第37話 婚約者の根性

客間に入るとニルス様はカミラお姉様に頭を強打された為ベッドに寝ていた。


眉間に皺が寄り若干のうなされ。


「うう…」


「ニルス様!?大丈夫ですかっ!?」

と近寄る。

護衛のハンさんは


「まぁ死んでないから時期に目を覚ますでしょう。打ち所悪くて記憶喪失とかは勘弁して欲しいですけど」


「そんな…冗談でも嫌です」


「すみません」

と謝るハンさん。

するとニルス様は目を開ける。キョロキョロ辺りを見回し…まさか本当に打ち所悪くて記憶喪失に!?と心配したが


「イサベル…ここは」


「客間です。お姉様が大変失礼しました」


「!?俺…何で倒れてるんだ!?」

と尋ねられハンさんが


「ニルス様は隠れてたカミラ様に後ろからガツンと殴られて気絶させられてここに運び込まれたのです」

と言うと


「ええっ!?いや、何でいきなりお姉様が俺を殴るんだ!?訳がわからんのだが!!?」

当然です。うちの姉がおかしいのです。


「じ、実はお姉様が…完全なる不意打ちで背後からニルス様を襲撃したのです…。それで勝ったと思っております。卑怯な手を使い誠に申し訳ありません!」

と謝罪する。


「……何故イサベルが謝る?…俺ももっと周りを警戒すべきだったな…」

するとハンさんは


「カミラ様はどうやらニルス様がイサベル様が入学時に貴方に罵られたり結果人前で吐いたりされた事に大変お怒りでして…婚約破棄を勧めておりますよ」


「な、何っ!?いや過去の過ちとは言えあの時は俺も素直でなくいろいろと拗れていたから…」


「まぁ、大勢の前でやらかしちゃいましたからカミラ様の元にも情報が届いたのでしょうね」


「くっ!…きちんと謝罪をしてお姉様に改めてご挨拶を…」

とニルス様が言うとカミラお姉様が部屋に入ってきた。


「ご機嫌よう!ニルス様!うちの妹がお世話になっておりますわ!」

と美しい私に少し似たカミラお姉様が睨みを利かせる。キース様は後ろでおろおろしている。


「お姉様…あの…俺は大変に失礼なことをして今はとても反省しておりますしイサベルさんのことも大切に思っ……」


「いいえ、謝罪は受け付けないわ!貴方様との婚約は破棄させていただけないかしら?イサベルには別のお相手を私が選びますわ!」

と言う。


「そんな!お願いします!何でもしますから婚約解消だけは…」


「私の不意打ちにも気づかずにあっさり伸びてしまあような弱い方に大事な妹は任せられませんわ!」


「そ、それは…情け無く申し訳ないですが…」


「こんな可愛いイサベルを泣かせたり守れなかったり口だけの貴方に任せられません!!私の怒りは治りませんわ!」


「貴方のお祖父様とお話しがありますわ。とにかく婚約を破棄する話し合いをさせていただきますわ」

とお姉様が聞く耳を持たない。私は


「お姉様!辞めてください!私もニルス様と婚約を破棄する気ありません!私は確かに最初こそ辱めに遭いましたが…いろいろあってそれは全部ニルス様の照れ隠しで誤解だと和解致しました!


い、今は私もニルス様のことが…好きなのです!!お願いですお姉様許してください!」

と言うと


「可哀想に…イサベル。顔に騙されているだけよ。こんなの顔しか取り柄ないじゃない!?」


「ぐっ!」

痛いところを突かれるニルス様。


「そんなことないですわ!頭もいいですよ?生徒会に入っているし整理整頓も得意だし真面目で一途で優しい方です!」

と言うとお姉様は


「洗脳魔法でも使ったのかしら?」

と言う。


「使ってません!!」

と否定するニルス様。


「お姉様どうしてそんなに反対するのですか?」

と聞いてみるとお姉様は少し焦る。


「……そ、それは…別に私だけの意見じゃあないわ!元々子供の頃からの契約みたいなものを無理矢理そちらの前公爵様が…アルトゥール様が交わしたのでしょう?うちの両親がダメならその孫の代まで。


ニルス様…貴方は私と少し歳が離れているから知らなかったと思うけど最初こそ私にも貴方との婚約話は来ていたのよ?バルバラお祖母様に似てたら誰でもいいんだわ。あのアルトゥール様の近くに行ければ」


「えっ!?そんなこと聞いてませんでした!祖父も失礼なことを」


「まだ話は終わってないわ!とにかくアルトゥール様がしつこくてね、バルバラお祖母様とレオポルトお祖父様はいつも鬱陶しく思っていたわ。

シャーヴァン公爵家の血なんか入れてたまるかってね!


家格が上でなければ婚約は跳ね除けていたし、イサベルも引きこもり都合が良かったから今まで仮の婚約をしていただけで、イサベルが成人したら破棄しても良かったのよ?」


「そ、そんな…」


「とにかく…無理矢理させられた婚約なんてイサベルが可愛そうよ!お祖母様達も迷惑しているわ。もう子供時代は終わったの。イサベルを自由にしてあげてくださらない?」

と言う。

確かに私は縛られるのとか嫌いだけど…


「お姉様…どうして?ニルス様のこと何にも知らないくせに!私を何度も助けてくれたのに!アンナ先輩やクリストフ王子から私を守って助けてくれたんです!!」


「アンナって誰?クリストフ王子?隣国の?…まぁそれは後で調べるわ…とにかく…結婚には反対!」

と言うお姉様にキース様は震えて


「……カミラ様!!もう見てられないですよ!!あまりにも可哀想です!!お二人とも…イサベル様とニルス様はきっと心から信頼して愛し合ってるでしょう!?


見てわからないのですか?あんまりです!!もう辞めてください!僕が言います!」

と言うキース様に慌てるカミラお姉様。


「キース!辞めて!」


「……ごめんなさい…イサベル様ニルス様!カミラ様は旅で作った借金をバルバラ様に肩代わりしてもらう代わりに……このお二人の縁談を破談にしてくるようにカミラ様に命じたのです!それで相殺だと!」

とキース様の告白によりカミラお姉様は青ざめた。


「お姉様!?どう言うことですか??借金!?」


「うぐ!そ、それはその…いろいろとあって…」


「いや、いずれにしてもバルバラ様達は本当は俺とイサベルさんの結婚には反対しているんですね?」

とニルス様が確認する。

カミラお姉様は


「まぁ、そう言うことよ…。バルバラお祖母様達は今全力でイサベルの新しい婚約者を探しているの…。シャーヴァン公爵家と親戚になるなんて冗談じゃないと…公爵家の権力で今迄は破棄できなかったけど…成人すれば本人は自由だわ。


だから…」


「お姉様…先程も申した通り…私…ニルス様が好きなのです」


「ぐっ!」

とニルス様が赤くなる。


「ニルス様意外と結婚したくありません!他の方を紹介されても困ります!」


「でも私も困るの。そしたら借金が!!」


「では借金は俺が肩代わりするのはどうでしょうか?」

とニルス様が言うとカミラ姉様はグラついた。


「え?本当に?…いやいや、シャーヴァン家に騙されちゃダメよ…。……うーん、わかったわ…可愛い妹がそこまでニルス様を愛していると言うのなら、チャンスをあげましょう」


「チャンス!?」

とニルス様が言う。


「さっき貴方何でもすると言ったでしょ?それならラーデマッハ学園に隠しているお宝を探して持ってきたらバルバラお祖母様達の説得を手伝ってあげてもいいわよ?」

と言う。


「え?宝?」


「私が通っていた頃に隠した私の宝よ」


「どんなものなのですか?」


「……うちの家紋の入った指輪」

と言うから私はギョッとした。


「お姉様そんな大事なものを!?」


「当時は私は卒業したら侯爵家を継いで女侯爵になると決められてた。そんな運命が嫌でね、数年旅に出ていたの。指輪を隠してね。今、家にあるのはレプリカなのよ…」

と言う。


「そんな…」


「私もキースと結婚して後を継ぐために必要だけど、今更学園に入り込むのは難しいわ。とって来れたら許してあげる。でも場所は教えないわ。根性で探してみせなさいよね!」

とお姉様は言う。無理だわそんなの!

しかしニルス様は


「わかりました!俺もイサベルさんとの婚約を破棄されないよう絶対に根性で見つけてみせます!」

と言ったのだった。

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