第36話 試される婚約者
温泉地から帰宅後…中々ニルス様は私に会いづらく公爵家に呼んでくれなかった。
たぶん混浴のせいだなと思った。いや、消えてたし見えてないので私的には平気だけどあのニルス様だ。たぶん気にしてそう。いくら透明で見えなくとも男女が結婚前に混浴とか許せないと自分を責めているのかもしれない。
ため息をついているとサラが
「お嬢様!!カミラ様が!!戻られましたわ!!」
と言う!
「えっ!?お姉様が!?」
と最後に出かけていったのはいつだったかなと数える。
すると美しい私と似た銀髪美女が黒髪銀目のひょろりとした男の人と部屋に入ってきた。お姉様の婚約者のキース・ガーランドさんだ!
もう結婚間近とこの前手紙で聞いていたのだ。
「ただいま!!イサベル!可愛い私の妹!元気だった?」
と抱きしめられる。
「はい!お姉様もお元気そうで何よりですわ」
と言うと
「ああ!私のイサベルが可愛い!!」
とすりすりされた。
「カミラ様…イサベル様が困っていますよ」
とキースさんが更に困ったような顔をした。キースさんはとても温和で優しい性格であった。
「まぁ、キースったら…大丈夫、キースも抱きしめてあげるわ」
とカミラ姉様は代わりにキースさんを抱きしめ始めるとみるみると赤くなって言った。微笑ましい。
「まぁ!キースも可愛いわ!どうしましょう!可愛いものがたくさん!!」
「お嬢様のお部屋でイチャつかないでください?カミラ様」
とサラが言うと
「あらサラも久しぶりね!貴方にもお土産を持ってきたわ!」
と鞄をゴソゴソさせ出てきたのはなんと鞭だった。
「サラなら使いこなせる!」
とうなづくカミラ姉様にサラは
「私変な趣味はありませんけどね…」
とガクリとした。
姉様は私には珍しい幻の蜘蛛の魔物から採れた糸で作ったリボンを頂いた。
「マランチュランの糸は高級素材としてとても高い値がつくのよ。生息地も限られてるから偶然洞窟に入って見つけてラッキーだったわ!」
「僕は蜘蛛なんて恐ろしくて最初は悲鳴をあげたんですが、こんな小さい蜘蛛に怯えてと蜘蛛を平気で摘んで瓶に入れて持ち帰るんですから」
とキース様はブルリと震えた。
「それより…イサベル…婚約者の方と学園でついに会ったそうね?仲はどうなの?」
と聞かれた。
「えっ?…あのまぁ…最初は嫌な人でしたがだんだんと打ち解けて今はとても良好な関係ですからお姉様が心配するようなことはございませんよ?」
と言うとカミラ姉様は腕を組み
「…そうねぇ、私も帰ってきたし次期女侯爵として挨拶をしなくてはならわないわね!可愛い妹を泣かせる奴だったら許さないし、どのくらいの力量なのかも調べたいわ?…まさか私より弱いなんて男じゃないでしょうね?」
「お、お姉様?まさかニルス様に勝負でもなさる気?相手は次期公爵となられる方ですよ?」
と慌てるとお姉様は
「だから?可愛い妹の為にいざと言う時に守れない男なんて願いさげよ!」
とお姉様が言う。それを聞きキースさんは
「えと、あの…僕はカミラ様に守られてばかりなのですが?これはいいのですか?」
と汗をかく。
「キースは別格よ!私がいないとダメだから私が守る役なの!でも見て?こんなにか弱いイサベルは直ぐに目を離したら悪漢にやられたり誘拐されたりされるじゃない?
だから私より弱い男は公爵令息だろうが関係ないわ!直ぐにその婚約者を呼ぶべきよ!」
ええ?普通ならこちらが赴くべきではないのですか?お姉様!!
しかしうちのお姉様には爵位がどうとかはもうかんけいなかった。仕方なく私は次の日学園でニルス様に事情を説明した。
*
「え?帰ってきたのか?俺に会い…し、勝負がしたいと??」
「はい…ごめんなさい。お姉様ったら言い出したら聞かなくて!…そ、その…ニルス様がお姉様に勝たないと…認めないと…」
「認めないも何ももう婚約してるだろ俺達は。そ、それにあのクリストフ王子ならいざ知らずイサベルのお姉さんだろ?女性に手を挙げるなど…」
と言うが
「う、うちの姉は常識があまり通用しないのです!昔から勝手に一人で家を出て各地を旅して傭兵並みに強くなってしまっているのです…。旅先で魔物に襲われそうになっていたキースさんを助けて婚約までしたんです!お姉様からの申し出でキースさんも断れなくて!!そう言う方なのですわ」
と言うとニルス様は
「成る程…俺は試されているんだな?…うーむ、どうにか勝たなくてはいけないのか…」
「透明薬を使って…」
「ズルはしない!なんとか認めてもらおう…」
とニルス様は決意したようだ。
「で、でも負けたら…」
と心配する。
「おい、お前俺を舐めてるだろ?ていうか弱いと決めつけて!俺のことが信じられないのか!?」
「うう、で、でもぉ…」
負けるんじゃないかな?って思ってしまう。お姉様は…家に帰るたびに護衛達と剣を交えて全員のしてしまったもの。
華麗なる剣技で美しく強いカミラ姉様はたまに社交界に出たことがあったが告白してきた男達をバサリと振り、恨みをもった男に狙われた時もあっさりと急所をつき、皆逃げ出してしまった。
「どんな勝負でも俺は勝つ!」
とニルス様は意気込んでいたが…。
放課後に挨拶に行くとカミラ姉様が物陰に隠れており不意打ちで背後からゴスっと急所を突かれてあっさりとニルス様は白目で倒れてしまった。
「はい!私の勝ちー!!弱ー!何こいつ情けないわねー!?家に刺客がいたら死んでるわよ?警戒心すらないの?いやね?これだから公爵家の御坊ちゃまはダメなのよ。ねぇ、護衛さん?」
とハンさんに向けて笑った。
「あ、や…これは!まさか…イサベル様のお姉様がいきなり背後から攻撃してくるとは思わず!」
と驚いていた。
「まさかなんてこの世にはたくさんあるのよ!この軟弱御坊ちゃまをとりあえず客間に寝かせておきなさい!」
とお姉様が従者に指示してニルス様は客間に運ばれた。キースさんか困ったように
「あーあ…公爵令息を襲撃なんて…カミラ様やりすぎですよ!」
と言うとカミラ姉様は
「あらあ?だってええ…油断大敵よね」
と勝ち誇ったようにように言うカミラ姉様は続いてとんでもないことを言う。
「イサベル…貴方にはもっとふさわしい相手がいると思うわ!お姉ちゃんが選んであげるわ!あの男はダメよ。きっと浮気をしてイサベルを泣かせるわ」
「そんなことではありませんわ」
と言うと
「イサベル…私は旅の途中…手紙で実家の様子やイサベルのことなどを報告を受けていたわ。入学式で貴方…大勢の前で婚約破棄予定だと罵られて、吐いてひどい扱いを受けたようね!
私の可愛い妹をよくも!許さない!絶対に婚約破棄よ!」
「お姉様!その件は誤解で…」
「いいえ!とにかく彼との結婚は認めないわ!」
とお姉様は強く言う。何かおかしいな?何でこんなに反対するのだろう?お姉様はいつも私の味方で可愛かがってくれたのに…。
「とにかく!婚約破棄よ!!いいわね?」
と言われ泣きそうになる。
「お、お姉様のバカ!!うっ!ううっ!」
と私は客間に走った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます