第34話 都合のいい夢(ニルス)

お祖父様が真夏なのに温泉に行こうとか言い出した。ただでさえ暑いのにこのジイさんはどうかしてるのか!!?


しかしイサベルも行きたいと言うしこの昔の初恋を拗らせたジイさんと二人で旅なんかさせられるかっ!と思い参加した。


俺はお祖父様の若い頃に似ているらしい。一度昔のお祖父様の肖像画を見た時は確かに俺に結構似ていて…嘘だろ!どうしてこれがこんなムキムキ筋肉爺になるんだ!?

と目を疑った!

シンシアお祖母様との結婚の時の肖像画は成人した後はまだ筋肉はついてなかった。

しかしお父様が産まれた辺りからついてきている!

俺は自分の将来を見ているようでぞーとした。


俺は筋肉ダルマにはならん!!


イサベルはお祖父様の初恋のバルバラ様の孫に辺り、バルバラ様はイサベルのお祖父様のレオポルト様と結婚したらしい。

お祖父様の話だと…しつこくうちのお祖父様がバルバラ様に猛アピールし、付き纏った所をレオポルト様が助けてやりバルバラ様は見事にレオポルト様と仲良くなった。


レオポルト様は学生時代は孤独で一人教室の隅で本を読む大人しい性格だったそうだ。お祖父様は根暗な奴と連呼していたが、単に人と関わるのが苦手だったそうだ。

間違いなくイサベルのお祖父様だ。本が好きなのもイサベルと似ている。


お祖父様は舐めてかかりレオポルト様とバルバラ様をかけて勝負に出たようだがあっさり負けた!

お祖父様はショックで死のうと思い当時公爵家から家出をしてふらふらと危険な魔物の潜む森へと出かけて、お坊ちゃんだった為に直ぐに腹を空かせてぶっ倒れたらしい。


そこへ旅で通りかかった伯爵令嬢のシンシアお祖母様が拾い上げてシンシアお祖母様が別荘に連れて行き介抱してるうちにお祖母様の方が惚れてお祖父様に迫りとうとうお父様を身籠ると言う…


うちのお祖母様もなんか凄い。結局お祖父様はシンシアお祖母様と結婚し公爵家に戻ったがバルバラ様のことが何処かで忘れられず、とうとう息子とバルバラ様の子供の令嬢…イサベルのお母様とくっ付けようとしたが失敗してその孫となる俺とイサベルの婚約が子供の頃に交わされた。


姿絵しかよこさなかったバルバラお祖母様側も大きくなったら婚約を解消すればいいかと思っていたかもしれない。俺はそういう経緯を少し知ってたからそれもありイサベルは夜会にも出ないし会ってもくれないと思い込んで嫌われているのかと思ったけど違って良かった。ただの人嫌いの研究バカで良かった。


まぁ…透明薬という凄いものを発明してしまうくらいに凄いとは思ってなかったが…。

危険な目にも遭ったしイサベルに何かあったら大変だ。

結局俺は素直になる事にしてイサベルと上手くいきだしたので良かった。


だが、お祖父様はイサベルを昔のバルバラ様と重ねて時々ボオっと見ていることがありなんか…嫌だ。お祖父様の血を引いてる俺だけあり、好みが似ているんだ…。


ああ!嫌だ!

イサベルを守りたい。筋肉をつけるのは嫌だけど!


温泉地に向かう道中でキノコの魔物に幻影を見せられた。


霧が立ち込めイサベルが現れたのだ。


『ニルス様…』


「あれ?イサベル?どうした?こんな所に」

テントで寝ていたのでは?あれ、さっきの仔犬どこいった?見渡すがいない。

それに周りの奴らもいなくて…と思ってるとイサベルがいきなりなんと寝巻き服のボタンを一つ外しとても可愛い上目遣いでこちらを見ていた。


「イサベル…一体どうした?…え?な、何してんだ?や、辞めろ!!」

と赤くなる。み、見えそうで見えない!イサベルが手招きした。俺はフラフラとそちらに導かれた。ダメだ!しっかりしなくては!


まだ婚約したばかりだしそんないやらしい事をするわけにはいかない!ここは注意しないとと近寄るがイサベルが二つ目のボタンを外して


『ニルス様…好きです。私の全てを見てください…』

と言い俺は誘惑される。

白い胸が少し見え心臓が跳ねる。もはや目の毒である!いやいやなんでだ!?今まで俺なんか無視して研究に没頭していたのに!?


軽いキスを迫るのもいつも俺の方からなのに今日のイサベルは大胆すぎないか?なんかおかしくないか?しかしイサベルが迫る!


とうとうイサベルが柔らかい胸を俺に押し付け始めキスを求める。


「イサベル…そんな大胆なことをしては…ダメだ…まだ俺たち結婚前…ふあ」

ドキドキして半目になってトロンとしていたらいきなり頰に痛みが走り目の前のなんか艶っぽいイサベルが消えて泣きそうなイサベルが目の前にいた!ボタンもちゃんと止めてた!


「あれ?イサベル!!?さっきまで…あれ?…」

状況が変な事に気付き辺りを見渡しキノコの魔物を見つけた。


「な、何だあれは!?いつからいた!?」

え?じゃあさっきのイサベルってこいつが見せた幻ー!!?ガーンとなんかショックに思ってると周りの連中もなんかボヤンとして夢を見ているように赤い顔になりだらしなく鼻の下を伸ばしているではないか!


これは魔物の術だ!

俺はマルクとハンを蹴飛ばしてお祖父様の頭をゴンと殴り正気に戻させ魔物と戦った。

そんな都合のいい夢があるはずなく…畜生と思い戦った魔物は翌朝イサベルとサラの手により何故か俺が最初に口にするのを皆見守っている。

毒味は護衛のお前がやれ!ハン!

と思ったがイサベルが食べようとしたから腹を壊したら大変だと思い結局彼女のスプーンをパクリと食べた。


皮肉にも広がる味は最高に美味しかった。

これこそ幻影ではないかと思うくらいは美味しかった!!


イサベルと結婚したら毎朝これでもいいと思える。……チラッと自分の指に嵌った婚約指輪とイサベルの指に嵌る指輪を見る。


一体俺はいつイサベルと結婚できるのか。

朝食を済ませ温泉地へと向かった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る