第10話
神崎博士
美雪は入院していた。
他の4人も同じ病院だ。
警察がマスコミから身を守る為にそうした。
傷はもうすぐ癒えそうだったが、心には大きな傷が出来てしまった。
田口は優しい。
あの事件はマスコミに大々的に取り上げられた。
彼女ら5人は好奇の目で見られた。
あれだけ、全国的に放送されたのだから当然だろう。あの放送の録画はネットでも流された。
「もう、表には出れないよね。」
「そんな事ないよ。人とは忘れる生き物なんだから。」田口は言う。
みんな、元の生活には戻れない。
5人はひとつの部屋に集められた。
警察からの事情徴収と提案だ。
「そこで提案なんだが、みんなはマスコミにバレている。個人情報も含めてだ。そこで、新たな身分を作ることにした。」
それは、好奇の目で見られないようにする為に警察がしてくれた特別配慮だった。
「そこで、生まれ変わる為に、整形の第一人者である神崎博士に来てもらいました。」
「神崎です。整形して別人に、そして、バンパイアにやられる前の状態の身体に戻してあげます。」と言った。
美雪たちは神崎博士の病院へ密かに移送された。
「処女膜も復活するのかな」田口はヤラシイ目で美雪を見た。美雪は無視した。
「でも、自分の死亡記事読むなんて思わなかったわ。」
その新聞には昨日、あの事件の被害者5人が病院で死亡したと載っていた。
「そうだ。神崎博士に聞いてみよう。」
と田口は出ていった。
「お前は嘘をついたのか?」
松頭は電話の先の神崎博士に言った。
「一時間以上かけて交わっても効果なんかないですよ。私は同時に、と言ったはずです。」
「まあ、いい。所で、あの5人は集まったのか。」「はい。」神崎博士は答えた。
美雪のベッドの横に神崎博士が来た。
「西条さん、いや宮部さんになったんだっけ。」
「この注射を打てば、バンパイアにやられる前の形に戻れるよ。」
「この注射は、バンパイアを元に戻す作用があるんだ。だから、貴方の中にあるバンパイアの体液は全て免疫効果で無くなる。」
神崎博士は注射を打った。
直ぐに、美雪は強い眠気に襲われた。
「あ、ついでに麻酔薬も入れておいたよ。」
美雪は目を覚ました。猿轡。
そして、素っ裸で分娩ベッドに両手両足を括り付けられていた。
隣には佳奈が、同じようにされている。
左には、知子がいた。たぶん…
その部屋の戸が開いた。
「神崎博士、よくやった。」
聞き覚えのある声…松頭三次だ。
「今、到着されたんですか。お二人とも、お疲れ様です。」
「夜しか動けないからな。」
「あら、西条さん、起きられましたか。後は真崎さんだけですね。意識がないとダメなんでね。」
「あ、松頭さん、この注射を打ちましょう。」
「なんだ。」
「精力剤ですよ。今から5人相手にするんですよ。」
「そうだな。こいつにも打ってくれ。」
松頭三次ともう一人のバンパイアは服を脱いだ。
松頭三次は80歳とは思えない逞しい身体だった。
真崎が起きた。
神崎博士は「え」と言った。
松頭三次は山崎佳奈の前に立った。
もう一人は、美雪の前だ。
「さて、始めるか。」
「はい」もう一人のバンパイアが言った。
「ちょっと早くありませんか。」
神崎博士は言う。
「まだ、精力剤は効いてないですよ。」
「そんなの関係ないわ。」
「終わったな。」松頭三次は言った。
「俺とこいつは無敵のバンパイアになったよな。」神崎博士はドキッとした。
「夜明けに、こいつを朝日の中に出す。その時、消えたら…分かってるよな。」
美雪は悔しかった。涙が溢れた。
とうとう、無敵のバンパイアは出来てしまった。分娩ベッドの上で美雪は固まっていた。
「おう、もう朝か。さて、外に出ようか。」
松頭三次は言った。
バンパイアの男は固まっていた。
神崎博士と松頭三次、バンパイアの男は部屋を出た。
玄関を出れば外だ。
バンパイアの男の足が震えていた。
バンパイアの男は外に出た。
朝日は彼を包んだ。大丈夫だ!
「うおー」男は雄叫びをあげた。
「やったな。無敵のバンパイアの完成だ。」
松頭三次は歓喜で震えた。
松頭三次も、外に出た。
朝日とは、陽の光とは、こんな物なのか。
松頭三次は初めての感覚を味わった。
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