第35話 透明混浴温泉

温泉地に到着した。

真夏なのでムワッと街から湯気が出ていて暑い。


「うう…この暑いのに更に暑い!普通は皆避暑に行くのにな」

早くもニルス様は腕をまくり暑さに参っている。


「ニルスよ…お前は軟弱じゃのぅ?これくらいで根をあげるとは!」


「お祖父様がおかしいんでしょ!」

とニルス様は暑さで苛つきながらも宿へと向かう。

すると宿内が魔法で涼しくされていた。

宿の主人は


「お客様!!お越しくださりありがとうございます!!」

と夏に訪れた私達を歓迎してくれた!

部屋に入る途中にニルス様に呼び止められた。

どうしたのか?


「……その…これを!」

と私の作った透明薬を何故か渡された!!


「ええ?何故これがここに!?」


「お祖父様がイサベルの入浴を覗く恐れがあるから入る前に飲んでおくんだ!!いいな!?」

となんか怖い顔で念押しされた!!


「え…覗き!?」


「しっ!あのジジイならやりそうだ!!頼むから飲んでおいてくれ!!」

と言われ私は渋々とうなづいた。


でもいつ入ろうかな。

宿の部屋に入り荷物をサラと置いて寛いだりして


「お嬢様、温泉に入りますか?どうせお客さんなんて私達以外いませんよ!貸し切りです!」

と言う。


「そ、そうね…」

と準備をして部屋を出るとニルス様とアルトゥール様がなんか廊下で争っていた!


「お祖父様!気を確かに!!ダメです!!」


「離せ!イサベルちゃんと混浴するんじゃ!!」


「ダメだと言ってるだろ!」

と必死でしがみつくニルス様と目が合い、アルトゥール様も気付く!


「おお!イサベルちゃん!一緒に!!」


「ハン!マルク!!お祖父様を止めろおおお!」

と三人がかりでアルトゥール様を抑えて


「今のうちに!!」

と皆必死だったからサラと急いで入ることにした。


「ヤバイですね!さっさと入りましょう!」


「うん…」

と私とサラは女湯へと急いだ。

誰もいなくて広くて泳げそうでサラもテンションが上がっていた。


「まぁ綺麗!景色もいいですね!!お嬢様お身体を洗い早く入りましょう!」

とささっと洗われて私とサラは旅の疲れを落とした。


なんか男湯の方でガタガタした!!

サラが


「あいつら!!…お嬢様!混浴の方へ移動してください!ここは危険です!混浴の方にも誰もいませんから!私は先に上がりあいつらに説教してきます!!」

と言うとサラは上がっていく。私は仕方ないなと思い、こっそり持ってきた透明薬を桶から取り出して飲んだ。身体は消えて見えなくなる。すると


「お祖父様あああ!覗きとかダメです!!」


「離せええええ!!ニルス!!」

と全力で止める男達と後ろからサラの声が聞こえていた。


私はのんびりする為に混浴の方へ移動した。こっちも誰もいないし私も透明だし誰にも見られないでたまには一人でゆっくりしようとお湯につかった。


「ふー、気持ちいい」

するとドタドタしてアルトゥール様達がこちらにやってくる!!


「ダメです!こちらはお嬢様が!!」

とサラの叫び声がしたが


「なんだおらんな?やはり女湯か!?」

とまた引き返していった。

サラは


「あら?お嬢様もう上がられたみたいね?私も戻ろう」

と行ってしまい…なんか疲れたニルス様が入れ替わりにこちらに入ってきた!!


きゃあーー!!


ニルス様は湯に浸かると岩場に身体を預けて


「うう…疲れた…イサベルが上がっててくれて助かった。だがあんなジジイと一緒に入るのはごめんだ…しばらくこっちでゆっくりするか…誰もいなくていい」

と目を瞑っていた。


ええと、ど、どうしよう!わ、私居るんですけど!消えてるけど!やだ!!恥ずかしい!いくら消えててもヤバイわ!!ニルス様完全に一人だと思い込んでいる!!

ていうか肌綺麗!!男の人なのに!!

気持ちよさそうに寛いでいるけどどうしよう!!とにかくソッと上がれば大丈夫!


とゆっくり動く。

しかし私はこういう時に限りドジを踏んだ!上がる時に空の薬瓶を湯の底に落としていたのに気付かずにそれを踏み転びそうになりバシャンと派手な音を立てて水しぶきがかかり人形に水滴が映りニルス様が目を見開いた!!


「え!?は!!!?………え…ええええええ!!!??」

とニルス様が絶叫し岩に反対になりしがみつき


「いい…居るのか!!?イサベルお前っ!!」

と言い、私は


「はぁ…薬を飲んでいるので…」

と白状すると


「そそそうか!サラがそんなことを言っていたけどもう上がったのかと!!す…すま…ぶふっ!」


「ニルス様!?どうしました!?」

なんか様子が変だ!!


するとなんか赤いものが見えた!!

ええ!?

まさか!?


「ニルス様!?鼻血ですか!?大丈夫ですか!?」


「らい丈夫だ!!!こっちに来るなよ!!いいな!来るなよ!!」


「え…でも!?」


「いいいからお前はさっさと上がれ!!早く!!ハン達も来るぞ!」

と言うから私は


「わかりました!お大事に!!」

と言い、私は急いで出る事にした!!


女湯へと戻り脱衣室へとささっと逃げると薬は切れた。


「ああ、ドキドキハラハラしたわ…」

もしもう少し長くいたらニルス様に裸を見られていたかも!婚約者だしお見せしてもいいかもしれないけど流石にまだ結婚前だし。

ニルス様鼻血大丈夫かしら?


と言うか温泉に入ったニルス様もカッコ良かった!濡れた髪を上げていつもより色気が!

と思ったら赤いものが床に落ち、


「あら?」

と思ったら私も鼻血を垂らしていた!!

ぎゃっ!

と思ってるとサラが入ってきて


「お嬢様!?こんなとこに!お部屋にいないからまさかと思い…ああ!?鼻血!?のぼせたのですか?」

と走り寄ってくる。


「うう、そ、そうみたい…」


「全く!大丈夫ですか?少し横になって休んでください!!」

と言われる。ごめんなさいサラ…。


その後夕食の席でニルス様と会った時はお互い顔が赤かったのであった。なんで消えてたのにニルス様は鼻血を?と思ったけど言わないでおいた。

なんとなく想像はつく。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る