第42話 出し尽くす!
「あっ……が……」
城門の壁に背中をしこたま打ちつけ、苦悶の表情を浮かべるオルガル。
凄まじい勢いでぶつかったため、壁には大きなヒビが入っていた。
「く……そ!」
なんとか立ち上がり、斧を構えて前を見据える。黒い槍を持った魔族は、何事もなかったかのように悠々と歩いて来る。
魔神の加護を持つ自分が力負けするなど、とても信じられなかった。
「おのれ! 調子に乗るなよ」
オルガルが踏み込んだ瞬間、空から数多の
「今のは……
眼前の魔族は、フンッと鼻を鳴らす。
「この程度が上位魔法? 面白いことを言うな。だったら、もっと面白いものを見せてやろうか?」
ニヤリと笑った男の顔に、オルガルはゾワリと悪寒を感じる。
「オルガル!」
唐突に声をかけてきたのはエウリスだ。
左手で腹を押さえ、苦痛に歪んだ顔で歩いてくる。
「一斉にかかるぞ! ヤツは単独で戦って勝てる相手じゃない、連携を取って倒すんだ!!」
その言葉にオルガルは驚いた。プライドの高いエウリスが相手の力を認め、協力しろと言っている。普段のエウリスからは考えられない発言だが、それだけ敵が強いということだろう。
オルガルは「ああ、分かった!」と言って、斧を握り直す。
二人で武器を構え、相手の魔族を睨みつけた。どれほど強い敵であろうと、二人が協力すれば――
オルガルがそう思った瞬間、黒い槍を構えた男は目の前にいた。
「なに!?」
「はっはっはーーーーー!!」
男は声高らかに笑い、黒い稲妻を纏った槍で薙ぎ払う。
エウリスとオルガルは槍と斧でなんとか防ぐが、威力が強すぎて勢いを殺すことができない。
二人は吹っ飛ばされ、王城の横にある森の中へと消えていく。
男は嬉々とした表情で後を追っていった。
◇◇◇
「やれやれ……サタンの相手としては丁度良かったのかな?」
Sランクのモンスターと戦えるなら、敵も相当強いんだろう。
少なくともサタンと戦っている間は、相手を無力化できるな。ダニエルはそう思い本型ホルダーを取り出す。
耳を澄ますと大勢の声が聞こえてくる。城内にいた兵士たちが外に出てきたのだ。
「さあ、みんな出番だ!」
コロシアムのようにカードの枚数制限などない。ダニエルは持てるだけの召喚カードを用意していた。
最初の数枚を宙に放る。
カードは空中で光に変わり、地面に落ちるころには大きな猪と熊になっていた。
「行け! グレートボア(五種)、鬼熊(二種)!!」
五色の大猪が大地を駆け、その後を二頭の鬼熊がついて行く。
戦線に出てきたばかりの兵士たちは、目の前に突如として迫るモンスターに驚き、動きを止めてしまう。
そんな兵士に構うことなく大猪は突っ込んだ。
現場は大混乱し、阿鼻叫喚の地獄絵図と化す。その混乱に乗じて鬼熊が襲いかかった。
大猪に薙ぎ倒され、鬼熊の爪で引き裂かれる地上の部隊を
国防軍が誇る‶竜騎兵″だ。
まともに戦えば革命軍の兵士は蹴散らされてしまうだろう。ダニエルは三枚のカードを宙に投げる。
「来い! ファイアードレイク、ベオウルフのドラゴン、金羊毛皮の守護竜!!」
三体のドラゴンが空を舞う。それぞれが咆哮を上げ、上空で旋回する‶竜騎兵″に向かっていった。
「なんだ!? なにか来るぞ!」
「ドラゴンだ! なんでこんな所に?」
最強戦力と言われる竜騎兵でも、突然現れたドラゴンたちを見て動揺が広がる。
金羊毛皮の守護竜の黄金のブレス、そしてドレイクとベオウルフのドラゴンによる灼熱のブレスを浴びせられ、竜騎兵は丸焼きにされる。
「ぎゃああああああああ!!」
炎に巻かれた騎兵が次々と地上に落ちていく。
空はあの三体に任せれば大丈夫だろう。ダニエルはそう思い、再び地上に目を向けた。
地上部隊の混乱は収まり、グレートボアと鬼熊は倒されていた。
相手は圧倒的に数が多いのだから仕方ない。地上部隊が雪崩を打つように、こちらに向かって来る。
ダニエルは二枚のカードをホルダーから抜き出し、空に放った。
カードは光へと変わり、交差するように上空に昇っていく。光はやがて赤と青の炎となって夜空に弾けた。
「敵を焼き尽くせ、紅蓮のフェニックス! 蒼炎のフェニックス!!」
二羽のフェニックスが翼を広げ、走ってくる地上部隊に向かって滑空する。
「うわっ! なにか来たぞ?」
「なんだ、あれは!?」
再び混乱に陥った兵士たちにフェニックスが突撃した瞬間、大爆発が起きる。
炎と煙が周囲を包む中、赤と青の火の粉が舞い上がり、上空で収束すると二羽の不死鳥へと変わっていった。
それを見た兵士たちは、恐怖で顔を強張らせる。
「一気に畳み掛ける! 来い、ギガンテス!!」
落雷が落ちたかのような衝撃と共に現れたのは、二十メートルはあろう岩の巨人。唸り声を上げながら敵の兵士に襲いかかる。
腕を引いてから大きく振り払い、何人もの兵士を木の葉のように吹っ飛ばしていた。
国防軍の部隊長が指示を出し、魔導銃でギガンテスを攻撃するも、効いている様子はない。
巨人は理不尽な力を存分に振るい、国防軍を蹂躙していった。
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