第17話 好きじゃないけど
皆が去った後に
「ニルス様…」
と声をかけるとハッとして離れると指をブンブン振りながら子供みたいに
「おま!お前の事は好きじゃないが卒業までの両親達のことがあるからな!!俺は親思いなんだ!勘違いするなよ!おお俺が決闘を受けたのは!」
と言い訳する。全く素直じゃないので私もちょっと怒る。
「わかりました。私のことを好いてないのは知ってます。あれだけいつも悪口を言われているし…今日は庇ってくれて嬉しかったのですがやはり勘違いで両親同士の為にとか人の手前でそうなさってるんですよね?
私の事が好きじゃないくせに」
「えっ…」
急にたくさん喋ったから驚くニルス様はちょっと青ざめていた。少し反省すればいいんだわ。
私も離れようとしたら腕を掴まれる。
「待て!イサベル!俺は!…お前のことが好きじゃないけど……」
と言い淀む。
「なんですか?」
「…全くお前なんか好きじゃないが…!お前はあいつの…隣の国の第二王子のことは俺よりも嫌いなんだろ!?」
と言われる。
「まあ…ニルス様より遥かに嫌いですよ。嫌い度では」
と言うと
「…そうだろうな、俺もあの第二王子は好かん。まだヘルベルトの方がマシだ。何か知ってるような口を聞くし…」
と言う。確かにアンナ先輩ともいつの間にか知り合いみたいだったし?どういう人かは知らないけど私達にはよくわからない単語を使っていた。どの本にも載ってない単語で私にはわからない。
もしかしたらあの2人もできていて、2人だけが使える暗号なのかもしれないわ。
アンナ先輩は美青年に目がないし顔だけならクリストフ王子も美青年の部類だ。
「だから…1週間後の決闘では…あの王子じゃなくて俺の方を…応援しとけよ!」
「!…ニルス様……勝てると思っているので?」
「!!…お、っお前!!」
「あ、ごめんなさい!」
どう見ても1週間で剣が上手くならない事は知っているのだ。ニルス様は勉強の方ができるタイプなので剣術なんて護衛がいれば済む事で無駄な事はせず生きてきたタイプの人間である。
私だってそうだ。研究ばかりに日々や青春を費やし、普通の令嬢のように着飾りお茶会や夜会といった煌びやかな場所には行かなかったから。
「お前が応援したら俺は勝てる!」
「え!?」
不覚にもドキっとした!
「あいつより俺が優れてると証明されるからな!あいつはお前の応援なんてもらえないから剣の腕も落ちるかもしれない!そうだ!お前もあいつの悪口でも言ってやれば隙ができるかもな!」
と若干卑怯なことを考えるニルス様だがやはり応援が欲しいようだ。
でも…やっぱりどう見ても体格は少し向こうの方がいいし、剣にも自信ありそうだったわ。ニルス様が負け確定なのはもうわかってるのに。
「…わかりました…応援しますけど。その代わり勝てなかったら恨みますね」
「へっ!!?」
とニルス様が固まりかけてひくひくする。
「だって…勝てなかったら私は隣の国の第二王子と婚約しなくてはならなくなります!そうなったらあの方はどう考えても私にべったりで離してくれなくなり…私の趣味の研究も本を読む時間すら一切できなくなります!」
と言うとニルス様は口を歪めぶっと吹き出した!
失礼!私に取っては死活問題!
まだ透明薬は完成とは言えない。この状態でニルス様が負けたら…
とそこで考えた。
あ、私には…透明薬がある!
決闘の時に透明になり何か手助け出来るのではないかしら!?
と思った。卑怯なのは私かも知らないがこれしかないのでは?
ニルス様はまだ笑っており
「ははは!!自分の為に勝てと言うのか?そりゃそうだ!実にお前らしい!引きこもりが趣味みたいなものだもんな!!」
「…悪かったですね!」
と言うと手を少しだけ力を入れてニルス様が言う。
「絶対に俺はあんな変な王子には負けん!だからお前はちゃんと応援しろよ!わかったな!…嘘でもいいから俺だけ見てろ!」
と真っ直ぐ見られると顔が赤くなり今こそ消えたくなった。
「……わかりましたってば!ちゃんと婚約者として応援しますから本当に勝ってくださいね!!」
「当たり前だ!俺が勝つって言ってんだろ?」
と言うと手を離しニルス様はふんぞりかえる。どこまでも態度はでかいままだ。たぶん内心不安でいっぱいな癖に。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます