第18話 決闘前のおまじない

しかしその日からニルス様はさっさと帰るようになり生徒会の仕事はメンバーにちゃんと仕事をする様に押し付けたらしく珍しくメンバーが生徒会室に揃いヘルベルト様はアンナ先輩を膝に置き仕事をしていたらしい。

本当にアンナ先輩がこの国の王妃とかになったら嫌だなぁ…。


私の方は訓練もせず余裕のクリストフ王子が近寄ってきたがマリーが


「そこまでです!イサベル様の半径3メートル以内には入らないこと!!決闘前だしまだ彼女はニルス様のものです!」

え?マリー私は別に自由なんだけどね。縛られるのとか大嫌いだし。


「ちっ!取り巻きの癖に邪魔な!どうせ何しようが俺が勝つんだよ!そう決まってんの!未来でイサベルちゃんの膝枕で眠りたいよ!早く決闘の日にならないかなぁ!!ね!俺のイサベルちゃん!」

となんか背中がゾワッとする台詞を言う。普通の女の子なら喜ぶところを私は悪寒が走りまくってやはりこの人が婚約者とかになるのは無理だと感じた。


ニルス様には何がなんだって勝って貰わなきゃ困る!!


私はニルス様が帰るときに偶然見かけた。なんだか隠れてしまったけど靴箱から靴を取り出す時の手に包帯が巻かれそこから少し血が滲んでいたからギョッとした!!

一体どんな訓練してんの!?


そう言えばアルトゥール様は昔剣が上手かったとよく話していた。あのムキムキな体型からして今も相当鍛えているだろうし…やはりお祖父様に教わっているのかも。いや、たぶんそうだろう。


少し疲れた顔をしていた。大丈夫かな?



明日は決闘の日で私は家に帰り珍しくニルス様にお昼のランチを作ってみた。メイドや料理長に教わり始めて歪なサンドイッチを作り上げた。味は少しだけ卵を甘くしておいた。


「別に好きでは無いけど元気が出るかも」

と呟きつつ学園に向かうとアンナ先輩が早速ニルス様にランチを渡している場面に出会した。


ど、どうしよう!!


「あ!イサベル!!」


「なぁに!?あんな子ほっといて私のランチを受け取って?」

と迫るアンナ先輩に私は勇気を出して鞄からランチを取り出しニルス様に突き出した。


「私も作ってきましたよ!」

と言うと一瞬ニルス様の目はキラキラした。

その後我に帰り私のだけもぎ取った!

アンナ先輩は


「な、なんで!?ニルス様の好物のものばかりなのよ?」

と言うと


「お前が何故俺の好物を知ってる?まぁそれも関係ないがな。俺は婚約者からのランチを受け取る権利はあるからな」


「そ、そんな権利!今日で終わりよ!!決闘はクリストフ王子が勝つんだから!」

と言い張るアンナ先輩。


「言ってろ」

と言い、ニルス様はさっさと階段を駆け上ってアンナ先輩が、私を睨み後に続いた。


放課後が近付いてきて私は30分消えていられる薬を飲んでこっそりと男子の更衣室へと潜り込み、クリストフ王子の棚箱を見つけて訓練服に魔術を組み込んでおいた。これを着るとある体温まで上がると耐久性が弱くなるものを仕掛けておいた。それとちょっとだけベルトに細工して金具ネジを緩めておいた。


それからそっと外に出るとクリストフ王子が歩いてきて更衣室へと入って行った。


「何とかなるといいけど…」

私は呟き透明化が解けるまで女子トイレに隠れて解けるととりあえず急いで訓練場に向かう。

既にニルス様が到着しておりギャラリーもいて私はちょっと気分が悪くなる。


「おい…イサベル…これをやる」

と小瓶を出した。


「何ですか?」

と受け取ると


「緊張のほぐれる薬だとメイドのばあやから聞いた」

とそれだけ言う。


「ありがとうございます。…あの頑張ってください…応援しています」

と言うと


「ふん!わかっている!お前はちゃんと応援しろよな!…そう言えばお祖父様がお前に渡せと手紙を預かっている。決闘前に渡してその場で読めと言われた」

とニルス様がアルトゥール様からの手紙を渡し私はその場で手紙を開くと


ー可愛い孫の婚約者のイサベルちゃんへー


事情はニルスから聞いた。訓練をつけてくれと頭を下げてきおった!


我が孫はこの1週間わしの訓練によく頑張った!手は血豆が潰れてしまったがそれ程に真剣に剣を習った。


その栄誉を称え決闘前に手を差し出して手の甲に孫からのキスを約束させよ。ただのまじないじゃー


そう書いており


「えええ!?」

と混乱した。ニルス様がキョトンとして


「何が書いてある?俺にも見せろ!」

と取り上げられてニルス様が目を通すと


「あ、あの祖父!!……し、しかしお祖父様の時代ではこういうの当たり前だと聞いた…。くそ!別にしなくてもいいがな!」

とチラチラ私の手を見つめている。


私はスッと差し出してみたらギクッとして


「お前!何を!」


「は、早く!!」

と言うとニルス様は赤くなり手を取り顔を近づけて手の甲に素早くキスをすると歓声が上がり恥かしくなる。


急にドキドキしてきた。私はニルス様からもらった薬を飲み干した。苦いけど効き目は少しあり周囲の騒音が少し弱まった気がした。


「…じ、じゃあな!!」

と持ち場へと行き剣を見ているニルス様はまだ少し赤かった。


マリーが誘導して見学席に座る。

それからクリストフ王子は15分程遅刻してきて


「すまん!これから一瞬でてめえを倒しイサベルちゃんと熱いキスをする想像をだらだらしてたら遅れた」

と言うからニルス様は額に血管が浮きでる。


「は!想像だしいいだろ?そうか現実にすればいいのか!俺が勝ったらイサベルちゃんと熱いキスをしよ!」

と言うクリストフ王子に剣を抜き


「抜け王子!決闘の始まりは互いの剣を一度クロスさせる」

と教えるとクリストフ王子は剣を抜きニルス様の剣先に合わせてクロスさせると不適に笑ったのだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る