第43話 闇夜の森
Aランクのモンスターが猛威を振るい兵士を翻弄しても、城内からの援軍は途切れることがない。
革命軍との決戦に備えて、各地から戦力を集めていたのだろう。
正面の扉や、側面の出入口から、兵士がわらわらと湧き出すように出てくる。
「すごい数だな……これはのんびり戦ってる場合じゃない」
ダニエルは一気に十枚のカードを放り投げる。全てのカードは光となって弾け、目の前に召喚獣が降り立つ。
【★★★★★ 竜人ズメウ】
【★★★★★ 髑髏の騎士】
【★★★★★ 鬼武者】
【★★★★★ キラービー】
【★★★★★ スパルナ群れ】
【★★★★★ 聖ゲオルギウスのドラゴン】
【★★★★★ 聖マルガレータのドラゴン】
【★★★★★ 聖ダニエルのドラゴン】
【★★★★★ ゴブリンの突撃隊】
【★★★★★ ゴブリン・ロード】
雄々しく並び立ったBランクのモンスターが、正面にいる兵士たちに向かって突撃していった。激しくぶつかり合い、怒声と咆哮が響く。
そして――
「来い! カンヘル竜!!」
カードが弾けると旋毛風が巻き起こり、やがて小さな竜巻へと変わる。その中から飛び出すように、一人の少女が現れた。
「
カンヘル竜は満面の笑みでパタパタと羽ばたいてきた。あまりにも近くまで迫ってきたのでダニエルは苦笑いして押し返し、命令を与える。
「カンヘル竜、私を守れ! 攻撃には参加しなくていいからな」
小さな少女は「任せて下さい!」と自信満々で胸を叩き、辺りを見回し警戒を強めていた。
これで守りは大丈夫だろう。
後は召喚したモンスターが敵を蹴散らしてくれれば……。ダニエルは激しくぶつかり合う戦場に目を移す。
聖ゲオルギウスのドラゴンを始めとするBランクのドラゴンたちは毒の霧を放ち、敵兵を追い詰めていく。
髑髏の騎士、鬼武者、ズメウは正々堂々と斬り合いながら相手を倒していた。
ゴブリンやスパルナ群れ、キラービーも善戦しているものの、やや力不足か。相手の兵士は最新の魔導銃や、魔導砲を使って押し返してくる。
やはり一筋縄ではいかないようだ。
上を見ればタイタンが最後の魔導騎兵を叩き落していた。騎兵は落下しながら燃えてゆき、地面にぶつかってバラバラになる。
だが、タイタンも騎兵や城壁からの砲撃を大量に浴び、限界を迎えたようだ。
夜空に響き渡る唸り声を上げると、光りの粒へと変わり、カードになって戻ってきた。ダニエルはパシリとカードを取る。
「ありがとう、助かったよ。タイタン」
さらに上空で戦っていた三体のドラゴンは、最強の部隊である‶竜騎兵″を全滅させる。
しかし相手の反撃もあり、ダメージを受けていたドラゴンたちもカードに戻った。
「お疲れ、みんな」
後は地上部隊だけだ。だが圧倒的物量で召喚したモンスターを飲み込んでいく。
――まだ足りないか。
本型ホルダーに入ったカードは、ほぼ使い切った。あと残っているのは――
ダニエルは外套の内ポケットに入っている
数十枚のカードが爆発したように輝き、一斉にモンスターが顕現した。
Bランクの中でもあまり戦闘向きではないものや、Cランクのモンスターばかりだ。多少の時間稼ぎにしかならないかもしれない。
ダニエルはポケットから細長い筒を取り出し、真上にかかげてから紐を引いた。
筒の先端がパンッと弾け、小さな火の玉が飛んでゆく。ヒュルルルと音が鳴り上空へ昇っていき、ややあって爆発した。
夜の闇に火花が散り、やがて消えていく。
ただそれだけだったが、それで充分だった。
「ダークさんから合図が来た! みんな、行こう!!」
リズの号令に仲間たちが「「「おお!」」」と応え、革命軍の一部隊が戦場に飛び出す。それを皮切りに兵士たちが次々と声を上げ、王城へと駆けていく。
国防軍と革命軍。最後の戦いの火蓋が切って落とされた。
◇◇◇
「がはっ!」
鬱蒼とした森の中。オルガルの苦悶に満ちた声がこだまする。サタンの槍撃を必死で防いでいたが、自分の持つ斧はヒビが入り、すでにボロボロになっていた。
「なんだ、もう終わりか? 情けない。俺様が活躍していた頃の魔族はもっと歯応えがあったぞ!」
サタンは黒い槍を肩に乗せ、蔑むようにオルガルを見る。
その時、後ろから駆けてくる者がいた。
「うおおおおおお!」
槍に炎を纏わせ、エウリスが突っ込んで来る。サタンはフンと息を吐き、必死な形相の敵に左手を向けた。
「
周囲にドス黒い炎が広がる。炎は意思を持ったようにうねり出し、四方八方からエウリスに襲いかかった。
「ぎゃああああああ!」
通常の炎ではない。簡単に消えることはなく、相手を焼き尽くそうとする地獄の業火。エウリスは倒れ込み、転げ回って苦しむ。
「エウリス!」
オルガルが斧を構え、サタンの前に立ちはだかる。斧を振り上げて、相手の頭上に落とそうとした時、サタンはニヤリと口角を動かす。
「
天から落ちる一筋の雷光。電撃に打ち抜かれたオルガルは足がふらつき、斧を落として膝をついた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます