた。
こっちも照れる。
「ちょっと…イチャイチャしださないでくれよ?これからまた探すんだから」
とヘルベルト様が言うとニルス様は
「お前じゃないんだからな」
と言う。昨日の夜はキスをしてきた癖に。
「創立者メンバーの歳を全員分合わすと270だ。友愛の女神が向いている校舎の方は大ホールに繋がる階段がある」
「わかった!その階段の数を数えるんだね?」
とヘルベルト様がパッと思いつく。
「残念ながらホールにつながる階段がそんなにあるわけなけないだろう?見たらわかるだろう?」
「う…そうだな…わかってた」
「嘘つけ…生徒会をいつもサボっているから計算もできなくなったんだな?」
私は
「では大ホールの階段の数を数えて270と足したり引いたりしてみてはどこかに合う階段があるかもしれません」
「……」
ニルス様は驚いたように私を見て頭を撫でてきた。
「ヘルベルトより役に立つなイサベル!生徒会に入るか?いや、ダメだ。あんな男だらけの空間にはダメだ!」
と首を降った。
「ニルス様が卒業まではお手伝いしてもいいですよ。どの道ニルス様と一緒に帰りたいので」
と言うとニルス様は喜び周囲が明るくなったようだ。
「いやだからイチャイチャすんなよ?」
「お前にだけは言われたくないな!」
と言い、お昼を食べると大ホールの方へ移動して階段の数を正確に数え始めた。
「はぁはぁ、3回数えたけど100段だね!」
「…足して370…引いて170か」
「…ニルス様…確か階段が多い場所は…鐘を鳴らす時計塔の中の階段はとうですか?」
と言うとあっと言う顔になりヘルベルト様はあつかましく
「俺も思っていたんだ!」
と言い、呆れつつも時計塔へと向かった。
「見張りの警備の者がいる…」
「当たり前だ放置する訳にいかないだろう?」
と言い、透明になり警備の人をとりあえず気絶させて鍵を奪い、古い時計塔の入り口を開けて中へと入った。
*
その頃…遠い遠い地方の異常に戒律の厳しいラグナ修道院では騒ぎになっていた。
「院長!大変です!アンナが…逃亡しました!!部屋の鍵が壊れていて…」
「なんですって!?」
メガネをかけた中年の茶髪の修道院院長は鞭を持ち扉を開けた。そして修道女の若い女に掴みかかり
「貴方が見回りでしたね?サージャ!!」
サージャと言われたそばかすだらけの赤毛の修道女はビクリと身体を震わせた。
「ももも、申し訳ございません!!院長!!」
「…絶対に捕まえるのよ?まだ遠くには逃げていない筈よ?」
と憎々しげに唇を噛み鞭をビシっと床に打ち付けたのだった。
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