第33話 シュリンギの幻影

どうやら男性達はシュリンギの傘から出す胞子でそれぞれ幻影を見ているらしい。


「イサベル…一体どうした?…え?な、何してんだ?や、辞めろ!!」

と突然ニルス様が真っ赤になり叫び出した!

一体何の幻影を見ているのか?

ハンさんとマルクさんはサラの幻影を見せられて


「サラさんそんな!大胆な!」

とか言ってるし!、サラは横で


「あの人達を刺して正気に戻してやりますか?」

とナイフを構える。


「どうしよう、とにかく皆を正気に戻さないとキノコの養分になっちゃうわ」

と私は青ざめる。


「イサベル様、あの魔物の倒し方とかわからないのですか?」


「確か塩をかけると縮むはず…」


「えっ!?ナメクジですか!?」


「でも切った方が早いからニルス様達を正気に戻さないと!サラは塩をかけてみて!私はニルス様達を何とか正気にさせないと!」


「わかりました!」

とサラと私は行動することにする。サラと私は口に布を巻き、胞子が入らないよう気を付けた。


サラは塩を持ちシュリンギの後ろに周りパッと塩をかける。


『にゅが!!』

とシュリンギが怯む隙に私はニルス様の元へ行く。


「ニルス様!ニルス様!しっかりして!」

とユサユサと揺らすとニルス様はボーッとして目が半目で


「イサベル…そんな大胆なことをしては…ダメだ…まだ俺たち結婚前…ふあ」

と変な幻覚に襲われている。他の者も同様でブツブツと言いながら半目だ。仕方ない。


私は覚悟をして思い切りニルス様の頰をバチーンと叩く。


するとパチリと目が全開になり、ニルス様がポカンとする。


「あれ?イサベル!!?さっきまで…あれ?…」

状況が変な事に気付き辺りを見渡しキノコの魔物を見つけたニルス様は


「な、何だあれは!?いつからいた!?」


「あれはシュリンギというキノコの魔物です!ニルス様達はあの胞子で幻影を見させられていたんです!他の人もまだかかってます!


幻影を見せ油断して養分になるところでしたよ!」

と言うと


「な、なんてことだ!!」

と言うとニルス様はハンさんとマルクさんを蹴り飛ばし、アルトゥール様の頭をゴンと叩く。

すると皆は夢から覚めたようになり


「え?あれ?サラさんは?」


「くっ、もう少しで下着が…」


「バルバラ?どこへ??」

と何か悔しがっていたがキノコの魔物にようやく気付いた。


サラは


「塩が無くなりました!!!」

と言い、走ってきた。魔物は半分くらいの大きさだが、怒りで


『ヴォアアアア』

と言いながら頭から胞子を大量に吹き出した。皆は布で鼻と口を塞ぎ剣を構えてシュリンギに挑んだ。


「畜生!あんないい夢見せてくれてありがとう!」

マルクさんが足に斬りかかりズシンとシュリンギの片足が地面に落ちる。


「だが、いい夢見て死ぬ所だった!」

とハンさんがもう片方の足を切り落とす。


「ちっ!よく考えたらイサベルがあんなこと積極的にするわけない!」

とニルス様が右手を斬り落とした。

…いや、どんなのを見せられていたのかしら?

なんか怖い。


アルトゥール様は怒り、


「おのれぇ!バルバラがワシの筋肉に埋もれて眠りたいなんて言うわけが無い!ぬか喜びさせおって!!このキノコがあああ!」

と強烈な拳を叩き込みシュリンギの中央の胸を貫き核を破壊した。

シュウシュウとシュリンギは動かなくなり死んだ。


「……はぁ。虚しい。寂しい夢じゃ…イサベルちゃん…この爺を慰めてくれんかの?」

とチラリと見られて困る。

ニルス様が前に出て


「お祖父様…もうとっくに夢は終わりました!」


「ちっ!わかっとるわい!…しかし…そうやってイサベルちゃんとニルスが並んでおると本当に若い頃のワシとバルバラのようでのう…。


あいつ…レオポルトさえ居らんかったらバルバラちゃんと結婚していたのにのぅ…」

と寂しそうにアルトゥール様はしょぼくれたがニルス様は


「お祖父様!それは仕方有りませんし、亡くなられたお祖母様にも失礼かと!!」

と睨む。


「年寄りを虐めるなニルスよ。筋肉絞めするぞ」


「…遠慮します」

と言い合う二人。

私は


「あの、このシュリンギは食材になるので細かく切っていただきたいんですが」

と言うと男達はギョッとした!


「ええ!?魔物ですよ!?イサベル様!?」

とマルクさんが言う。


「はい、でも図鑑には美味しいと書かれていていたので」


「それ…その図鑑を作ったやつの舌がどうかしてるとかじゃないだろうな?魔物だぞ?」

とニルス様も引くがサラは


「まぁ、お嬢様の知識なのでとやかく言わず少しだけでも料理してみましょうか?明日の朝食に」

と言うとハンさんが


「俺手伝います!!」

とシュリンギを切り分け始め、マルクさんもやれやれと手伝った。


朝になると私とサラは朝食の準備をした。


「お嬢様…塩が無いです。昨日使いきりました。こいつの身体に振りかけて…」


「なら丁度塩味ついてるんじゃない?」

しょうがないかと食材と共にシュリンギとヤギミルクのパン粥にして皆に振る舞ってみる。

皆昨日の魔物だと思うとジッとして動かない。


「ニルス…お前が先に食べなさい」

とアルトゥール様が言うとニルス様は


「えっ!?俺ですか!?何故だ!?こういうのは従者から食べるのでは無いか?」

と言う。


「では、私が先に」

と私がスプーンで救うとニルス様に止められ、それをそのままパクリとニルス様に食べられた!!


「あ、ニルス様、自分のを食べてくださいよ…」

と言うと


「お前が腹を壊したらどうする!!?」

と言われる。


「で?味は?異変は?」

とアルトゥール様達はニルス様を観察する。

いや、毒はないし美味しいとあったし…。


ニルス様はもぐもぐと飲み込んだ。そして…


「……美味いな…」

とボソリと言った。

ハンさんがギョッとした。


「うわぁ!!ニルス様が美味しいと言った!!余程美味しいのか!…ゴクリ」

とハンさんはシュリンギミルク粥を食べるとカッと目を見開き


「美味しい!!!!なんてことだ!!」

と言い、マルクさんとアルトゥール様も同様に食べては感嘆していた。

サラと私はクスクスと笑いながら私達も食事についた。物凄く美味しかった!



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