第39話 図書室の手掛かり
ニルス様と暗い廊下を手を繋いで歩く。
大きくてあったかい手が暗闇の恐怖を少し緩和させてくれた。
不謹慎だけどドキドキする。
図書室に着いたら手を離さなきゃいけないのね。
と思ってると図書室に着く。
静かに扉を開き中に入る私達。図書室の柱の一つにラーデマッハ学園の学園内地図が貼ってある。
「やはり普段人気のない場所に隠すよな?イサベルはどう思う?カミラ様の性格をよく知っているから意見を聞きたい」
「…そうですね。普通なら人気の無い場所に隠すと思います。…でもお姉様はあんまり普通じゃ無いのでもしかしたら変わった所に隠すのかもしれません…。旅に出たのも冒険者やトレジャーハンターに憧れてですもの…何かお宝がありそうな場所?へ隠すのかと」
と言うとニルス様は
「ふむ…確かに。この学園内で宝がありそうな場所を見つけて行くか。幸い図書室だから調べ物も出来るだろう。この学園の設計者の本をとりあえず探して持ってこよう。…イサベルはここにいて待っているか?」
と言うので私は
「ええ!?く、暗い中一人でっ!!?…あ、あの…もし良かったら一緒に…」
無理である!私も流石に夜の学園の図書室で暗い中待ってるなんて無理である!後ろからバケモノに襲われたり何処かに引きずり込まれたりしたらどうしようと頭の中で想像しては震える。
「……うん…で、では一緒に探そう」
「はい!!ありがとうございます!」
ホッとしてそう言うとニルス様は
「くっ…」
と小さく呻いた。
そのまま私達は本を探しに本棚の列の隙間を灯りで照らして探す。やはり怖くてついニルス様の服を掴んでしまう。
「……この列のどこかにあると思う」
とニルス様は必死に探した。すると一冊の本を手に取り…
「ん、これかな?」
と言う。流石ニルス様!もう見つけたの?
「ライラック・ヒューストン著…ラーデマッハ学園の設計に携わる」
と本のタイトルを読み上げる。中をパラパラとめくり
「学園の庭園には幼い頃私の好きだった薔薇を植え生徒を楽しませるように。庭園の四隅には女神像を設置する。
勝利の女神ニカ様・勤勉な女神リーチェ様・友愛の女神シルファ様・食の女神イルク様」
中庭に女神像…確かにあるけど特に皆気にしたことないと思う。その辺りは草も少しあり虫がいそうでじっくり見るものはいない。
「ふむ、何かの手掛かりになるかもしれないし、この本は借りていくか」
「そうですね。他には何かあるでしょうか?」
「うん…この学園の歴史…創立に携わった者などの本を探そう」
とニルス様がまた違う列の本棚へとランプを向け歩き出すが私は何かにつまづき本がバサバサ落ちて驚き
「きゃあ!!」
と悲鳴を上げた。そしてつい反動でニルス様に飛びついた。
「……大丈夫か!?本が落ちただけだ。あと床に仕舞い忘れたバケツが置いてある。これにつまづいたか。…全く備品はきちんと元の場所に返せと図書管理人に言っておかねば……」
とブツブツ言うニルス様だが私はしがみついたままだ。
「………大丈夫だから」
とニルス様が優しく抱きしめる。ニルス様の匂いかする。
「ご、ごめんなさい…お驚いてただのバケツや本が落ちたくらいで……震えて…ご迷惑を…」
と言うとニルス様は
「…べ、別に迷惑では…怖ければいつでも……くっ付いていい…イサベルが安心するまで…こうしてる…」
と抱きしめる力が少しだけ強くなった。途端にドキドキしてきた。そう言えば暗闇で二人きりなどなったことがない。
「ニルス様……」
「イサベル……」
今は本を探さないとなのに…ああ、図書室でイチャつくアンナ先輩の気持ちがなんとなくわかりかけた。いや、あそこまで激しくイチャついてはいけないと思うけど。
額にソッとキスされ、ニルス様は
「もう平気か?」
と聞く。優しい。
「はい…本を探しましょう…」
「ああ…」
と離れようとした時に頰を触られて…上を向くとニルス様にキスされた。
「んっ…」
ドキドキが怖いのか嬉しいのかわからなくなったけど…いつもより長い時間唇に触れていたような気がした。
す……と離すとニルス様は
「す、すまん…ええと…今度こそ本を探そう…」
としどろもどろに言いとりあえず目的の本を探すまで手を離さなかった。なんだか怖さが無くなり今は嬉しくて堪らなかった。
目的の本を何冊か運び、丁寧に貸し出し図書として記入を済ませた。
「明日から捜索に入るか。もう月が真上に来るから帰らないとな。ハン達と合流しよう」
「はい!」
と私はニルス様が本を持っているので手は繋げないけど代わりに私は一冊持ち片手でニルス様の服を掴んだまま歩き始めた。
合流場所に着くとサラ達が待っていた。ハンさんとサラは手を繋いで照れあっていた。
「お嬢様!!何か見つかりました?こちらはやはり何も…申し訳ありません」
「いやあ!暗いですからね!やはり昼間探さないと!」
とハンさんが言う。
「まぁいろいろと目星は付けてみたから明日は俺は授業を欠席し探すことにする」
と言うニルス様。あまり時間がないのだ。
「では私も一緒に!」
と言うと
「……わかった…」
とニルス様は言い、コソッと耳打ちした。
「例の薬を持ってこよう。人に見られると厄介だしな」
と言う。確かに授業をさぼり探しているなんて先生たちにバレたらまずい。
私はうなづくと馬車に乗り込み帰宅する事にした。ニルス様はちゃんと送ってくれてまた明日と頰にキスされ帰っていく。
サラもどこかボオッとしておりハンさんと仲が良くなったのかな?と思った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます